99/03/23 バイアグラの国内販売始まる  読売新聞ニュース速報

厚生省から医師の処方せんが必要な医薬品として一月にスピード承認された性的不能治療薬「バイアグラ」の国内販売が、二十三日始まった。製造・販売するファイザー製薬(東京・新宿)は「残された最後の巨大市場」として、日本での売り込みに力を入れるが、同省は「この薬の性質上、副作用被害が表に出にくい」と神経をとがらせ、副作用情報をキャッチしたら必ず報告するよう、同社に異例の指示を行った。

同社は一月二十五日の承認の翌日から、愛知県内の工場で国内販売用製品の製造を開始。盗難防止のため、厳重な警備下で生産ラインをフル稼働させてきた。

さらに、約千人の職員が、数万か所の泌尿器科や内科などの医療機関を回り、効能・効果のPRや処方上の注意点を説明。二十三日から、注文のあった病院や調剤薬局に納入される。

国内価格(希望処方価格)は、米国と同程度で、二十五ミリ・グラム錠が一錠千百円、五十ミリ・グラム錠千三百円。同省は医療保険を適用させないため、患者はこのほかに数千円の診察・検査料などを支払うことになる

一方、個人輸入の急増などで、申請から半年のスピード承認に踏み切った同省は「いわば密室で副作用被害が出る可能性は高い。因果関係の特定が難しいケースも多いだろう」と懸念する。同社は「適正に服用すれば、安全性が高い」と強調するが、米国では昨年三月の承認から同十一月までに服用した百三十人が死亡している。

心臓病治療に使われるニトログリセリンなど硝酸剤とバイアグラの併用は、急激な血圧低下を引き起こす危険があるために禁じられている。しかし、救急医療の現場では心臓発作の治療などで硝酸剤を使うことが多く、同省は、治療前に患者や家族にバイアグラを服用したかどうかを確認するよう求める通知を、約四千か所の救急病院などに出した。[1999-03-23-10:45]


99/03/23 ◇バイアグラの日本発売始まる◇朝日新聞ニュース速報

男性用の性的不能治療薬「バイアグラ」(成分名・クエン酸シルデナフィル)の発売が23日から始まった。医師の処方が必要な医療用医薬品のため、一般の薬局では手に入らないが、病院や診療所で医師の診断と処方を受けた上で、購入できる。患者への販売価格

は、各病院や調剤薬局が決めるが、メーカーの希望処方価格は25ミリグラムが1錠当たり1100円、50ミリグラムが1錠1300円となっている。

製造元のファイザー製薬(東京都新宿区)は医療保険の適用を申請していたが、厚生省は病気を根本から治す薬ではなく、生活の質を向上させる「生活改善薬」であるとして、保険の適用を認めなかった。そのため、バイアグラ服用のための診察や検査などはすべて患者の自己負担となる。

バイアグラは狭心症の発作の治療によく使われるニトログリセリンなどの硝酸剤と併用すると、血圧が急激に下がる危険がある。救急医療の現場では、狭心症の発作などで運び込まれてきた患者についてはバイアグラの服用がないかどうか確認する必要があり、厚生省は注意を促している。

また、薬局の薬剤師に対しても、医師の処方せんを受けた人以外には販売しないことや、処方せんに疑わしい点がある場合には、医師に問い合わせることなどを指示。盗難の心配もあるため、管理を徹底することも求めている。

バイアグラが昨春売り出された米国では、服用した130人が死亡している。日本でも個人的に入手して服用した60代の男性が昨夏に死亡した。使い方を間違えれば死にも至るため、ファイザー製薬も医師用のハンドブックや患者用のパンフレットを作り、適正使用を呼びかけている。[1999-03-23-09:53]


99/03/23 <性的不能治療薬>「バイアグラ」発売 処方めぐり戸惑う病院 毎日新聞ニュース速報

性的不能治療薬「バイアグラ」が23日、発売された。画期的な新薬の登場は症状を持つ患者にとっては朗報だが、いざふたを開けてみると処方する病院側の準備が十分整っているとは言えず、慣れない保険適用外の治療には戸惑いも見え隠れする。発売前から高い関心を集めてきたが、個人輸入の需要も根強いなど、さまざまな課題を抱えながらのスタートのようだ。 【田畑 悦郎】

