99/03/30 東京都、教員に民間並み業績評価導入へ 読売新聞ニュース速報

公立学校教員の人事考課のあり方を検討してきた東京都教育長の私的研究会(座長=蓮見音彦和洋女子大教授)は三十日、人事や給与に連動しない現行の勤務評定制度を改め、業績評価を給与などに反映させる人事考課制度を導入するよう求める報告書をまとめた。都教委は「報告に沿った形で早急に規則を見直したい」としている。一九五八年に採用された現行制度は教員組合の「勤評闘争」で形がい化されており、評価制度が本格的に導入されれば全国で初めてとなる。

都教委によると、現行制度でも校長が教員を三段階で評価しているが、形式的で、人事異動や給与には反映されていない。研究会は「民間企業などは能力や業績に応じた人事管理を取り入れている」と指摘し、「評価結果を人事異動や校内人事、給与に連動させ、教員の人材育成に活用すべき」と結論づけた。

報告書が評価項目に掲げたのは「能力」「情意(意欲や態度)」「業績」の三項目。教科指導や生活・進路指導力、教育への意欲や態度、教員としての責任感などを評価するよう求めている。ただ、人柄や性格など内面的な要素は評価の対象外。

業績評価については、教育効果が短期間で測れない点も配慮、「教育の結果に至る過程を観察して評価することが不可欠」としている。評価は、教頭の意見や教員自身の自己評価に加え、保護者や生徒・児童の“評判”も参考にしながら、各校の校長が自ら授業参観なども行う。評価結果は管理職選考の参考資料にしたり、定期昇給や特別昇給の積み増しで格差をつけたりするという。

同研究会は昨年七月からこれまでに延べ十六回の会合を開催、教職員組合やPTA関係者、校長会などにも意見を求めてきた。都教委は「報告の方向性に沿って検討に入り、なるべく早く業績評価制度を導入したい」としており、今後、具体的な運用について関係機関と調整する。

これに対し、都教職員組合の浦登書記長は「基準に沿わない教師が評価されなくなるのでは、枠にはまった画一的な教育しかできない。子供と同じように教職員も競争原理に追い込む行為だ。教師間の協力関係を台なしにし、学校の教育力を衰退させるものだ」と反発している。

公立学校の勤務評定については、一九五六年、愛媛県での実施を手始めに、文部省主導で全国で導入、実施された。その際に東京都など全国的な規模で、日教組による組織的な反対運動が展開され、「勤評闘争」として社会的にも大きな関心を集めた。

都教委の現行制度は、五八年に制定された。勤務成績、特記事項、総評などで構成される「勤務評定書」を用いて校長が実施。勤務態度や出勤状況、勤務で特に目立つ点など職務状況を総合判断してA、B、Cの三段階で「絶対評価」する。

しかし、「勤評闘争」で「評定の結果は教師に不当に不利益をもたらす資料には使用しない」とされたため、人事異動などには反映されない上、評定の結果は教員本人に伝えられないことから、評定結果を利用した教員への指導ができない仕組みになっている。[1999-03-30-21:37]


99/03/30 <教員評価>実現までに多くの壁 管理職資質向上も不可欠=毎日新聞ニュース速報

教員の勤務評価に関しては、1950年代後半に全国的に広がった「勤評闘争」がある。58年に愛媛県が人件費抑制の狙いから、勤務評定で昇給を決める決定をしたことを発端に全国に「勤評問題」が起こった。日教組系の教員が「行政の管理が強まり、教員間の差別を生む」と各地でストライキを実施したため、教育界は大混乱した。以来、勤評は給与などに直接反映させない形で扱われてきたが、新制度はこの「タブー」を破ることになる。

 

東京都教委は、これまでのぬるま湯的な学校の体質を改めるとともに、熱心な教師とそうでない教師に差をつけることで、現場を活性化させたい思いがある。その突破口として、今回の新しい評価制度を導入したい意向だ。

児童・生徒を対象にした教育では、その効果の速効性、客観性が常に問題視される。目の前ですぐに効果が出なくても「5年、10年後に教え子が『先生の教えが分かった』と言ってくれれば、それも教育的効果」(都内の中学教師)というのが現場教員の受け止め方だ。評価方法にいかに客観性を持たせるか。教員の個性をどう評価するのか。

給与・人事に反映させた時に起きる可能性がある“教員同士の摩擦”にどう対処するのか。実現までには超えるべき壁が多くある。評価する校長ら管理職の資質の向上も不可欠だ。

[1999-03-30-20:13]


99/03/30 <教員評価>待遇や人事に反映させる評価制度導入を提言−−毎日新聞ニュース速報

東京都教育長の私的研究会「教員の人事考課に関する研究会」(座長、蓮見音彦・和洋女子大教授)は3月30日、これまでの教員の勤務評価制度に代わって、評価を待遇や人事に反映させる新たな教員評価制度の報告書をまとめた。教員の評価システムを抜本的に変える提言は全国初といい、都教委はこれを受けて検討委員会を設置、21世紀初頭には制度化を目指す。新たな評価制度の導入は他県に与える影響も大きいが、教員組合などは「教員への管理強化で認められない」と反発しており、実施までには大きな議論を呼びそうだ。

同研究会は昨年7月、大学教授や民間会社役員などをメンバーに発足、10回の討議を重ねてきた。

新たな考課案では「能力開発型」の評価を提案する。絶対評価と相対評価を組み合わせた方式で5段階に分類。教頭が第1次、校長が第2次評価者となり、随時授業を観察して判断する。さらに児童・生徒、保護者の意見も参考にするため、アンケートなどを実施すべきだとしている。また、教員が教頭・校長と面接を行い、教育目標などを設定。自己申告の形で目標が達成できたかどうかも評価の対象にする。

評価の結果は、定期昇給や特別昇給に活用することが適切としており、さらに人事異動や管理職選考にも反映させる。

現在は絶対評価のみの3段階で、「学習指導」などについて校長が評価しているが、昇給や異動には反映させていない。

都教委は4月以降、実施計画を策定するための検討委員会を設けるなど「できるだけ早い時期から実施したい」(同教委幹部)としているが、教員組合側は反発。都教職員組合の浦登書記長は「授業なども校長らの意図した画一的なものになり、時代に逆行する。管理職の顔色をうかがう教師だけが生き延びることになる」と話している。

<提言された新たな教員評価の骨子>

(1)自己申告制度の導入 教員が校長・教頭と面接し、自分の教育目標を設定。自己評価する際も面接して助言などを受ける。達成の度合いなどを評価する。

(2)教頭を第1次評価者に 教員と日常的に接する教頭を最初の評価者にする。教育内容を把握するため授業を観察する。学級経営(クラスマネジメント)の内容も活用する。

(3)児童・生徒、父母らの意見を参考意見として活用する。

(4)評価結果を教員本人に開示すべきだ。苦情対応の仕組みも検討する。[1999-03-30-20:04]


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