'99年1月


「ニンゲン合格」

 黒沢清監督脚本、西島秀俊、役所広司、管田俊、りりィ、麻生久美子、哀川翔、洞口依子、大杉漣。

 交通事故で10年間、意識が無かった主人公の豊がある日、突然に目覚める。しかし、家族がバラバラになっている現実に直面する。
 「レナードの朝」を連想するけど、「レナードの朝」が米国的、合理的な感情の処理に終始するのに対して、「ニンゲン合格」がいかにも日本的な、感情の裏を表現しているのは好感が持てる。
 家族の扱い方がポイントとなっているけど、黒沢清的には、そういう素直な目論見じゃなくて、もうちょっと捻った、裏読みしないといけないのがラストでしょう。タイトルの「ニンゲン合格」というのにも、それは現れている。

 結構面白い、というか黒沢清の中では一番面白かった。ただ、表現しようとする事、つまりテーマは好きだけど、表現が嫌いな場面が結構ある。洗濯モノを干すシーンの長回しなど、あの意味有りげなパンとかはちょっと許せない。


「おもちゃ」

 深作欣二監督、新藤兼人原作脚本、宮本真希、富司純子、津川雅彦、南果歩、野川由美子、岡田茉莉子。

 売春禁止法が施行されようという時代の京都花街、芸者置屋の藤乃家で雑用をする時子が宮本真希演じる主人公。
 気丈な女将、三人の芸者、西陣の機織り職人の父、貧しい実家などに囲まれる生活。この辺、出だしのテンポはいい感じだったけど、後の方は良くない。ラストは、こんなモンかという感じ。ラストに近くなるほど程、無理な耽美主義に走っているようで、詰まらない。
 宮本真希って美人じゃないけど、役者としてはかなりいいかもしれない。上手い。裸にならなくてもいい気がするけど(^^;)…単なる監督の趣味か(^^;)?


「のど自慢」

 井筒和幸監督脚本、室井滋、大友康平、尾藤イサオ、伊藤歩、松田美由紀、竹中直人。
 のど自慢の参加者にスポットを当てた群像劇。ベタな演出や、間の古さはちょっと感じるけど、そつ無くまとめた印象。
 
 大友康平は歌は上手いけど演技下手。伊藤歩は演技いいけど脚本的に甘い設定。竹中直人は過去の遺産的なキャラクタだけで生きている。室井滋はなかなかよかった。
 特に伊藤歩は役上の葛藤が描かれてていないので感動が薄い。唄のシーンが凄く良かっただけにちょっと残念。


「ラブゴーゴー」 - 愛情来了 -

チェン・ユーシュン監督脚本、タン・ナ、シー・イーナン、チェン・ジンシン、リャオ・ホェイチェン。

 面白かった。
 小学校の時の同級生リーファに恋するパン職人のアシェン、拾ったポケベルを通して電話で恋するリリー、アソンはリーファのヘヤサロンで彼女を助ける…、「熱帯魚」でデビューしたチェン・ユーシュン監督が描く3つのラブストーリが交錯する構成が見事。
 東京国際映画祭1997では、表記は「ラヴゴーゴー」だったけど、なぜ変わったのだろう。


「ビッグ・リボウスキ」- The Big Lebowski -

 ジョエル・コーエン監督脚本、イーサン・コーエン製作脚本、ジェフ・ブリッジズ、ジョン・グッドマン。

 面白かった。やはり、コーエン兄弟の映画は凄くいい。ボーリング好きのデューク。富豪と同じリボウスキという名前である事から誘拐事件に巻き込まれていく。

 映像はいいし、それぞれのキャラクタは個性的で楽しい。ストーリもテンポいいし、引きつけられる。何しろ驚かされるのが、 ハチャメチャな展開な様で実はちゃんとした推理物としてして成立している所。場当たり的に事件は進展しているようだけど、実はさまざまな人間の渦の中で、主人公はハードボイルド物みたいな動きをしている。この不思議な味付けは、ちょうど「ファーゴ」みたい。そういえば、「ファーゴ」もこれも誘拐絡みというのは…偶然??それともコーエンは誘拐好きなのか?


