以下は新聞記事を編集した。
インフルエンザの流行期などで、子どもに脳炎・脳症が生ずることがある。
脳炎・脳症の親の会「小さないのち」が「子どもの異常を見分ける、特徴的な症状」をまとめた。
(症例)
1999年1月4日夕、1歳11ヶ月の男児は、40度近くの高熱を出し、近くの小児科医院でもらった解熱剤でも熱は下がらず、翌日午前この医院へ行き、点滴で少し元気になり昼寝した。
しかし、夕方 大声で泣き、母親にしがみつく。何か必死にしゃべろうとしているが、言葉になっていない。(問いかけに対しても、しゃべれなくなって、親の肩にしがみつく子どもが多い)おかしいと思った母親は、再び医院へ父の運転する車でつれて行く。
車内で母親の肩にしがみつき「落ちちゃう」「危ない」とおびえた。
時折、何かをしかるような「メッ、メッ」と言い、手で宙をたたく動作もした。
まもなく意識は薄れ、救急車で病院へ転送。
翌日、脳死状態となり、4病日目に亡くなった。インフルエンザによる急性脳症だった。
脳炎・脳症の親の会「小さないのち」が2000年末から翌年1月にかけて会員100人に聞き取り調査した。その結果、「見えないものが見える」「異常におびえる」「突然、意味不明のことをしゃべる」「目の焦点が合わない」など色々な前駆症状がでていたことが分かった。
また、9割がけいれんを起こしていた。
横浜市立大小児科教授横田俊平医師によると、これらの症状は、すべてがインフルエンザ脳症だけに特有の前駆症状とは限らないが、幻覚・幻視、恐怖感、怒りなどは、脳症に特徴的な症状だという。
脳症の症状でなくても、高熱などによる重症な症状といえる。もっとも、子育てをした親ならだれでも経験しているが、寝起きでねぼけたり、昼間興奮した影響で夜泣きしたときは、寝ぼけて同じような症状を示す。脳が半覚醒の状態で、夢が現実と思えるのだろう。
治療法は確立していないが、早期にけいれんを止めるなどの処置が重要とされる。
子どもが熱を出し、「いつもと違う」と感じる前駆症状が見られたら、すぐ専門医に見せた方がいい。
脳炎・脳症の子供に見られた前駆症状
・悲鳴をあげ、目をキョロキョロさせておびえる。(恐怖感・不安感)
・離れようとすると「行かないで」と泣き叫ぶ。(恐怖感・不安感)
・「怖いよう、助けて」と言い、家族の名を呼ぶ。(恐怖感・不安感)
・母親がそばにいるのに「ママ、近くに来て」と言う。(視力低下、認知力低下、不安感)
・消えているテレビ画面を見て「猫が来る」と口走る。(幻覚)
・自分の手を見て、「あ、おいもだ」「ハムだ」と言う。(幻覚・錯覚)
・突然、意味不明のことをしゃべる。歌を歌う。(混乱・錯乱)
・呼びかけに返事をしない。(返事をしていたのに、急に よびかけに返答せず、抱いている親の肩にだきつく。返事ができないような様子で普段とは異なる)
・「ギャー」「キャー」などと奇声や悲鳴をあげる。
・目の焦点が定まらない。
・目が上を向いたままになる。目がつり上がる。(熱性けいれんでも、目が上を向く)
・立てない、おんぶの時、背中につかまれない。
・頭をぐるぐる回す。片手を何度も振り上げる。
・狂ったように暴れる。
・嘔吐をくり返しながら、ずっと眠る。(脳圧が上がった状態)
・呼びかけに反応するが、目を開けていられない。
発熱から意識障害が起こるまでの時間
1)64% が、24時間以内に意識障害
2)25% が、2日目に意識障害
3)3日目と4日目に、意識障害が生じるのは、それぞれ5%、6%
けいれんと意識障害(インフルエンザ脳炎・脳症)
1)先にけいれん72%、一方、先に意識障害が28%
2)けいれん有りが91%、けいれん無し 9%
*インフルエンザ脳炎・脳症
インフルエンザウイルスにより脳が炎症を起こす。詳しい原因は不明。
インフルエンザの児童患者数は、年間50-100万人で、このうち脳炎・脳症は100-300人。
死亡率は30%前後、助かっても後遺症が残る場合も多い。
2001年2月初めまでのインフルエンザ患者は昨年同期の数十分の一。
以上は、読売新聞2001/2/11の記事をまとめました。緑色の字は私見
以下の「高熱時の対応」は私見
高熱時の対応
39-40度の高熱なのに、子供をジャンパーや毛布にくるんで受診する親が多い。
極端に冷やすのではなく、体内にこもった熱が、外気で発散するように寒すぎないように考慮して薄着にする方法を、理解していない。
着ているものを1枚脱がせて、熱をさましてあげてください、と薬を調剤中に患児の親に注意しても、そのままジャンパーや毛布にくるんだまま抱き続けている親がほとんどです。基本的な解熱方法の教育が、母親学級でも必要です。
