2000年8月


「リプリー」 - The Talented Mr. Ripley -

 アンソニー・ミンゲラ監督脚本、パトリシア・ハイスミス原作、マット・デイモン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウ、ケイト・ブランシェット、フィリップ・シーモア・ホフマン。

 トム・リプリー(マット・デイモン)は造船業界の大物ハーバート・グリーンリーフに頼まれ、帰らない息子のディッキー(ジュード・ロウ)を連れ戻しにイタリアへ出掛ける。モンジベロの海の近く、作家の卵マージ(グウィネス・パルトロウ)と暮らすディッキーにトムはひかれて行く…。

 リメイクという事で、アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」と比べてしまうが、あまり共通点を感じない。原作をちらりと眺めた感じでは、「太陽がいっぱい」も「リプリー」も原作とはかなり違って、基本的な設定だけが同じようである。
 
 俳優陣は凄い。主演のマット・デイモンは「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」でアカデミー主演男優賞にノミネート、脚本賞を受賞後に「プライベート・ライアン」「ラウンダーズ」「ドグマ」とノリにノッている俳優。その他、「ガタカ」「イグジステンズ」のジュード・ロウ、「セブン」、「大いなる遺産」「スライディング・ドア」「恋におちたシェイクスピア」のグウィネス・パルトロウ、「エリザベス」のケイト・ブランシェット、「マグノリア」、「ハピネス」のフィリップ・シーモア・ホフマンと、わき役に至るまで物凄いスターばかり。しかし、その割にそれぞれのキャラクタが光ってはいないのが寂しい。
 ストーリとしては、同性愛という切り口が逆に面白くなかった。リプリーが持つ、底知れない複雑な心境というのを、単純にしてしまっている気がする。暗い心の奥底というものを一生懸命表現しようはしているけど、成功はしていない。

「リプリー」 Official Website


「フリントストーン2 ビバ・ロック・ベガス 」- Flintstone in Viva Rock Vegas -

 ブライアン・レバント監督、マーク・アディ、スティーヴン・ボールドウィン,クリスティン・ジョンストン、ジェーン・クラコウスキー。

 前作の'94年「フリントストーン モダン石器時代」と監督は同じ。主人公二人はジョン・グッドマン、リック・モラニスからマーク・アディ、スティーヴン・ボールドウィンへと交代。しかし、上手くイメージを変えずに役作りしている。
 ストーリは、前作より時代を遡る。フレッド・フリントストーン(マーク・アディ)とバーニー・ラブル(スティーブン・ボールドウィン )が恐竜クレーンの試験に受かった頃。ベッドロック・シティを見下ろす山の上、名家スラグフープル家の娘のウィルマは、上流社会の人々に嫌気がさして家を逃げ出しフリントストーンたちと出会う…。

 前作ではサラリーマン社会の悲哀を描いていたが、今回は妻ウィルマとの出会いのラブコメディを軸にしながら、やはり現代社会への皮肉な目も忘れていない。気軽に観るには楽しめる映画。CGの技術が格段に上がっている分、前作よりもよりリアルなアメコミの世界が見られる。

「フリントストーン2 ビバ・ロック・ベガス」 Official Website


「シャンハイ・ヌーン」- Shanghai Noon -

 トム・ダイ監督、ジャッキー・チェン、オーウェン・ウィルソン、ルーシー・リュー、ロジャー・ユーアン、ザンダー・バークレイ。

 近衛兵チョン・ウェン(ジャッキー・チェン)は、紫禁城からさらわれていったペペ姫(ルーシー・リュー)を追い西部までやってくる…。西部劇の時代に東洋の活劇を入れるというのは、「レッド・サン」などでも使われた面白い設定。ジャッキーのカンフーやアクションも冴えている。
 西部のガンマン、中国人の組み合わせの妙は面白いのだけど、そこにインディアンまで絡んでくると複雑で上手くいってない。特にインディアンの妻のキャラがよかっただけに、活躍が断片的で冴えなかったのが残念。
 ペペ姫役のルーシー・リューは、最近では「アリー・マイラブ」のリン・ウー役で有名だけど、個性的な顔だちに、アクションもこなすし、なかなかいい女優。

「シャンハイ・ヌーン」 Official Website


「ソフィーの世界」- Sophie's World -

 エリック・グスタブソン監督、シルエ・ストルスティン、トーマス・ウォン・フロムセン、アントリン・サザー、ヒョーン・フロバーグ。

 ある日、15歳の誕生日を目前とした少女ソフィーは、"あなたはだれ?"と書かれた一通の手紙を受け取る。そこから始まる、哲学的なファンタジー。同名ベストセラー小説の映画化。
 基本的には原作そのままで、古代ギリシャ、ルネッサンス時代と哲学の勉強を折り込みながら展開する。哲学としても、やや上辺を撫ぜただけの感じはするが、そこそこは面白い。