「ラッシュアワー」- Rush Hour -

 ブレット・ラトナー、クリス・タッカー、ジャッキー・チェン。

 「フィフス・エレメント」あたりから人気急上昇(なのか?)、「ランナウェイ」も公開されたクリス・タッカーと、ジャッキー・チェンの共演。
 異国の刑事同士のコンビという設定も今までにはよく使われているけど、この二人の組み合わせは面白い。掛け合いはそれほどよくないし、クリス・タッカーはエディ・マーフィそのままって感じもするけど(^^;)、…。

 ジャッキー・チェンの動きは全盛期よりは悪いけど、なかなか見せてくれるし、クリス・タッカーのキャラはなかなか面白いし、小粒ながら楽しめる映画だった。


「完全なる飼育」

 和田勉監督、新藤兼人脚本、竹中直人、小島聖、北村一輝、沢木麻美、塚本晋也。
 
 竹中直人演じる中年男の岩国は、ランニング中の女子高生クニコを誘拐し、アパートに監禁する。完全なる愛の結び付きを求める岩国と、クニコの生活が始まる。
 実話がベースという事だけど、まあ、まるで納得出来ない展開。特にクニコの心理的な変化がまるで描ききれていないので、ストーリ全体がまるで伝わって来ない。
 主人公の身勝手さは、つまりは監督の、中年的な身勝手な情欲の投影にしか思えない。和田勉といえば「ハリマオ」といい、ロクな映画は作らないなあ。


「マイ・フレンド・メモリー」 - The Mighty -

 一年の初めに観る映画は大抵、ロクでもない映画ばかりだったのに、今年は最高に面白かった。 ピーター・チェルソム監督、ハリー・D・スタントン、ジーナ・ローランズ、シャロン・ストーン。

 図体がでかくて力も強いのに、父親が犯罪者で本もロクによめない、いじめられっ子のマックス。隣りに引っ越してきたケビンは難病に冒され歩くのも一苦労だが、頭が切れる。マックスが足、ケビンが頭となり協力しあい、二人の友情が深まっていく。

 不治の病の子供との友情物語、古典的なお涙頂戴の設定だけど、結構、あっさりした演出でが上手く、感動的に仕上がっている。この映画には忘れられた夢がある。素晴らしい。


「モスラ3 キングギドラ来襲」

 米田興弘監督、小林恵、建みさと、羽野晶紀、大仁田厚。
 「モスラ2」の方がよかった。特に見る部分もなく平凡。
 去年のNICOGRAPHで、この映画のCG部分をパソコンでやっているプレゼンを見た。まあ、そういう部分で面白かったぐらい。

「モスラ3 キングギドラ来襲」Official Site 東宝


「マイ・スウィート・シェフィールド」- Among Giants -

 サム・ミラー監督、サイモン・ボーフォイ脚本、ピート・ポスルスェイト、レイチェル・グリフィス。

 「フル・モンティ」の脚本家サイモン・ボーフォイがシナリオ、「ブラス!」のピート・ポスルスェイトが主演と、元気がある英国映画の顔が揃っているんだからチェックしておかないと。英国映画祭でも人気あったらしいし。

 不況の街、北イングランドのシェフィールド。ピート・ポスルスェイト演ずるレイと仲間たちは24Kmに及ぶ鉄塔を三ヶ月でペンキ塗りするという仕事を引き受ける。レイは、ヒッチハイクのオーストラリア女性、ジェリーと知り合い恋に落ちる。全体に大きな事件は起きない、淡々とした表現。田舎の自然の中に鉄塔に続き、そこをペンキだらけの男たちが鉄塔を塗っている。それだけで妙に絵になっている。

 鉄塔と言えば、「鉄塔武蔵野線」なんて邦画もあったが、鉄塔には奇妙な魅力がある。

「マイ・スウィート・シェフィールド」Official Site
→ 「鉄塔」関連情報


「ルル・オン・ザ・ブリッジ」 - Lulu on the Bridge

 ポール・オースター監督、脚本。ハーヴェイ・カイテル、ミラ・ソルヴィーノ。
 サックス奏者のイジーはライブ中に、乱射男の凶弾に倒れ、演奏が出来ない体になってしまう。失意の中、不思議な光る石を手に入れる。そこから女優志願のセリアに出会い、恋に落ちる。光る石が導く様にさまざまな事件が起きてくるが…。

 設定だけバラ散まいておいて、最後はコレでいいの?いい雰囲気だったのに、こんなラストで監督は納得しているんだろうか??
 監督脚本のポール・オースターは「スモーク」の脚本家でもあり、作家。

→ 「ルル・オン・ザ・ブリッジ」official website


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