★少ない専門医

「どの診療科に行けばいいのですか」――。バイアグラを発売するファイザー製薬(東京都新宿区)には、2月に約800件、3月に入るとその倍のペースで問い合わせが殺到した。当初は発売時期と価格の問い合わせが大半だったが、最近は「病院を紹介してほしい」などより“実践的”な質問が目立つ。

同社では、泌尿器科での診察を勧めるが、同時に、ぼっ起不全の要因となる糖尿病、高血圧、心臓病、高脂血症などを扱う内科、循環器科にもバイアグラの普及を図っている。しかし、吉田英機・昭和大学病院泌尿器科教授は「ぼっ起不全の患者を専門に扱える病院は全国でせいぜい50程度だろう」とみる。専門医が極めて少ないのが現状だ。

同社の広田孝一・広報課長は「近い将来、かかりつけの開業医でも処方してもらえるようになる」と説明するが、現段階では、経験の乏しい医師が、患者の言うままにぼっ起不全と診断し処方したり、逆に副作用を恐れて診断を避けてしまう可能性も少なくない。泌尿器科医などでつくる「日本性機能学会」(白井将文理事長)では、直接注射や睡眠時ぼっ起検査などを含む専門的な診断法の普及を急いでいるが、まだ時間がかかりそうだ。

★健保適用されず

ファイザー製薬の推計では、ぼっ起不全に悩む人は国内に600万〜700万人いるが、治療を受けている患者は1%内外。従来の治療は、薬剤の直接注射、補助器具の埋め込みなどで機能を回復させるのが一般的で、肉体的、心理的な負担が大きかった。飲めば効くバイアグラの登場で、病院に足を運ぶ人が増えるのは間違いない。

ただ、バイアグラには健康保険が適用されないため、診断のための血液検査、心電図、尿検査を含めすべての診療が患者の自己負担になる。保険適用外の薬には処方量の制限もないため、価格と処方量の設定を巡り「病院側はいまだに戸惑っている」と吉田教授は説明する。

ファイザー製薬が提示した希望価格は25ミリグラム錠が1100円、50ミリグラム錠が1300円だが、卸会社との交渉によっては上下する可能性がある。昭和大病院には開業医から「価格をどうするのか」といった問い合わせが相次いでいるが、同病院でも正式な価格決定は4月にずれこむ見込みで、それまではバイアグラの処方はできないでいる。

★個人輸入は続く?

厚生省が医薬品を認可する際、特別な例を除き処方できる医者の診療科を指定することはない。バイアグラを理論的には、眼科医でも小児科医でも処方できることになる。非良心的な医者が「必要だ」と“診断”し、一度に何十錠、何百錠を処方しても、「法的には規制できない」(厚生省審査管理課)という。

東邦大医学部泌尿器科の永尾光一講師は「常識的には、検査は1万5000円から2万5000円。処方量は2週間分で4錠程度でしょう」とする。一方、インターネットを利用した個人輸入では「100ミリグラム錠30錠で4万〜5万円が相場」(大阪の輸入代行業者)で、正規の治療に比べ割安になる。このため、ファイザー製薬側も「個人輸入はなくならない」とみる。もちろん、転売すれば薬事法違反で摘発されるが、こうしたヤミ市場への抜け道も残されたままだ。

広田広報課長は「ぼっ起不全は糖尿病、心臓病など別の病気の兆候かもしれない。医師の診断を受けないと、背後にある病気が放置される心配がある。心血管系障害、肝機能障害がある場合やニトログリセリンとの併用は命にかかわり、医師の処方がないままの服用は危険」と警鐘を鳴らす。[1999-03-23-12:47]


99/03/22 台湾でもバイアグラ解禁  共同通信ニュース速報

【台北22日共同】台湾で二十二日、男性の性的不能治療薬「バイアグラ」の発売が解禁され、中高年の男性が朝から病院や薬局に詰めかけた。しかし、品物が届いていない病院が多く、失望して帰る男性の姿が目立った。                   

解禁にあわせ、台湾の製薬会社は先週、計五万錠の「バイアグラ」をオーストラリアから輸入した。購入には医師の診断と処方せんが必要だが、解禁前にバイアグラを服用した三十七歳の男性が死亡したとの報道があったほか、婦人団体が「妻帯者は妻の同意を得るべきだ」と主張するなど、解禁は論議を呼んだ。        

価格は一錠四百台湾元(約千五百円)以下とされているが、ヤミ市場では二倍以上の千元(約三千七百円)で取引されているという。[1999-03-22-18:11]


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