2001/3/29 ◇保育園が写した「証拠」生かせず 保健婦放置 相模原女児虐待死◇朝日新聞ニュース速報

神奈川県相模原市に住む3歳の長女を虐待死させたとして父親の無職容疑者(32)が逮捕された事件で、長女が通っていた保育園が事件の2年近く前から体に無数にあるあざを写真撮影し、「恒常的な虐待の疑いがある」として、福祉機関に通報していたにもかかわらず、放置されていたことが分かった。

保育園によると、写真を撮影したのは、長女が通園し始めて間もない1999年4月から5月にかけて。顔や胸、腹部、足のあざがあまりにひどいので、計10枚ほど撮影し、8月に相模原市福祉事務所相模原児童相談所へ通報。9月に、来園した市の保健婦に写真を見せて虐待の可能性について説明した。

市福祉事務所によると、この保健婦は児童相談所から何も依頼されておらず、自らも写真のことはどこにも報告していなかった。児童相談所側は長女の死亡後、相模原署から示されて初めて写真の存在を知ったという。同署は恒常的な虐待の傍証として保育園から任意提出を受けている。

相模原児童相談所は「直接職員が保育園に行っていれば見ることができたはず。市との連携のまずさもあり、申し訳ない」としている。

[2001-03-29-06:26]


(私的なコメント)こういう無責任な児童相談所がたよりでは、なさけない。一度、児童相談所は解体したほうがよい。なぜ公務員の不作為犯・怠慢罪で刑事罰がないのでしょうか? 新聞は、奥歯にものがはさまったような記述しかしないが、保健婦一人にまかせられる事案ではない。一人の能力はそんなに高くはない。システムとしての対応が不可欠。各分野の専門家が、グループで対応すべき時期に来ています。
2001/4/2 <特報・児童虐待>殺さないで 福祉事務所に対応任せ 毎日新聞ニュース速報

愛実(まなみ)ちゃん(当時3歳)は、身長186センチの父に思いきりけられ、台所の床に転がった。つかみ起こされ、また下腹をけられた。3月7日朝、神奈川県相模原市のマンションの4階。「おなか、痛い」。小さな声を出し、運び込まれた病院で息を引き取った。小腸など内臓破裂による失血死。顔や体に無数のあざがあった。

「台所で勝手にドッグフードを食べ、床にぽろぽろこぼしていた。カッとなり頭の中が白くなった」。殺人容疑で逮捕された父親の被告(32)=傷害致死罪で起訴=は供述した。

聴覚障害のある被告は、子供のころ両親が離婚し、母親に育てられた。中学は普通学級に通っていたが、いじめに遭って、ろう学校に変わったという。音響機器の工場、フィルムの現像処理会社、デパートなどを転々。職場での人間関係がうまくいかず、孤立することが多かった。

同じ聴覚障害者の妻(26)は地元の手話サークルの仲間だった。4年ほど前にマンションに引っ越したところ愛実ちゃんが生まれた。今年1月に被告は失業した。勤めに出る妻に代わって、被告が自転車で愛実ちゃんを保育園に送っていた。

マンションの住人たちは、愛実ちゃんの泣き声や、被告の怒鳴り声をよく聞いていた。夜中に大きな物音がして飛び起きたこともある。一昨年9月、洗濯機のホースがはずれ階下の部屋が水浸しになった。2階まで水が流れ落ちた。この部屋の主婦に知らされ、やっと騒ぎに気付いた被告は、愛実ちゃんがいたずらをしてホースをはずしたと思い、怒鳴りだした。

その後、主婦は目の周りにあざがある愛実ちゃんを見掛けた。心配して近付くと、「転んだんだよね」と被告が言った。

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はっきり虐待に気付いていたのは保育園だった。2年前の春、愛実ちゃんのあざに気付いた園長が「お迎えに来た時に寄って下さい」と被告に呼び掛けた。園長室で事情を聞くと、「家の中で転んだ」と筆談で答えたという。

だが、あざは顔だけでなく胸、腹、足などに無数にあった。思い余って園長は相模原市福祉事務所相模原児童相談所に通報した。体のあざを写真撮影し、園を訪れた保健婦に見せた。福祉事務所職員や保健婦は自宅を2回訪ねた。だが、被告と妻が「脱衣所で転んだ」などと筆談を交えて答えると、それ以上は調査しようとしなかった。「『緊急性はないが経過を見守ってほしい』と児童相談所から言われていたので……」と福祉事務所は取材に答えた。

児童相談所は一度も調査に訪れなかった昨年2月には匿名の住民から通報を受けたが、動かなかった。両親が障害者であり、福祉事務所に対応を任せていた」。あざの写真は愛実ちゃんの死亡後に警察から見せられ、初めて知ったという。

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「感情が見えてこないんだよ。娘にあんな暴力を加えておきながら……」。捜査にあたった相模原署の幹部は話す。失業後はテレビゲームで時間をつぶすことが多かった。事件の2〜3日前、愛実ちゃんがゲームを壊したので怒ったという。

「同じ障害者には心を開いて相談してほしかった。立派に子育てしている夫婦は大勢いる」。被告を知る聴覚障害の男性は、記者に筆談で語った。乳母車を押しながら、愛実ちゃんに笑いかけていた被告の顔が今も記憶に残るという。

愛実ちゃんはよくキティちゃんの髪留めをして自転車の前かごに乗っていた。今、マンションの玄関には花束とキティちゃんの人形が置かれている。[2001-04-02-03:05]


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