「ソフィーの世界」Official Website
「Sophies's World」Official Website


「TAXi2」- Taxi 2 -

 ジェラール・クラヴジック監督、リュック・ベッソン製作脚本、サミー・ナセリ、フレデリック・ディーファンタル、エマ・シェーベルイ、マリオン・コティヤール、ツユ・シミズ。

 改造プジョー406を駆るスピード狂の無免許タクシー運転手ダニエル(サミー・ナセリ)と、エミリアン刑事(フレデリック・ディーファンタル)のコンビは、今回は日本の防衛庁長官を誘拐したヤクザと対決する事になる。
 前作の「TAXi」よりは随分と面白くなっているけど、物語としては底が浅いし、まあバカバカしい映画。しかし、前作のジェラール・ピレスからジェラール・クラヴジックに監督が代ったせいかもしれないが、ノリはずっとよくなった。気軽に観るのにいい映画かもしれない。
 しかし、こんな映画が大ヒットするというのも、フランスもよく判らない国である(ノーパンのカンフー・シーンのお蔭でリピーター急増か?)。

→ 「TAXi2」 Official Website
→ 「TAXi」感想


「ボーイズ・ドント・クライ」- Boys Don't Cry -

 キンバリー・ピアース監督脚本、出演:ヒラリー・スワンク、クロエ・セヴィニー、ピーター・サースガード、ブレンダン・セクストン三世。

 主人公のブランドン(ヒラリー・スワンク)は、自分の性に違和感を覚える性同一障害の女性。男として振る舞うブランドンは、ネブラスカ州の田舎町フォールズ・シティで地元の娘に恋をする…。実話ベースという事だけど、後半はワイドショーの再現フィルムのような嫌らしさを感じる。単にショッキングに構成したとしか思えない。
 主演ヒラリー・スワンクの演技は素晴らしいし、テーマ的にもいいものがあるけど、表現方法というのはこれでいいものだろうか?
 ヒラリー・スワンクはこの映画でアカデミー賞の助演女優賞にノミネート。難しい役をこなしている。
 
「ボーイズ・ドント・クライ」Official Website


「ハピネス」- Happiness -

 トッド・ソロンズ監督、ジェーン・アダムス、フィリップ・シーモア・ホフマン、ララ・フリン・ボイル、ディラン・ベイカー、ベン・ギャザラ。

 1998年カンヌ国際映画祭批評家賞受賞作。監督の前作「ウェルカム・ドールハウス」が面白かったので期待。
 作曲家志望で内気なジョイ、美貌の人気作家ヘレン、幸福な家族を持つトリッシュの三姉妹。やがて、それぞれの悩みが表面化してくる群像ドラマ。人間関係の微妙な交差が面白い。タイトルからも判るように、幸福というものの価値観を描いているが、ソロンズ監督らしい皮肉な視点。何かズレた感覚と妙な間のヘンな映画。

「HAPPINESS」 Official Website


「ヒューマン・トラフィック」- Human Traffic -

 ジャスティン・ケリガン監督、ジョン・シム、ロレーヌ・ピルキントン、ショーン・パークス、ニコラ・レイノルズ

 場所は英国のカーディフ、主人公は20代のクラブ・フリークのジップ。ドラッグのやりすぎで不能になったと悩み、退屈なジーンズ・ショップに通う彼は、週末のクラブに情熱を燃やす…。
 クラブ・カルチャーを描くという部分は判るし、リアルな感じがするんだけど、人間を描くという意味では、「トレインスポッティング」の方が遥かに上手いと思った。

「ヒューマン・トラフィック」 Official Website


「タイタンA.E.」- Titan A.E. -

 ゲイリー・ゴールドマン監督、声優はマット・デイモン、ジョン・レグイザモ、ビル・プルマン。

 「アナスタシア」に続く、20世紀FOXのアニメーション。監督も同じゲイリー・ゴールドマン(関係ないが彼は3年間西船橋に住んでらしい…)。
 主人公ケールは、エイリアン・ドレッジにより破壊された地球から逃げる途中、父とはぐれ、一人小惑星で育った。15年後、大人になった彼は宇宙船バルキリーの船長ジョー・コルソ、美人の副操縦士のアキーマたちと共に、地球を救うという伝説の宇宙船タイタン号を探す旅へと出る…。
 「アナスタシア」よりは遥かに面白いし、アメリカン・コミックっぽい絵はちょっと違和感あるけど、まあ楽しめる。CGとの融合がまだまだ上手いとは言えないが。
 ダメな部分は多いけど、SFとしては楽しめた。

