進む教育改革 1998/7教育課程の改善のポイント

幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について(教育課程の改善のポイント) (平成10年7月29日 教育課程審議会)

教育課程の改善のポイント 

<改善の基本的視点>

完全学校週5日制の下で、各学校がゆとりのある教育活動を展開し、子どもたちに 「生きる力」をはぐくむ。

1.豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚の育成を重視する。他人を思いやる心、豊かな感性、ボランティア精神、正義・公正を重んじる心、社会生活上のルールや基本的モラルなどの倫理観の育成を重視するとともに、我が国の歴史や文化・伝統に対する理解と愛情を深め、異文化の理解と国際協調の精神を培う。

2.多くの知識を一方的に教え込む教育を転換し、子どもたちが自ら学び自ら考える力を育成する。知的好奇心・探究心をもって自ら学ぶ意欲を身に付けるとともに、論理的な思考力や判断力、表現力、問題解決能力を育成し、創造性の基礎を培い、社会の変化に主体的に対応し行動できるようにする。

3.ゆとりのある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実する。社会生活を営む上で必要な基礎的・基本的な内容に教育内容を厳選するとともに、厳選された内容については確実な定着を図る。一人一人の個性を生かす教育を充実し、中学校・高等学校で学習の選択幅の拡大を図る。

4.各学校が創意工夫を生かし特色ある教育、特色ある学校づくりを進める。教科の内容を2学年まとめて示したり、創意工夫を生かした時間割編成を可能とするなど教育課程の基準の大綱化・弾力化を図り、各学校が地域や幼児児童生徒の実態に応じ創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開し、特色ある学校づくりを進める。

<教育内容の改善>

1.教育内容の厳選

児童生徒にとって高度になりがちな内容などを削減したり、上級学校に移行統合したりなどして、授業時数の縮減以上に教育内容を厳選する。

・ 例えば、算数・数学、理科などは、新授業時数のおおむね8割程度の時数で標準的に指導しうる内容に削減。

〔小学校、中学校において削減される内容の例〕

国語:文学的文章の詳細な読解(人物の気持ちの読み取り、段落分けの指導などは特定学年で指導)

算数・数学:(小)桁数の多い複雑な計算、図形の合同・対称、文字式、比例・反比例の式 など

(中)二次方程式の解の公式、一元一次不等式、円の性質の一部、統計など

理科:(小)植物の水の蒸散、中和、金属の燃焼、星の動き など

(中)イオン、力の合成と分解、日本の天気、遺伝・進化 など

2.道徳教育

道徳教育については、幼稚園や小学校低学年では、基本的なしつけや善悪の判断などについて繰り返し指導し徹底を図るとともに、ボランティア体験や自然体験などの体験活動を生かした学習を充実する。

3.国際化への対応

中学校及び高等学校で外国語を必修とし、話す聞く教育に重点を置く。小学校でも「総合的な学習の時間」などにおいて英会話などを実施できるようにする。国際社会に生きる日本人としての自覚を育てるため、国旗及び国歌の指導の充実を図る。

4.情報化への対応

中学校技術家庭科において「情報基礎」を必修とし、高等学校において教科「情報」を新設し必修とする。

5.体育・健康教育

生涯にわたって運動に親しみ基礎的体力を高めることを重視するとともに、新たに小学校中学年から保健に関する内容を指導することとし、自らの健康を適切に管理し、心の健康、望ましい食習慣の形成、生活習慣病の予防、薬物乱用防止などの課題に適切に対応できるようにする

6.各学校の創意工夫ある教育の推進

i) 各学校が創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開し、国際理解・外国語会話、情報、環境、福祉・健康など横断的・総合的な学習などを実施するため、「総合的な学習の時間」を創設する。

ii) 国語、音楽、図画工作・美術、家庭、体育などの教科の内容は2学年まとめて示すこととし、各学校は2学年を見通し児童生徒の実態に応じた弾力的指導を行う。

<各学校段階ごとの役割の徹底>

1.幼稚園

幼稚園では、遊びを中心とした楽しい集団生活の中で、豊かな体験を得させるとともに、幼児期にふさわしい道徳性の指導を充実する。

2.小学校

小学校では、読・書・算など日常生活に必要な基礎的・基本的内容を繰り返し学習させ習熟させる。

3.中学校

中学校では、小学校教育の基礎の上に社会生活に必要な基礎的・基本的な内容を確実に習得させるとともに、選択学習の幅を拡大し、個性の伸長を図る。

・ 第1学年から全教科について選択が可能。

・ 選択の授業時数は、第3学年では最大週当たり4.7単位時間。また、1教科につき各学年週当たり2単位時間まで可能。

4.高等学校

高等学校では、将来いずれの進路を選択する生徒にも一定の知識や技能等を身に付けさせつつ、各学校・生徒の選択の幅を拡げて一人一人の個性を一層伸ばし自立を図る。

・ 数学史・科学史的な話題などを学び、数学的、科学的な見方や考え方を身に付ける「数学基礎」「理科基礎」を新設し、選択必修とする。

・ 必修科目は複数科目からの選択必修を基本。

5.盲学校、聾学校及び養護学校

盲学校、聾学校及び養護学校では、障害のある幼児児童生徒の能力や可能性を最大限に伸ばし自立・社会参加を実現するため、障害に基づく種々の困難を改善・克服する指導を一層充実する。また、高等部訪問教育の位置づけの明確化や小・中学校などとの交流教育の一層の推進を図る。

・ 「養護・訓練」の名称を「自立活動」に改め、一人一人の個別の指導計画を作成。

<授業時数の枠組み>

1.授業時数の削減

年間授業時数は、完全学校週5日制が実施されることに伴う土曜日分を縮減した時数とし、現行より年間70単位時間(週当たり2単位時間)削減する。

例)小学校第4〜6学年 週当たり29単位時間 → 27単位時間(1単位時間は45分)

1週間のうち6時間授業の日が2日、他の日は5時 間授業

2.授業時数等

i) 小・中学校の各教科等ごとの授業時数は別表1及び別表2のとおり。

ii) 高等学校の卒業に必要な修得総単位数は、現行の80単位を74単位に縮減し、共通に学ぶ必修科目の合計単位数は、現行の38単位(普通科)を31単位に縮減する。具体的な必修科目は別表3のとおり。

iii) 各学校が創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開し、国際理解・外国語会話、情報、環境、福祉

・健康など横断的・総合的な学習などを実施するため、「総合的な学習の時間」を創設する。

・ 小学校第3学年以上の各学年に、最低、週当たり2単位時間以上を配当(別表1及び2参照)

iv) 各学校が創意工夫を生かして時間割を編成できるようにする。

例)・ 実験を行う理科の授業は75分授業を行い、日々の習熟の必要な英語は25分授業を毎日行うことが可能。また、コンピュータの授業は第1学期に集中的に行うことも可能。

別表

別表1 小学校の各教科、道徳、特別活動及び総合的な学習の時間の年間標準授業時数

別表2 中学校の各教科、道徳、特別活動及び総合的な学習の時間の年間標準授業時

別表3 高等学校における教科・科目及び単位数について

(初等中等教育局小学校課)

 

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