天武天皇と彗星
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日本書紀の記述
●天武12年(684年)秋7月に東方に長さ7〜8尺の星
 日本書紀に言う「この年の秋7月」と言いますと現行暦の8/19〜9/17の期間になります。 星の間隔や、彗星の尾の長さは、通常角度であらわしますので、 長さで書かれますと、想像するほかありませんね(^^;

819 では8月19日でシュミレートしてみましょう。

場所は地図帳がどこかに行ってしまったので 奈良市とします。実際は飛鳥ですが大差ありません。ハレー彗星の出は21時11分、南中は5時31分 、薄明開始は3時15分です。

 4時ごろから次第に明るみが増します。見やすくなるのは1時から4時ごろであったでしょう。 中心部分は4等前後ですので、彗星の核の部分がぼんやりと見え、10〜20度程度の尾が見える 感じであったでしょう。

 光害のない時代なので、これでももう結構大きな彗星ですね。

●8月の辛亥に四方に大祓
 彗星が現れたことにより8月の辛亥(10/16)に四方に大祓(おおはらえ)を行うよう 詔(みことのり)を出しました。 この時代彗星は「客星」の1つで、常ではないお客さんの星・突如現れた正体不明の星と 考えられておりまして、いわば現在又は将来の異常な出来事を、知らせるためのもので あると考えていたようです。

 天皇制とは天から地上の支配権を委ねられていると 考えますので、その天が現在の治世に警告を発したと考えたのでしょう。

 そこで祓(はらえ)の儀式が行われ、死罪など一部のものを除き大恩赦が行われ、かつ 飼っている獣を解き放つ放生が行われました。

 この時期は太陽と彗星が重なって見えます。つまり彗星は昼間出ていますので 見ることはできません。 1ヶ月前の9月の16日19時半頃でシュミレトしてみます。

40度以上の尾を引きムチャンコ巨大な彗星になっています。 ほぼ「へびつかい座」の大きさになっていますね。 明るさも0.5等とシリウス級の明るさになっています。

 尾もイオンテール(青い尾)とダストテール(白い尾)にしっかり分かれて見えます。

 こんで、みんな、おったまげちゃった、わけですね(^^; カワユイ(^^)

●9月に至って天の一方に達した。いつか
 日本書紀の天武12年9月と言いますと現行暦での687年10月17日からの1ヶ月になります。 この季節になると、尾の長さが天の一方に達したと書いてあります。

 ただし10月ですと金星軌道の内側の向かいますので尾は長くなりますが、 太陽に近くなってしまい昼間で見えないことと、夕方チョット見えても 彗星を斜め後方から見る形になりますので、 見た目は小さくなってしまいます。

 この記述は後世の間違えでしょう。恐らくは 彗星の軌道などわからない時代ですので、 段々と大きくなっていったと考えたのでしょうね。

 ただし天の一方に達した記述は、日時は違えど当たっていまして、上記の 図のように9月18日19時8分の西の空では、確かに尾は天まで達しています。


 んぎゃ〜、巨大、どでかい、(^^;


天武天皇
●壬申(じんしん)の乱
 大化の改新の中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)は、後に天智天皇となります。 その天智天皇がなくなるとき、天智天皇は遺言で大海人皇子(おおしまあまのみこ)に後を託しています。 しかし、天智天皇の孫である大友皇子(おおとものおうじ)と、 後に天武天皇となる天智天皇の弟である大海人皇子と後継者争いをします。これが壬申の乱です。

 その乱のときに筮竹(ゼイチク)で占いをしますが、今行われている竹ではなく、 周りに方位を書いた円盤の上に、回転するドーム状の北斗七星を描いたもので占いをする のだそうですが、はは(^^;詳細は良く調べられませんでした。

 なんでも「下克上」とでたそうです。日本書紀には「天下が2つに別れようとしていると出た。 しかし最後には私が天下を取るだろう」と書いてあります。誰かついてくるものはいないかと 言って誰も来なかったんだから、こうしたはったりも必要ですよね(^^;

●占星台
 日本書紀には天武天皇は武勇に優れ、天文・遁甲(とんこう:占い)の才能があったとあります。

 天武天皇は天武4年に日本で始めての占星台を作ります。天文台兼占いをする場所です。 現在ではその占星台は残っておりませんが、 新羅にその占星台が残っています。円錐の上に円筒が乗り、更にその上に四角い台がついています。 どのように使用されたのかは不明なのですが、そこでの観測結果(天の声)は支配者に 伝えられたようです。

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 それゆえに、巨大なハレー彗星の出現は天武天皇にとり、とりわけ衝撃的な事件であったことでしょう。


参考引用文献他

  1. 日本書紀・世界の名著1
  2. 中国科学・世界の名著12
  3. 日本史辞典・角川文庫
  4. Stella Navigator Ver.5(天体シュミレーション・ソフト)
  5. WHEN(暦ソフト)

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