99/03/26 <地方分権>一括法案を閣議決定 国と地方の役割分担を明確 毎日新聞ニュース速報

国と地方自治体の在り方を抜本的に見直した地方分権一括法案3月26日、閣議決定された。これまでの国と地方自治体の上下・主従関係を規定してきた機関委任事務を廃止し「対等・協力」の関係と規定。国と地方の役割分担を明確にした。法案は月内に国会に提出され、来年の4月から施行される予定。あわせて国の公共事業のスリム化統合補助金の創設を盛り込んだ第2次地方分権推進計画も閣議決定された。

国の役割は、国家としての存立にかかわる事務、全国的な規模もしくは視点に立って行わなければならない施策などと限定。地方自治体は住民の福祉の増進を図り、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うとし、住民に身近な行政はできる限り地方自治体にゆだねることを基本とした。

機関委任事務の廃止に伴い、国が適正に処理する必要のある「法定受託事務」とそれ以外の「自治事務」に区分。国の関与を必要最小限とするため、法律や政令の根拠を求めるとともに「助言」「協議」など基本類型を設定。国と地方の係争を処理する機関を総理府に新たに設置する。また社会保険業務や職業安定関係の地方事務官を廃止する。法案は475本に上り、国会に特別委員会を設置して審議される予定。 【有田 浩子】[1999-03-26-11:18]


99/03/26 ◇地方分権一括法案を閣議決定◇朝日新聞ニュース速報

政府は二十六日午前の閣議で、国と地方を従来の上下の関係から対等なものに見直すことを主眼とした「地方分権一括法案」を閣議決定した。3月29日にも国会に提出する。骨格となる地方自治法をはじめ四百七十五の関連法の一挙改正を目指す。自治体を国の下部機関とみなして仕事をさせる機関委任事務の廃止や、自治体職員の資格や定数に関する国の規制(必置規制)の見直しなどを盛り込んだ。分権社会実現への一歩として、今国会で成立させ2000年4月からの施行を目指している。

政府・自民党は一括法案と、今後提出する中央省庁再編関連法案をもとに衆院行政改革特別委員会で審議したい意向だ。

一括法案は地方分権推進委員会の一次から四次までの勧告を受けて作られた地方分権推進計画に基づく関連法の改正案だ。そのうち地方自治法改正案には、国の役割を国家としての存立にかかわる事務などに重点化し、住民に身近な行政は自治体が担うことを明記した。今後の自治体にかかわる立法に、地方の自主性や自立性への配慮を求めている。

具体的な分権改革の中心として、機関委任事務が廃止され、その事務はすべて、自治体の裁量が利く自治事務と、国が実施方法まで定める法定受託事務に振り分けられる。例えば、都市計画や学級編成基準作成などの仕事は自治事務に、産廃施設の建設許可、児童手当の支給などは法定受託事務になる。自治体行政への要求や助言といった国の「関与」は法に定められ、ルール化された。国からの「通達」も廃止される。

国と自治体間で「関与」をめぐりトラブルが起きた場合に、自治体の審査申し出によって、勧告を出す国地方係争処理委員会も総理府に新設される。自治体は勧告に不服があれば高裁に提訴できる

補助金で建設される図書館の司書の配置基準や、都道府県や指定市の福祉事務所のケースワーカーらの職員配置など法律や通達で国が義務づけてきた必置規制も緩和され、自治体の自立性がより強まる。

一括法案の中には、米軍用地の強制使用手続きでこれまで知事らにゆだねられていた代理署名を国の事務にする駐留軍用地特別措置法改正案も含まれる。これには共産党や社民党などに「分権に反する」との反発もある。

また、身分は国家公務員でありながら、知事の指揮監督のもとで社会保険や雇用安定の仕事をしている地方事務官制度を廃止し、それぞれの大臣の指揮監督に入る。地方事務官は地方公務員の職員団体(登録団体)の構成員になることもできたが、制度廃止に伴ってこれができなくなる。これを具体化する厚生省設置法改正案などに社民党は「分権に逆行」と反対し、修正を求める構えだ。[1999-03-26-12:06]


