99/4/15 <経済観測>需給のミスマッチ 毎日新聞ニュース速報

日本経済の悪化にはようやく歯止めがかかったようだが、成長の見通しはまだ立っていない。これは、7・5兆円にのぼる公的資金の金融機関への投入、9兆円をこえる減税、オーバーナイト金利ゼロの金融緩和といった破天荒の政策にもかかわらず、民需に火がついていないことを意味する。

だが、これも、当然といえば当然といえる。なぜなら、現在でも世界一の所得水準の下で、従来型の消費は飽和状態に達しているからだ。いま以上の飽食や華美を求めるのは、適当でもない。したがって、従来型の消費に成長の源泉を見いだそうとするかぎり、ゼロ成長がせいぜいだろう。

しかし、われわれの生活はそれほど豊かでゆとりがあるだろうか。実は、満たされていない潜在的需要がたくさんあるのではないか。市場経済では、市場に供給されている財貨サービスについては、消費者の需要に応じて価格が上下し、インジケーターの役割をはたすが、そうでない潜在的需要は、生産者がリスクを負って供給してみないかぎり、わからないのである。

こうした目で見てみると、まず第一に、住宅があまりにみすぼらしく、高価なことが目立つ。そこには、都市計画が不十分なこと、建築基準法が時代遅れになっていること等もあるが、何といっても、住宅産業や不動産業がイノベーションに欠け、新製品・新サービスを供給するリスクをとらないことがある。

第二に、これから大きな需要が予想される介護、医療、保育等について、欧米のような上質のサービスの供給が求められている。ここでも、公的な規制は必要であるが、それが民間のイノベーションを阻害しないように配慮されなければならない。

第三に、高等教育・研究に対する潜在的需要には巨大なものがあると思われるが、それに対する供給体制が整備されていない。これは、欧米の大学と日本の大学を比較しただけでも明らかであり、国公立であるか私立であるかを問わず、抜本的な強化が求められている。要するに、需給のミスマッチを解消する生産者の努力こそが重要なのだ。 (知命)[1999-04-15-22:54]


記事と論評のページに戻る  最初のホームページに戻る pf4m-atm@asahi-net.or.jp