99/03/26 ◇「窓」―確定拠出型年金◇  朝日新聞ニュース速報

確定拠出型年金への熱い待望論が経済界に起こっている。

掛金を従業員本人と企業主が出し合って積み立て、株や債券で運用して積立金を大きくして六十歳の退職時に受け取る。

低金利などで、予定した運用収益が上がらなくても掛金を積み増ししない。その点から「確定拠出」の名がある。いまの企業年金のように、企業は追加負担をしなくてよい

個々人の責任で、うまく運用すれば退職時に大きな金を手にすることができる。みんなが競って積立金の運用をすれば、株式市場が活発になるという期待もある。

だが、いまの論議にはあまり触れられていない、重要な問題がある。低所得層にはさほどメリットがなく、税負担が重くなる心配がある、という点である。貧富の格差が広がる可能性が大きい。

確定拠出型年金の大きな特徴は、掛金と運用収益が非課税になるということにある。

掛金の非課税枠は、現行税制の先例や先行している米国の例から、年間八十万円程度になるとの観測が語られている。夫婦なら約百六十万円である。

それだけの非課税枠を目いっぱい使って掛金を積み立てられる世帯は、経済的に恵まれた層であろう。余裕があれば、子ども名義でさらに非課税枠を活用することも可能だ。

加えて、確定拠出型年金が普及すればするほど、非課税扱いのために税収が減る。税収減は兆円単位の規模になると予測する関係者もいる。その穴埋めに、消費税率の引き上げが持ち出されるおそれがある。

経済的に余裕のある階層が資産を増やし、それによって生じる税収減は、低所得層ほど負担が重くなる逆進性が指摘される消費税の増税で埋められる。導入の議論では、この点を忘れないでほしい。〈丘〉

[1999-03-26-13:58]


年金の目次に戻る  最初のホームページに戻る  pf4m-atm@asahi-net.or.jp