糖尿病の新しい判定法 〜血糖値の基準、より厳しく   

 2000.04.09  朝日新聞

(著作権の関係上、内容をそのまま全て掲載出来ません。 概要として纏め直して掲載しています。)
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黄色信号のうちに手を打つ 〜血糖値の基準、より厳しく

 糖尿病の診断の物差しが新しくなった。日本糖尿病学会は去年、血糖値による判定方法の基準を変え、「糖尿病型」の人を見分ける基準値を引き下げた。
 一定の水準を超えている人の場合は、たった一度の採血検査でも即座に診断がつくようになった。赤信号になる前に、黄信号のうちに手を打とう−患者を早めに見つけ、治療の道筋をつけるための工夫だという。



糖尿病診断の新しい基本枠組み  埼玉県川越市に住む男性会社員Aさん(56)は定期健診の血液検査で、その日のうちに「糖尿病」と診断された。
 日本では、一回目の検査で基準を超す血糖値が出た人は、とりあえず糖尿病の疑いが濃い「糖尿病型」とみなされ、後日、二回目の検査で高血糖が確かめられると正式に「糖尿病」と診断されるのが原則だ。このため、自覚症状がない人の場合、2回目の検査をせず、治療の好機を難してしまうことも少なくない。

   では、なぜAさんは一回目だけで診断されたのか。それは、新しい基準のお蔭だ。

 この検査でAさんの空腹時の血糖値は、血漿(血液の液体成分)1dL当たり134mg
それに加え、赤血球がもつヘモグロビンにぶどう糖がどのくらいくっついているかを示す「ヘモグロビンAIC」の値が、7.2%だった。

 血糖値食後に上昇するなど刻々と変化するが、ヘモグロビンAICの値は過去一、二カ月の血糖値が平均してどのくらいかを教えてくれる。 正常な値は、4.3〜5.8%とされる。

 新基準では、血糖値一定水準を超え、同時にこのヘモグロビンAICの値が6.5%以上なら、一回の検査だけで糖尿病と診断できるようになった。

 埼玉医科大学総合医療センターの河津捷二教授は、「いままでは血糖値だけに頼っていた。ヘモグロビンAICの値を組み合わせることで、患者の一部は一回の採血で済むようになった」と語る。

 ほかにも、多尿など糖尿病の典型症状や網膜症がある人も、血糖値によっては一回で「糖尿病」とするなど新基準には素早い診断のための工夫が凝らされた。

 「糖尿病型」判定する血糖値そのものも変わった。 日本では従来、空腹時の場合は「血漿1dL当たり140mg以上」が基準だった。これでは、Aさんは見過ごされてしまう。
 今回は、米国の疫学調査などをもとに、この基準値を「126mg以上」に引き下げた。110〜126mg未満は、糖尿病予備軍の「境界型」だ=図。

一方、ぶどう糖を摂取して二時間後の血糖値糖負荷試験二時間値)は「200mg以上のままとした。

 基準の改定で学会の検討委員会の委員長を務めた葛谷健・自治医科人学名誉教授は「症状が赤信号になってから一生懸命に治療するのではなく、黄信号のうちに気をつけて生活を管理すれば、深刻な症状を避けられるケースが多い」と狙いを語る。

 Aさんは、担当医から「いまは症状がないかもしれないが、外食が多く、運動の機会も少ない。体重も増加傾向にある」と指摘された。食事の量や運動の方法について指導を受け、血糖降下薬を飲むなどの治療を続けている。

糖尿病の分類
 日本糖尿病学会の新しい分類によると、糖尿病は「1型」「2型」「その他特定の型」「妊娠糖尿病」に大別される。
 これまでの呼び方に照らすと、子どもや若い人に発症が多い「インシュリン依存型」は1型、最もよくみられる「インシュリン非依存型」は2型に、それぞれはぼ相当する。
ただし、1型でも初期の段階ではインシュリンの注射が要らない期間が長く続くケースがあり、一方、2型でもインシュリン治療が必要になる人がいる。
このため新分類は、それぞれの型をさらにインシュリンの「依存状態」と「非依存状態」に区分している。

 厚生省の実態調査(1997年)によると、糖尿病が強く疑われる人は国内に推定で約690万人、放置すると糖尿病になる恐れがある「糖尿病予備軍」を合わせると約1370万人になる。
 しかし、別の調査では、治療を受けている患者は約218万人(96年)にすぎず、患者の発見と治療は急務だ。

 Aさんは中高年に多い「2型糖尿病」。日本では糖尿病の九割以上をこの型が占める。血糖値の改善には、食事療法や運動療法が効果大だ。

 河津教授は「自覚症状がなく、ゆっくり進行するのが2型糖尿病の大きな特徴だ。とくに家族に糖尿病患者がいるような人は、四十歳を過ぎて太ってきたと思ったら年一回は必ず血液検査を受けてほしい。そうすることで、大部分の人は黄信号のうちに発見できるはずだ」と話している。




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