学名 Gemini 略号 Gem 20時の南中月日 3月上旬 星座設定者 プトレマイオス
ふたご座はカストールとポルックスの双子で、兄カストールは乗馬の名手、 弟ポルックスは剣とボクシングの名手で不死身でした。ある戦いでカストールが死んでしまった後、 ポルックスは一人で生き残る事をよしとしないで、大神ゼウスに願い出て不死を解いてもらい、 兄弟共に星座に置いてもらったといいます。
海で暴風に遭ったとき現れるといわれる「セント・エルモの火」はカストールとポルックスの兄弟が 燃やすといわれており、この火が現れれば嵐が過ぎ去るといわれます。
ふたご座のカストールとポルックスは 「ゼウスとレーダーの子供」です。 このお話の詳細は 「はくちょう座」に譲る事に致しまして、 レーダーと白鳥に姿を変えた大神ゼウスと間の子供でしたので、 レーダーは2つの卵を生みました。 1つ目の卵からはカストールとクリュタイムネーストラの双子。 もう2つ目の卵からはヘレネーとポルックスの双子が生まれました。そして1つ目の卵から生まれたヘレネーとポルックスの双子はゼウスの子供でしたので不死でしたが、 2つ目の卵から生まれたカストールとクリュタイムネーストラの双子は、 実は父親が人間であったため不死ではなかったのです。
カストールとポルックスは幼い頃からとても仲が良かったそうであります。 兄弟は成長し、兄カストールは乗馬と戦争の術に、 弟ポルックスは拳闘の技に優れた才能を持っておりました。 特にポルックスは鍛冶の神ペパイストスに頼んで鉄の手首を付けてもらい、 1人で一軍に匹敵する強さを持っておりました。
この双子は有名な大遠征に多く参加しています。 まずはアルゴ遠征に向かいアミコスとの一騎うちの話がありますが、それは「アルゴ座」のお話に 譲る事と致します。またアルゴ遠征時のセント・エルモのお話は下記に譲る事と致します。そのほかカリュドンの猪狩りに参加し、ペリアスの競技会、ネメアの競技会に参加しました。
さてすっ飛ばしてばかりでは申し訳無いので(^^; 妹ヘレネーのお話を。
12歳か17歳のヘレネーがアルテミスの神殿で舞いを舞った後に、 アルゴ遠征で戦友だったテセウスがヘレネーを誘拐したのです。 テセウスはヘレネーをアッティカの城アピドナイの奥に隠し、母親のアイトラに世話をさせて、 今度は戦友ペリトオスの妻として迎えるため冥府の女王ペルセフォネを誘拐しに 冥界に向かいました。カストールとポルックスの双子はテセウスの留守を利用して、 スパルタ人とアルカディア人を率い、アッティカに攻め入りました。 ようやく双子はヘレネーがアピドナイ城に庇護されている事を知り、ヘレネーを助け出しました。 テセウスの母親アイトラーを捕虜にし、テセウスの子デーモポーンとアカマースを追放し、 かねてからアッティカの領土を狙っているメネステウスに アテーナーイの支配権を渡したのでした。
冥界に行ったテセウスは、冥府の王ハーデスに「いや〜来るの大変だったろ、 ま〜座れや」と、うっかり座ったのが「忘却の椅子」で、全てを忘れて、ボーット座ったままに なっちゃうんですね。バカ(^^; ま〜あとでヘラクレスが冥界に来た時に助けてもらうのですが(^^;
それとこのヘレネーが原因でトロヤ戦争が起こり、神々まで2つに分かれて戦う事に なってしまいます。またヘレネーはトロヤ側ですが、姉のクリュタイムネーストラは対するギリシア軍の 総帥アガメムノンの妻となります。この戦いでギリシアの神々は信仰を失い滅びてしまったと されております。
さて、カストールとポルックスの境遇に良く似た双子がおりました。 その名はイ−ダスとリンケウス。 イ−ダスは海神ポセイドンを父に持ちまして巨人のように大きく 何でもあっと言う間に食べてしまう大食漢で、リンケウスはアパレウスの子で、 遥か遠くを見ることが出来て、物を透視する事が出来ました。そのような間柄でしたので、スパルタのゼウスの子、カストールとポルックス。 メッセニアのポセイドンの子、イ−ダスとリンケウスは大変折り合いが良く暮らしておりました。
あるときこの二組の双子兄弟は揃ってアルカディアに牛を捕らえに出かけ、 沢山の獲物をとってきました。その牛の中の1頭を四つに分けて各々一人ずつ食べ、 最初に食べ終えたものが分捕ってきた牛の群れ半分を貰い、二番目に食べ終えたものが 残りの牛の群れ半分を貰うと決めました。
勢い良く食べ始めたカストールとポルックスではありましたが、 海神ポセイドンの子で大食漢のイ−ダスは見る間に牛1/4を平らげてしまい、 弟のリンケウスの分も手伝って食べてしまいました。イ−ダスとリンケウスは牛の群れ全部を 手に入れてしまい、カストールとポルックスの牛狩りはただの徒労に終わってしまいまったのです。
この事件より二組の双子は、仲が悪くなって行きました。
カストールとポルックスは白馬に乗り草原に出かけました。 そこには丁度レウキッポスの二人の娘美しい娘ポイペと ヒラエイアが花を摘んで、カストールとポルックスは不意にこの娘達を 白馬に乗せ連れ去り花嫁としました。しばらくして、カストールとポルックスは饗宴を開く事にしました。 その席にはトロイアのバリスとアエネアスも出席していたと言います。
