1.測定原理別集計


  参加全37施設中、酵素法を使用している施設は23施設(62%)、ヤッフェ法使用施設が10施設(27%)、ドライケミストリー使用施設が7施設(19%)でした。施設数の合計が37施設ではなく40施設となるのは、酵素法とドライケミストリーを併用している施設が3施設あるためです。

   CREを正確に測定するということを考えると、やはり特異性の高い酵素法を用いるべきでしょう。しかし、酵素法はヤッフェ法に比べて高価であり、医療情勢の厳しい現在では、ヤッフェ法から酵素法に変更するというのは、なかなか難しい状況なのかもしれません。

  ヤッフェ法は酵素法が開発される以前から多くの施設で用いられてきました。しかし、ヤッフェ法はCREに特異的な反応ではなく、アセトン、アセト酢酸、ピルビン酸といった活性メチレン基を含む物質とも反応し、正誤差を生じます。よって、ヤッフェ法は酵素法に比べて0.1mg/dl〜0.3mg/dl高値に測定されると言われています。

  汎用自動分析装置は水が命。水がなければなにもできません。その点、ドライケミストーはその名のとおり測定に水が要りません。水の供給がストップした場合、その特性が多いに活かされることでしょう。また、測定時間も汎用機に比べて短いという点も注目すべき利点であると考えられます。

  では、正確さという点ではどうでしょう。正直いうとこの点はまだなんとも言えません。ドライケミストリーが最近普及し始めたということもその理由の一つです。しかし、ドライケミストリーは現時点ではヤッフェ法の測定値に合うように開発されているようなので、やはり酵素法に比べやや高値に測定されることが考えられます(ドライケミストリー使用の10施設のうち9施設がヤッフェ法を基準としたもの、残りの1施設は酵素法でもヤッフェ法でもない)。今後は酵素法の測定値と合うドライケミストリーの開発が待たれます。

2.検量方法別集計


     参加全37施設中、試薬専用標準液を使用している施設は15施設(39%)、他社の標準液使用施設が8施設(20%)、管理血清使用施設が10施設(24%)、ドライケミストリー使用施設が7施設(19%)でした。施設数の合計が37施設ではなく40施設となるのは、酵素法とドライケミストリーを併用している施設が3施設あるためです。

 

   CRE測定を行うためには、CRE濃度の分かった物質をつかって検量線を引かなくてはなりません。 この物質はキャリブレーターともいい、非常に重要なものです。この物質に何を用いるかによって、同じ試薬同じ機械を用いていても測定値に違いが現れることが考えられます。つまり測定値を決めるものです。

 

  この物質の種類としては、大きく2つに別けられます。1つは標準液と呼ばれるものです。液状キャリブレーターともいいます。特徴としては液状で、溶かしたりする必要がなくそのまま使えます。見た目も中身も血清と違い、透明な液体といった感じです。使っている試薬専用のものや、他の試薬メーカーのものがあります。

 

  もう1つは管理血清と呼ばれるものです。血清キャリブレーターともいいます。特徴としては、凍結品で溶かして使います。見た目も中身も血清と同じと考えてよいと思います(メーカーによって違いますが・・・)。

 

  この2種類の物質。どちらを使うのがいいのでしょうか。ここで問題となるのがマトリックスの影響です。血清中には測定したい目的の物質以外に多くの物質が存在します。測定にはその多く物質の影響を受けながら測定されていると考えられます。また液体(血清)の粘度も影響してきます。

 

  標準液は、普通血清中に存在するような物質は含まれていないと考えられます。また粘度も血清とは違うと考えられます。血清中の物質を測定するということを考えると、血清と同じような性状を持った管理血清を用いたほうが、より実際的ではないでしょうか。

 

  サーペイ試料が血清だった場合、標準液を用いた測定では、マトリックスの影響を受けてしまい、測定値が高めあるいは低めになってしまうことが充分考えられると思います。

 

 

 

3.測定機器別集計


ただいま準備中。

 

 

 

 

4.Twin Plot 法による測定値の分布


   Twin Plot法は、濃度の異なる2種類の測定値を、それぞれX軸Y軸にとったものです。このようなグラフを作成することで測定値の分布状態が把握できます。また、グラフの各プロットを要因別(キャリブレーター別、測定原理別など)に色分けすることで、もし、その要因に特徴があれば、グラフにその特徴が現れると考えられます。

   サーベーなど測定条件の異なるデータが多量にある場合、Twin Plot図を作成することは有用なことであると考えられます。

 

 注) 図中の四角い枠は、目標値±10%を表しています。

 

 

(1)キャリブレーター別

@ Sample1とSample2について

   この図からSample1の測定値にバラツキがあることが分かります。キャリブレー別で見ても、このキャリブレーターは高値あるいは低値だ、ということは言えそうもありません(ドライケムは高値傾向のようですが)。さらに細かい解析が必要のようです。

 

 

 

 

 

 

A Sample2とSample3について

   ドライケム使用の1施設以外は、全て目標値±10%以内に入っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2)測定原理別

@ Sample1とSample2について

   Sample1では、ヤッフェ法は酵素法に比べて高値傾向が見られます。ドライケムも酵素法に比べて高値傾向にあるようです。これは先にも述べましたが、現段階ではドライケムの測定値はヤッフェ法に合うように調整されていることを反映しているものと考えられます。

 

   ドライケムの中で酵素法の測定値と同じレベルの測定結果を示している施設が3施設ありますが、これは酵素法との相関ファクターが入っていることが予想されます。

 

   Sample2は全体的に収束した結果となっています。

 

 

 

 

 

A Sample2とSample3について

   ドライケム使用の1施設以外は、全て目標値±10%以内に入っています。

 

   外れた1施設は相関ファクターが入っています。よって、このファクターの設定がうまくいっていない可能性があります。相関データを取り直す必要があると考えられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TwinPlot図から言えること

  1. 低濃度域(Sample1)のバラツキが多きいが、中・高濃度域(Sample2、3)では比較的データは収束している

  2. 低濃度域(Sample1)では、酵素法に比べてヤッフェ法とドライケムに高値傾向が見られる

  3. ドライケムは酵素法とヤッフェ法に比べて、データのバラツキが大きい(高値に測定されているものもあれば、目標値付近に測定されているものもある)。これは相関ファクターの影響が考えられる

  4. キャリブレーターで、標準液を用いるか管理血清を用いるかでのデータの違いはこの図からはなんとも言えない