2001/4/11 ◇「窓」―ブランド再生◇朝日新聞ニュース速報

昨年夏に食中毒事件を起こした雪印乳業が再生への一歩を踏み出した。4月初め全社員の3分の1を動員し、街頭でブランドへの信頼回復を訴えた。しかし、消費者の反応は厳しいようだ。

月刊「宣伝会議」がこの春、東京と大阪の主婦100人を対象に行ったアンケートによると、「雪印」のブランドでイメージする事柄について、「牛乳」をあげた人が73人いたものの、59人が「事件」、さらに6人が「寝ていないんだ」と発言した前「社長」と答えた。また現在、雪印製品を買っていないと回答した人は49人に上っていた。

ブランドとは内容だけではなく、幻想も入り組んだ不可思議な存在だ。

15年ほど前、米国で「コカ・コーラ」に代わって味覚テストで優位が実証された「ニューコーク」を発売したところ、抗議が殺到。味を元に戻すよう集団訴訟にまで発展したことがあったそうだ。

神戸大大学院の石井淳蔵教授によれば、ブランドの核心部分は「形式がその身分を脱して実体を支配しあるいは人を動かす、いわば逆説的な現実」だ(「ブランド」)。

実は雪印は55年にも食中毒事件を起こしている。被害者は1900人ほどで昨夏の7分の1程度の規模だったが、当時の社長は「信用は金銭では買えない」と判断。迅速に対応し、かえって売り上げを伸ばした。

組織の肥大化とブランドへの過信。45年の時代の経過はひとごととは思えぬ教訓を含んでいる。〈志〉[2001-04-11-14:52]


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