「タイタンA.E.」Official Website


「さくや/妖怪伝」

 原口 智生監督、樋口真嗣特技監督、安藤希、山内秀一、松坂慶子、嶋田久作、逆木圭一郎、藤岡弘、塚本晋也。

 東芝、ワーナー・ブラザース、日本テレビが共同で設立した「トワーニ」の第1回作品。
 政道の乱れ、人心の荒廃が封印の力を弱め、宝永四年(1707)に 富士が噴火、黄泉の国より妖怪たちが溢れ出しきた。妖刀・村正を手に公儀妖怪討伐士の榊咲夜(安藤希)は、義弟である河童の榊太郎(山内秀一)、公儀御庭番の似烏(にがらす)周造(嶋田久作)、猿鬼(ましらぎ)兵衛(逆木圭一郎)とともに 土蜘蛛の女王(ひめみこ)(松坂慶子)を倒すための旅に出る…
 キャラクタや作りは子供向けではあるけれど、結構丁寧に作ってあるのには関心した。ストーリ的にも緻密ではあるし、細かい小道具や登場人物もそれぞれ面白い。樋口の特撮ももっと予算があればずっとよくなっていたと思うと残念。特出なのが、土蜘蛛の女王を演じる松坂慶子。美しいだけに余計に妖怪としての凄味が出ていて素晴らしい。
 
「さくや/妖怪伝」 Official Website


「死者の学園祭」

 篠原哲雄監督、赤川次郎原作、深田恭子、加藤雅也、根津甚八、内田朝陽、坂本三佳、筒井康隆、セイン・カミュ。

 手塚学園演劇部の生徒が、学校に伝わる伝説を元にした台本を残して自殺する。部長の真知子(深田恭子)は、その台本を学園創立80周年を祝う春燈祭で上演しようやっきになっている。そんな頃、転校生英人がやってきてから、不可解な事件が連続する…。 
 深田恭子のシーン、特にラストはいかにもアイドル向けの撮影で角川映画の薬師丸ひろ子や原田知世を彷彿とさせる。「月とキャベツ」「はつ恋」の篠原哲雄らしい味が出ているが、ミステリーの部分はそれ程面白いとは言えない。
 筒井康隆とセイン・カミュは異色の抜擢でちょっと面白いけど、かなり浮いてる。

「死者の学園祭」 Official Website


「仮面学園」

 小松隆志監督、 宗田理原作、 藤原竜也、黒須麻耶、栗山千明、 石垣佑磨、麿赤兒、麿赤兒、渡辺いっけい。

 仮面をつける事により学校に来られるようになった登校拒否の殿村が、謎の死を遂げる。仮面ファッションモデルHIROKOの人気とともに、仮面の流行は社会現象にまでなっていく。そんな仮面の謎を追う私立光陽館高校に通う2年A組の川村有季と芦原貢は、仮面工房の堂島暁(藤原竜也)、その妹レイカ(栗山千明)と出会う…。
 原作「2年A組探偵局 仮面学園殺人事件」は未読ではあるけど、宗田理のテーマである、嘘だらけの大人社会への抵抗、子供の友情と団結、いたずらと冒険、という視点で観るとあんまり面白くない、というか夢が無い。「ぼくらの7日間戦争」みたいな方が宗田理らしく感じる。テーマと物語がマッチしてない感じがする。
 「いちご同盟」でも印象的だった黒須麻耶がやっと主人公をやってくれたのは嬉しいけどイマイチ花が無いのはなぜ?魅力的だと思うのだけど。
 小松隆監督は前作「どつきどつかれ」はのびのびとした印象があったが、今回はあんまり味が出せなかったかも。

「仮面学園」 Official Website
黒須麻耶公式ホームページ


「アメリカン・ヒストリーX」- American History X -☆

 トニー・ケイ監督、デビット・マッケンナ脚本、エドワード・ノートン、エドワード・ファーロング、ビバリー・ダンジェロ、ジェニファー・リーン、タラ・ブランチャード。

 父親を黒人に殺されたデレク(エドワード・ノートン)は白人至上主義に走り刑務所行きとなる。そんなデレクを弟のダニー(エドワード・ファーロング)は尊敬しているが、国語のレポートに「我が闘争」を選んだ事から、校長に呼び出され「アメリカン・ヒストリーX」と名づけたレポートの提出を言い渡される…。
 重いテーマながら、エンターテイメントとしても上手い。予告編からはかなり違う展開を予想していたが、嬉しい裏切りであった。ラストも見事。自分の国の恥部をこれだけ描いて見せる、ハリウッドの懐の深さは改めて関心させられる。
 エドワード・ノートンは、スポーツ少年からネオ・ナチへの傾倒、刑務所から出て更正を望む男と、大きな二つの変化を見事に演じている素晴らしい演技。
 
「アメリカン・ヒストリーX」 Official Website


「ゴージャス」 - 玻璃樽 Gorgeous -

 台湾の漁村に住むプウ(スー・チー)はボトルに入った手紙を拾い、その男アルバート(トニー・レオン)を頼りに香港へ向かう。そして偶然、プウはエリートの大富豪 C.N.チェン(ジャッキー・チェン)の命を助ける事になる…。
 ラブ・ストーリに無理にカンフーやアクションを入れている違和感は強い。アクション無しでも十分に面白い話だが、ジャッキーが出ればアクションという固定観念に縛られている様な感じはある。それでもジャッキー、トニー・レオン、スー・チーの魅力は十分。特にスー・チーは素朴でいい雰囲気を出しているし、トニー・レオンは脇に回って二枚目顔の三枚目に徹しているのもいい。

「ゴージャス」 Official Website


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