99/03/26 <地方分権>一括法案の概要 地方自治法の改正など 毎日新聞ニュース速報

●地方分権法案の概要●

地方分権一括法案の概要は以下の通り。

<地方自治法の改正>

一、機関委任事務の廃止と自治事務及び法定受託事務の創設。

一、関与の法定主義、必要最小限の原則。

一、国地方係争処理制度の創設。関与に関する訴訟制度の創設。

一、地方行政体制の整備(議員定数制度の見直し、議案提出要件及び修正動議発議要件を定数8分の1以上を12分の1以上に緩和、中核市の要件緩和、特例市制度の創設)。

<米軍基地の使用手続きに関する特別措置法の改正>

一、土地調書等への署名押印の代行等、知事・市町村長の事務を国の直接執行事務とする。

一、使用・収用裁決等の事務を収用委員会が実施する都道府県の法定受託事務とする。

一、法定受託事務とするにあたり暫定使用制度(1997年4月法改正により導入)では対応できない場合、公共用地特措法の仕組みに準じて収用委員会による緊急裁決の制度及び内閣総理大臣による代行裁決の制度を創設。

<地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正>

一、都道府県の加入する地方公共団体の組合に教育委員会を置くことができる。

一、都道府県又は指定都市の教育委員会について、条例で定めるところにより、委員の数を6人とすることができる。

一、教育長の任命にかかる文部大臣又は都道府県教育委員会の承認を廃止するとともに、都道府県及び指定都市の教育長を市町村の教育長と同様に、教育委員会の委員から任命する

一、都道府県教育委員会等から市町村教育委員会等への事務の委任に関する規定及び市町村教育委員会等に委任した事務に関する都道府県教育委員会等の指揮監督に関する規定を削除。

<地方事務官制度の廃止>

1、都道府県で社会保険業務に従事している地方事務官を廃止厚生事務官とする。

1、職業安定関係地方事務官が従事するとされている事務は国の直接執行事務とし職業安定関係地方事務官を労働事務官とする。

1、都道府県労働基準局、都道府県女性少年室及び都道府県職業安定主務課を統合し都道府県労働局を設置。

<廃棄物の処理及び清掃に関する法律の改正>

1、都道府県知事等が行う一般廃棄物処理施設の設置許可等にかかる事務自治事務とし、厚生大臣は生活環境の保全上緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、必要な指示を行うことができる。

1、都道府県知事が行う都道府県知事の産業廃棄物処理計画の作成にかかる事務を自治事務とし、厚生大臣は産業廃棄物処理計画が厚生省令で定める基準に適合しないと認めるときは、都道府県知事に対し、当該産業廃棄物処理計画を変更すべきことを求めることができる。

、産業廃棄物処理業の許可等にかかる事務を都道府県が処理する法定受託事務とする。

<市町村合併の特例法改正>

1、住民発議制度の拡充。

1、都道府県知事による合併協議会設置の勧告。

1、普通交付税の算定の特例の期間をこれまでの5年から10年に延長。その後さらに激変緩和措置として5年間。

1、合併特例債の創設。

1、地域審議会の設置。

<地方財政法の改正>

1、地方自治体は地方債を発行するときは自治大臣又は都道府県知事に協議。自治大臣等が同意した地方債の元利償還金は地方財政計画に算入。自治大臣等の同意を得ないで地方債を発行するときは地方自治体は、あらかじめ議会への報告が必要。

<地方税法の改正>

1、法定外普通税の許可制度の見直し。

1、法定外目的税の創設。

[1999-03-26-11:18]


99/03/26 大胆な財源移転なく不満も   共同通信ニュース速報

地方分権整備法案が閣議決定され、これで中央省庁等改革基本法、情報公開法案とともに行政改革三本柱の法整備に一応のめどがつき、二十一世紀に向けて「日本流の行政改革」が間もなくスタートする。                           

分権整備法案は、中央集権から地方自治への流れを確実にすることが目的だ。国の権力の象徴とされた機関委任事務を廃止し、地方の事務を「自治事務」と「法定受託事務」に法的に位置付け、国の介入をできる限り排除しようという意義は決して小さくない。  

だが、分権には権限や事務量に見合う財源が不可欠だ。同法案は地方財源の強化を明記しながら、自治体が渇望した「(国からの)大胆な財源移転」は盛り込めず、自治体に不満を残した。    

財源移転が不発に終わった原因として(1)既得権益を死守しようとした省庁と族議員が激しく抵抗した(2)法案作りが政府内の合意を前提としたため調整が難しく懸案が先送りされた―ことなどが挙げられる。                       

作業をリードした地方分権推進委員会も調整難などを理由に、勧告前から財源移転を政府の税制調査会にゆだねるなど消極的な姿勢に終始したことも響いた。結果的には、地方交付税の増額や少額補助金の一般財源化など従来方式の財政支援策しか自治体には与えられないことになった。                    

一方、分権化に伴い自治体は条例制定などで権限が拡大し、地方議会も審議対象が広がる。住民の信頼にどうこたえるのか―その力量と責任が問われることになる。 [1999-03-26-09:14]


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