2001/5/28 「天安門文書」中国語版4万部突破、米でシンポも 読売新聞ニュース速報

【ニューヨーク28日=河野博子】一九八九年六月四日に中国・北京で起きた天安門事件に関し、当時の共産党指導部の内幕を伝える「天安門文書」の中国語版が、予想以上によく売れている。

香港、米国などで出版されて以来約一か月半になるが、すでに四万部を突破。ニューヨーク郊外の出版元は、「過去のものとなった天安門事件の本が売れる訳はない」との忠告を受け、小出しに増刷を重ねていたが、現在三十九刷目という。

今年十三年目を迎える「六月四日」を前に、米国の中国系住民の間では、この本をテーマにしたシンポジウム開催など、事件の見直し機運も高まっている。

中国語版のタイトルは、「中国『六四』真相」。今年一月に最初に出版された英語版「天安門文書」と同様、「元中国官僚の張良(仮名)」氏が持ち出した当時の党指導部の議事録などのほか、英語版にはない文書も収録し、上下二分冊のセットで販売されている。

ニューヨーク郊外のロングアイランドにある中国語書籍専門の明鏡出版社が四月十五日に初刷二千部で発刊。その後一千部ずつ刷り増しし、現在三十九刷目。香港、台湾に次ぎ、米国では五千部が売れたという。

何頻(ホー・ピン)同社社長(35)は「忘れられた事件についての本を出しても大赤字を出すだけだ、と言われたが、人々が事件をけっして忘れていないことがわかった」と話す。

当時、香港紙「明報」の記者として現場で取材にあたった何社長は、「当局は事件を過去のものとして葬り去ろうと、民主化に着手したソ連や東欧の経済破たんを強調し、国民の政治への関心をそらしてきた」と指摘。「これで見直し機運が高まれば、中国政府にとっても、過去の過ちを正す良いチャンスになる」と強調する。

米国の中国系住民は、一九九〇年の約百六十万人から、二〇〇〇年の約二百四十万人へと増加。なかでも急増ぶりが目立つニューヨーク市クィーンズ地区にある公立図書館では、中国語版を計三十一冊そろえたが、ひっきりなしに借り出され、現在、棚には一冊もない状態。司書の李江琳さん(45)は「これまでの政府の説明にはあきたらなかった、という人が多い」と話す。近くの中国語書籍を扱う「大陸文化書店」でも売り切れの状態だ。

本への反響の大きさに、インターネットによる「チャイニーズ・メディア・ネット」は二十四日から、ネット上でフォーラムを開催。質問への回答者を務める当時の中心的リーダー、王丹さん(32)(九八年の釈放後、米ハーバード大学院に在学中)は「ここ数年が中国民主化にとって転換点」と断言する。

ロサンゼルスでは来月二日、アーティストらが「天安門文書」をテーマにしたシンポジウムを開き、「何が市民への弾圧・発砲をもたらしたのか」などについてディスカッションを行う。[2001-05-28-22:50]


2001/5/28 中国が戸籍を大幅緩和、労働力の小都市移動効率化 読売新聞ニュース速報

【北京28日=石井利尚】中国政府が、移住や転職を半世紀以上にわたり制限してきた戸籍制度の大幅な緩和に乗り出した。

世界貿易機関(WTO)加盟が迫る中で、戸籍登録地での就職を原則とし、転職を阻む計画経済時代の戸籍制度が、効率的な労働力の移動を阻害するなど、国際化した市場経済への適応を難しくする弊害がでてきたためだ。

二十六日の「中国新聞社」によると、国務院(中央政府)はこのほど、都市への農民移住を促進するため、都市への戸籍変更を簡素化する措置を十月までに策定するよう、全国の地方政府に通達した。

中国の戸籍制度はかつて、食糧配給制度と一体で、政府の有効な国民管理の手段だった。地方の農民は能力が優秀でも、都市部の大企業の就職は事実上、不可能だった。

ところが、八〇年代以降の改革・開放で、農村から都市への労働力流入が進み、戸籍を移さないまま都市に住む“ヤミ住民”が急増した。

昨年秋の戸籍台帳を基にした十年ぶりの国勢調査によると、農村部の人口は、総人口の64%に相当する八億七百三十九万人で、都市人口の四億五千五百九十四万人を大きく上回っている。

しかし、戸籍と実際の居住地が違う農民が多く、国民管理がかえって難しくなった現状も浮き彫りにした。

戸籍を管理する公安省が策定した草案の「改革意見」では、既に住居と安定した職、収入源を都市に持つ農民の戸籍変更を基本的に認め、子供を教育や就職面で差別することを禁止した。

また、都市部に移住したあとの戸籍変更後の農地使用の継続や転売の自由も認めた。

政府は「第十次五か年計画」(二〇〇一〜〇五年)で、都市部への流入を続ける農村の余剰労働力対策として、サービス産業の雇用創出を狙い、人口十万人規模の小都市建設を国家目標に据えた。

戸籍制度の緩和は、当面はこの小都市建設を支援する形をとり、都市へ流入する農村労働者への差別撤廃で、秩序ある人口流動の後押しをすることを目標に掲げている。

政府は、農民の受け皿となる小都市のインフラ、社会保障制度の整備状況をにらみつつ、戸籍緩和を段階・試験的に実施する方針。都市への急速な農民移住は、都市の治安悪化や農村の荒廃を招く恐れがあるからで、当面は北京や上海など大都市への移住は対象外となっている。[2001-05-28-23:28]


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