曜日の由来 第二話 カルディア神話・ユダヤ教

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カルディア神話

●聖数七
 星空を眺めると、恒星とは違った動きをする星があります。太陽・月・そして惑星です。 特に惑星はワンダーラ(さまようもの)と呼ばれますように、 惑星を地球が追い越したり、追い抜かれたりしますので、星空を行ったり来たりします。

そして惑星は「ひときわ明るい星」なのですね。そこで水星・金星・火星・木星・土星は 特別な星とされたのです。天王星・海王星・冥王星は暗いので見つからなかったのです。 (注1)

1[太陽]・2[月]・3[水星]・4[金星]・5[火星]・6[木星]・7[土星]で全部で7つです。 これが後に「聖数七」とされ、様々な文化の元で使われる数字と成っていったようであります。

●カルディア神話
 シュメールやアッカドの文化を吸収した「カルディア文化」を擁したのは、 人類最初の都市国家バビロニア(BC625)でありました。(注2)

このカルディア神話では宇宙創造の後、万物の母ティアマート(くじら座の原形?)と、 木星に住むマルドックとの決戦で、マルドックが勝利し、ティアマートの死体で天地を作りました。 この神話に登場する惑星に住む神々は次の一覧表の通りになります。

太陽シャマシュ(バッバルとも言う)
月 シン   (ナンナルとも言う)
水星ネボ   運命と学問の神
金星イナンナ 愛と美と豊穣の女神
火星ネルガル 冥府の王・戦争と死の神
木星マルドック主神
土星エヌルタ 狩猟と農耕の神

 カルディア神話では、この惑星たちがあらゆる時間と空間を支配すると考えました。 そして毎日支配する惑星が変わり、一巡する周期が7日になったのです。 この考えはホロスコープ(星占い)の原形にもなりました。 現在でも占星術師をカルデアンと呼びますね

 恐らくは自然現象が先で、それを説明するために「神話」という格付けが後からおこなわれた 結果であろうと思われます。ちなみに曜日の始まりはshabthと言って今の土曜日になります。

新月・7日・14日・21日・28日は縁起が悪いという理由で「休み」になったようです(注A)。  この考えはユダヤ教にも「主よ、あなたは時を定めるために月を作り(詩篇104)」 として受け継がれたようであります。簡単にお話すれば暦文化を取り入れたようなのですね。 現在でもユダヤ教が太陰暦を使うのはこうした理由があります。


旧約聖書(ユダヤ教)

●バビロニアとヘブライ
 ヘブライ人の祖先はカルディア人であったようで、カルディア人の暦をそのまま使ったようです。  神学の本を見ますと「旧約聖書とカルディア神話」を比較した考察をよく見かけるのですが、 「両者は関係あるかも知れない」という立場をとっているようです。

 例えばアダムとイブのいた「エデンの園」は現在の「クエート」であるとか、 「バビロニア」を指すなどと言われております。 この時代に生まれた宗教は、似たお話が沢山ありまして、 お互いにある程度他の宗教を取り入れた形跡があります。

 もう1つの例では「ノアの洪水」に見られますように、洪水伝説は各地に見られます。 これを天文的には地中海に巨大隕石が落ち、大津波が発生したのではないかと言う説があります。

 有名な「バベルの塔」の話があります。人間は神に近づくため高い塔を作りましたが、 何と高慢な人間達だと神の怒りを買い、バベルの塔を破壊して、二度と人間同士が協力できないように バラバラの言語にしてしまったお話です。 このバベルの塔はバビロニアにあった「ジグラッド」ではないかと言われる説がありますが、 「ジグラッド」というのは、バビロニアでは現在で言う「祭壇+天文台」のようなものでした。

●創世紀
 旧約聖書の創世紀から引用します。

  • 第一日 神は「光あれ」と言われた。すると光があった。 
  • 第二日 水の間におおぞらがあって水と水を分けよ
  • 第三日 神は二つの業をなし給もうた。第一は水を集めてかきわける地を現わされたことである。
  • 第四日 太陽と月と星が創造された。
  • 第五日 魚と鳥を創造せられた。
  • 第六日 陸上の動物と人間の創造
  • 第七日 神は第七日目に彼の偉業を休まれ、その日を聖別せられた。(安息日の制定)

     このように世界は7日で作られ、最後の日は特別な日(安息日)として休日とされました。これが 現在の土曜日です。ユダヤ教では現在でも土曜日が休みです。この神話はバビロニアの創世神話 と比較されます。バビロニアの創世神話も7つの粘土版に書かれ7段階の構成に成っております。

  • ●実は・・・
     実はこのお話は「ローマ時代」になって関係してきます。 キリストが十字架に架けられた理由の1つに、この安息日(土曜日)を破ったことがありました。 このことからローマ時代に休日として「日曜日」が採用された経緯があります。 このお話は次の【3.古代ギリシア・ローマ】のページで。

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    ●(注1)最大光度
     条件の良いときに人間の肉眼で見える星は6等星です。ですから天王星の最大光度は5.3等で 殆ど目立たないため、惑星である事の発見は西暦1781年になりました。 海王星の最大光度は7.8等で肉眼では全く見えず発見は1846年。 冥王星の最大光度は13.6等で1930年に発見されました。
    ●(注2)楔形文字
     暦などを記したバビロニアで発掘される楔形文字はシュメール語で書かれているか、又は シュメール語のものをカルデア語に訳したものが出土されるので、 天体の運行の考えや神話は、シュメール文化をそのまま引き継いだと考える説に従っております。 簡単にお話しますと、シュメール語とカルデア語がゴチャゴチャでんねん。
    ●ペルセウス
     新年から7日間、新年祭が行われたようです。 司祭が太陽、月、惑星、星座、恒星に国の繁栄を祈ったようでありまする。 そう言えばペルセウス座はマルドックと呼ばれていたらしいですね。 大体星の話は「バビロニア起源」の話が多いですね。 ただそのバビロニアの中身を見ると難解極まりないですね(^^;

     独り言:ペルセウスが助けたのがアンドロメダ。アンドロメダはフェニキア語。 フェニキア人は海洋民族。海のルートで話が伝われば証拠は無しか・・・ ギリシアに最初に都市国家を築いたのはバビロニアと同じ「セム語族」か?う〜ん謎だ(^^;

    ●預言者
     キリストは予言者(未来を予測する者)と書かれている本を見かけますが、 正しくは預言者(言葉を授ける者)です。キリストはユダヤ教の最後の預言者となりました。

    ●参考文献
  • ●暦と占いの科学・永田久著・新潮選書
  • ●時と暦・青木信仰・東京大学出版会
  • ●現代こよみ読み解き事典・岡田芳朗。阿久根末忠編著・柏書房
  • ●時間と宇宙について。アイザック・アシモフ著。山高昭訳。早川書房(注A)
  • ○日本史小百科「暦」・広瀬秀雄著・東京堂出版
  • ○文明のあけぼの−新書西洋史1・富村傳著・講談社現代新書311
  • ○地中海世界−新書西洋史2・弓削達著・講談社現代新書312
  • ○旧約聖書略解・日本基督教団出版局
  • ○ギルガメシュ叙事詩・矢島文夫訳・ちくま学芸文庫
  • ○世界の宗教と経典・自由国民社
  • ○世界の神話伝説・自由国民社
  • ○古代文明の遺跡と謎・自由国民社

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