99/6/6 リストラなら職人に 不況で若者が見習い体験 共同通信ニュース速報

「リストラされるなら…」「就職活動はあきらめた」。不況でリストラにさらされる若い会社員や就職活動の時期を迎えた大学四年生らがモノづくりへの道を探そうと、転職誌が募集した職人の体験企画に応募、「見習い職人」として汗を流した。        

 東京都目黒区でオーダーメードの木工製品を製造、販売している「パープル・ハート」。おがくずでほこりっぽい工房で六月初め、男女四人が壁掛けハンガー作りに取り組んだ。いずれも二十二、三歳の学生や会社員ら。スプーンや羽根などをデザインし、工具の扱いから仕上げまで、同店の田中貴之さん(28)の助言を受け、約四時間かけて完成させた。                  

友人たちは就職活動中という愛知県内の私立大四年、宮坂寛樹さん(22)は「不況で仕事は見つかりそうもないので活動はやらない。職人は一生できる仕事」と参加の動機を語る。       

「もう自分も安泰じゃない。同世代の同僚が何人も仕事を辞めさせられた」と転職を目指す都内の男性社員(23)。約四十人いた社員が年齢にかかわらず半減し、勤続四年目の防災設備工事会社はリストラの真っただ中だ。「やりがいより安定を選んで就職したが、今は自分がなりたい木工職人を選ぶ」と話す。飛び込みで弟子入りの志願をするつもりでいる。                

今春、首都圏の国立大の美術専攻を卒業した女性(22)は、就職活動に失敗し、秋田県の実家に戻ったばかり。「自分が何をしたいか見定めたかった。木工職人は仕事の選択肢になった」と話した。                            

リクルート社の転職誌「ガテン」が募集したこの企画には、木工や大工、とび、漁師など三十の仕事に予想を超える三百六十六人が応募した。                         

同誌編集長の松沢緑さんは「バブル崩壊や不況で、会社に価値を置いて歯車になるより、自分のオリジナルを発揮できる手に職を持つ価値観が若者の間で強まっている」と分析している。[1999-06-06-15:05


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