受診のため外出して外気にあたり、せっかく子供の具合がよくなっているのに、叉、毛布にくるんだままでは、熱がこもって元気がなくなってしまいます。
以前、大工さんで高熱が下がらないというので、部屋へ伺うと、石油ストーブで部屋をがんがん暖房し、厚い布団を何枚もかけてマスクをつけ、紅い顔で、ふうふう熱にうなって汗をだらだらかいている?男がいました。暖かくして、汗をだせば熱がさがると思って暖房していたとのこと。これでは熱はさがりません、と指導した。
(青白い顔をしてガタガタ震えている時や、熱が感じられず手足の冷感や、暖かいものを欲しがったり、よわよわしいときは暖かく包みます)
子供が発熱したら、解熱剤のほかに、まず、冷蔵庫に冷たいポカリスエットの缶2本と氷水を用意し、子供が欲しがる方をコップに1-2cm程度を、少しずつ20-30分おきに何度もあげる。発熱時に、いっぺんに多量の水分をあたえると嘔吐しやすくなる子供が多く、嘔吐させると脱水・電解質のアンバランスが急速に伸展して、がたがたふるえたり、その後高熱と嘔吐を繰り返したりして、解熱できなくなってしまう。解熱剤でも嘔吐しやすくなります。
高熱時は、牛乳やミカンジュース、ブドウジュースなどは吐きやすくなるので控え、ポカリスエットやリンゴジュースにします。ポカリスエットは、点滴とほぼ同じ成分です。
解熱剤で熱が下がらない、叉は、解熱剤が2-3時間で効かなくなるのは発熱による脱水状態であるためです。症状に比べて解熱剤が弱すぎ、なおかつ、脱水状態が併存していて、弱い解熱剤では発汗できないという場合もあります。脱水状態は、頬や唇がかさかさしているので分かります。
吐かせないように水分をすこしずつ補給するのが解熱剤を使うコツです。あとは日柄で、身体がなおすのです。
高熱時は、病院では点滴も冷やしたものを使用して体熱をさまします。
外国では、高熱児の対応は、窓を開け放ち、脳に通じる血管のある耳の下や両脇の下を氷袋で冷やし、高熱による脳(体温調節中枢にも)への影響を少ないようにします。(元気な高熱の時)
高熱のために脳の体温調節中枢がくるって暴走し、そのためさらに高熱がつづき、組織の急激な消耗による炎症の進展した場合が脳炎と考えられます。
つまり、急な高熱による脱水状態、繰り返す嘔吐による脱水状態や、弱い解熱剤しか使わないため長期間高熱が繰り返す状態や、強力な解熱剤を脱水気味の時に使用して発汗作用により急速に生じる脱水状態が、電解質バランスを失調し、けいれんを生じたりして、組織の急激な消耗による炎症をもたらし、それが急速に脳領域に広がるのが脳症と想像されます。
現代医学では、強力な解熱剤を使用するときは点滴するなどの補液の同時使用が、脳炎の予防効果がありそうです。上記の症例でも、小児科医院で解熱剤をもらっているのに熱がさがらなかったのはアルピニー坐薬・ピリナジンなどの飲み薬として用いられるアセトアミノフェンなどの弱い解熱薬が処方されたため効かなかった可能性もある。ボルタレンやポンタールなら、必ず一度は熱が下がるはずです。ただ脱水状態だったり、保温しすぎの場合には、すぐまた高熱に逆戻りとなり、さらにひどい脱水状態・高熱・鼻翼呼吸といった状態になりついには脳症発症ということも考えられます。
けいれんは一時的な栄養失調や炎症によって生ずるのですが、さらに、けいれんは栄養失調や炎症の悪化を組織に急速にもたらします。長い時間のけいれんは組織へのダメージが深刻ですので、けいれん予防薬も必要でしょう。
漢方医学では、高熱には、発汗作用の無い漢方の解熱薬の使用が脳症予防に効果的と予想されます。
漢方では高熱や喉の痛みには、組織の冷却と潤いをもたらす成分を配合してある銀ギョウ解毒丸や銀ギョウ錠を、発汗解熱薬とバランスを考えて使用します。銀ギョウ解毒丸の使用目標は、患児の舌の先辺が炎症で紅くなっている、あるいは口渇・喉痛を訴えることです。これは医師の処方する発汗解熱薬や抗生物質と一緒に使用することもできます。下痢や扁桃腺炎などに感染が疑われなければ抗生物質は不要です。
西洋医学では、解熱剤で発汗作用の無いものはありません。(そのため、状況によっては脱水症状をもたらして炎症を悪化させるおそれがあります。強力な発汗解熱効果のあるボルタレンやポンタールなどの切れ味の良い薬ほど、強烈に発汗させて消耗状態によってもたらされた炎症から脳炎を生ずる理屈が理解されます)。以上のような知見は、あくまで私見であり、西洋医学では理解されていませんので、他言無用です。