'98年3月


「やっぱりイタリア」
タカコ・H・メロジー 集英社文庫

 イタリア人と結婚した女性誌などのライターをしていた著者が書く、イタリアでの生活に関する様々な話題。特に食べ物の事が多いのが気に入って読み始める。読み始めると、食べ物の話が多いどころか90%は食べ物の話(^^;)。

 レシピも多いので便利。そのレシピも非常にシンプルな家庭料理なので役に立つ。イタリア流のダイエット・メニューというのも面白い。しかし、ダイエット・メニューなのに、アンティパストからプロモ・ピアット、セコンド、コントルノ、ドルチェとフルコースになっているのが凄い(^^;)。


「適正露出への挑戦」 現代カメラ新書No.95
カメラレビュー編集部 朝日ソノラマ

 写真における露出とは何かをまとめた本として面白い。ただし絶版。ゾーンシステムなどの話から、露出に関する様々な話題を折り込み、特に内蔵露出計の変遷が面白い。1938年の初めてのAEカメラ、コダックのスーパーコダック620から、中央重点測光、CLC測光、ストロボ光の制御、などなど。特にミノルタの自動露出に関する研究は面白い。


「くさってもライカ」間違いだらけのカメラ選び別巻1
田中長徳 IPC

 第一部、くさってもライカ。
 第二部、キヤノンユーザー向けの雑誌に連載されたもの。EOSに関するあれこれ。
 第三部はカメラととものい世界各地を旅した結果生まれた トラベリングカメラ。
 それぞれ、味があって、カメラ好きには共感出来る所も多いのだけど、何か物足りない。それが何かよく判らないけど、多分、データ的な情報が足りないからそう感じるのだと思う。


「タイムスリップ・コンビナート」
笙野頼子 文春文庫

 芥川賞受賞の表題作以外に、「下落合の向こう」、「シビレル夢の水」など。
 海芝浦、スーパー・ジェッター、マグロ、オキナワ、レプリカントなどなどはっきり言ってよく判らなかった…どーも、文章が性に合わなくて、集中して読めないので面白くなかった。


「鎮魂歌 不夜城II」
馳星周 角川書店

 「不夜城」の続編。主人公の郭秋生、警官の滝沢、楽家麗と、3人の絡んだ関係のスリリングな展開が、テンポよく面白い。「不夜城」ほどのパワーは感じないけど、話自体は緻密になっている。

 ストーリの背景には楊偉民と劉健一の確執がある所も、タイトルに「不夜城II」と付けるだけあって、非常に怨念を感じて、話が深みを増している。


「最新東洋事情」
深田祐介 文春文庫

 著者の本は読んで事ないと思うのだけど、文春文庫からだけでも18冊出ている。海外の話のものがほとんど。この「最新東洋事情」の前にも、「新東洋事情」「新・新東洋事情」というのがある。

 ニュースなどでは判らない、深い部分を書いているのが面白い。開放政策後の中国、揚子江流域への企業進出、日本企業憧れの地のヴェトナムと実像などなど。
 アジアを企業ビジネスの視点から観るのも新鮮で、ちょっと面白い。


「血の収穫」- Red Harvest -
ダシール・ハメット 創元推理文庫

 映画「用心棒」の元となったハメットのハード・ボイルド。遥か昔に読んで記憶はある。
 三船敏郎の死去を機に観返した「用心棒」の記憶が鮮明なうちに、ハメットの小説と比較しておこうと思って、こちらも読み返す。
 しかし、設定は同じだけど、雰囲気も事件もそれほど同じ感じはしないなあという印象。


「ヒュウガ・ウイルス」五分後の世界II
 村上龍 幻冬舎

 「トパーズ」以来、村上龍からは遠ざかっていたが、「ラブ&ポップ」を読んだきっかけから、少しづつ読んでいくつもり。とりあえず、面白いという噂を聞いている「ヒュウガ・ウェルス」。同じ世界を描いている「五分後の世界」は未読。

 なかなか面白かった。五分間時空のずれた世界、太平洋戦争で広島、長崎、小倉、新潟、舞鶴に原爆を受け日本全土は焦土と化し、米国、英国、中国、ソ連に分割統治される。わずかの将校団がアンダーグランドと呼ばれる人口26万人の戦闘的小国家を作る。このSF仕立ての設定はなかなか面白い。その書き込み方もいい。「向現」と呼ばれる向精神薬が出てくるのが相変わらず村上龍だけど(^^;)。

 ヒュウガ・ウィルスに襲われた「ビック・バン」への移動まではかなり面白かったのだけど、結末はなんども物足りない感じ。まあ、これが村上龍っぽいのかもしれないけど。


「Cの福音」
楡周平 宝島社

 出た当時、凄く話題になっていたけど…読んで見るとそれほどのものかなあと思う。ハードボイルド色としてはちょっと古臭い気がする。大薮春彦タイプの。まあ、「OUT」を読んだ直後だから余計にそう感じるのかもしれないけど。

 武器の書き込み方なども、ちょっとしつこい。マニアックにしても、トム・クランシーみたいなスマートさは無い。
 そもそも、朝倉恭介の危なげない強さでは、スリルを感じない。
 麻薬の密輸方法に関してはちょっとは面白かったけど。


「猛禽の宴」続・Cの福音
楡周平 宝島社

 「Cの福音」に比べて、話が広がっている分は面白くなっているけど、相変わらず、まったく危なげない恭介であって、ワクワクするところが少ない。
 サイコな死体処理屋など、ちょっと流行ネタを入れたかなと思ったけど、ほんと、設定だけだった。

 湾岸戦争での薬の副作用の話など、「60min」で見たネタだなあと思ったら、巻末の参考資料にちゃんと出ていた(^^)。


「クーデター」
楡周平 宝島社

 宗教団体によるクーデター計画。オウムを連想させる内容だけど、ストーリ展開や設定は「Cの福音」、「猛禽の宴」よりは面白かった。
 でも、竜頭蛇尾。最初の意味深な謎の部分が、展開とともにどんどん判っているくると面白さが半減していく。ラストはまったく面白くない。この程度の計画だったのかと、落胆。書き込み方は結構面白いんだけど。


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