トロイアのバリスはこの直ぐ後にカストールとポルックスの妹ヘレネーを妻としてトロイアへ 連れて行く事からトロイア戦争が起きます。
さて、この饗宴にはポセイドンの子、イ−ダスとリンケウスも来ておりました。 この時酒に酔ったイ−ダスとリンケウスは 「ポイペとヒラエイア」を嫁にしたのに、 父親のレウキッポスには何の礼もしないと侮辱し始めたのでした。
侮辱を受けたカストールとポルックスは先日牛狩りに行って何の獲物もなかったあの牛の群れを、 イ−ダスとリンケウスから奪い返し、継父レウキッポスに贈りました。
継父レウキッポスに贈り物をした後、 イ−ダスとリンケウスの 双子から隠れるため、洞穴のある樫の木に隠れました。 しかしリンケウスはタイゲトス山に登り、遠目と透視の能力で カストールとポルックスを探し出したのです。リンケウスは 腕の力の強いイ−ダスに樫の木を示しました。 イ−ダスは山から駆け下りる勢いで樫の木の幹に槍を 力いっぱい挿したため、カストルは樫の木ごと串刺しになり重傷を追いました。 ポルックスは怒りにかられ、その場から 踊り出て二人に突進したのです。
イ−ダスと リンケウスは必死に逃げました。 ポルックスは突進しながら槍を投げリンケウスを射殺しました。 続いてイ−ダスに向かいました。 イ−ダスは逃げる途中、 彼らのもう1人父のアパレウスの墓石の傍を通ったので、 父の墓石を引き抜きポルックスの頭に投げつけたため、さすがの 不死身のポルックスも気絶してしまいました。
この時、大神ゼウスはイ−ダスに向かい稲妻を 投げたので、イ−ダスは火を吹き、そして焼け死んでしまいました。
ポルックスが気がついたときには、すでにゼウスにより天界に連れてこられた後でした。 ポルックスは父ゼウスに向かい 「カストルは自分の分身のようなものです。カストルが 死ぬのでしたら私にも死をお与え下さい。自分だけ生きているわけにはまいりません。」 ポルックスは一人で完全な神になる事を選ばなかったのです。大神ゼウスは「わかったポルックス。ではこうしよう。 お前が弟カストルを助けようとして、カストルと同じ運命でありたいと思うなら、 二人で生涯の半分を地下で暮らし、半分を天界で暮らすが良い。」
こうしてカストールとポルックスの双子は長い年月、半分は冥界の入り口のテラプナイの窪地で暮らし、半分をオリュムポスの山で暮らすうちに、いつしか星座になったということであります。
さて、このお話はアルゴ船での冒険の時のお話です。今ではおひつじ座になっている、黄金の羊をとりに行くためギリシア中の英雄が集められた、 アルゴ船が大嵐に出会った時の出来事です。
当時最高の船大工アルゴスが作った舟ですから、嵐ぐらいでは沈みませんが、 なんともひどいゆれでありましたので、誰かこの嵐を何とかしてくれないかと言う話になりました。
そこでオルフェウスがこと座になっている竪琴を弾いたところ、段々とその大嵐はおさまって いきました。
その時、丁度カストルとポルックスの頭上に2つの炎が舞い降り、この双子頭上を飛びました。 この炎の事を「セント・エルモの火」と呼び、 この炎が現れると、次第に風がおさまり、波が静かになり、嵐がおさまっていくとされておりまして、 古代・中世ではカストルとポルックスは船首の飾りになっておりました。
どのようにセント・エルモの火を待ったかと言いますと、 海が荒れ狂う夜に、水夫は後部甲板に行き、雄山羊の犠牲を捧げると、 船首に双子が黄金の羽で羽ばたきながら現れる。と言った感じだったようです。 またセント・エルモの火が現れるとカストル・ポリデウケス(ポルックスの事)と 名前を呼んだそうであります。
もとを正せば、カストルとポルックスはポセイドンから海の風と波の支配権を貰ってい た事から始まった話であるようです。
不思議なのは何故「セント」と言うかです(^^;キリスト教かなと思いまして、 聖書をパラリコセと開いて見まして・・・・カストルとポルックスが出てくる箇所が一箇所ありました。パウロがローマへ護送されるときの聖書の記述で、 「デオスクリの船飾りのあるアレキサンドリアの舟で出帆した・・」 とあります。デオスクリは古代ギリシア語でディオスクロイ。「ゼウスの子ら」という意味で、 つまりはカストルとポルックスの双子を指します。
でも残念。確かにカストルとポルックスは船飾りとして使われている事はわかりましたが、 どうしてセント・エルモっていうんだ(^^;
「セント・エルモ」つまりは「聖エルモ」。
「聖エルモ」は聖書以後のキリスト教の聖人伝説に由来するようです。 「3世紀の聖人。船乗りを守護し、エンブレムは錨の 巻き上げ機」とあります。
〜新紀元社Truth In Fantasyシリーズ「守護聖人」より〜
本当だとすれば、キリスト教お得意の混同政策の1つかもしれませんね。
セント・エルモは起源300年頃のローマキリスト教の司教の事でした。 別名をエラスムスと言いまして、セント・エルモの祝日は6月2日になっています。えっとセント・エルモの効能は、航海士と、内臓の病気を持った人に効くそうです(^^;
セント・エルモはキリスト教徒への迫害を逃れレバノンまで来ましたが、 ついにこの地で捉えられ、殉教したことになっています。
彼の説法は雷鳴をものともせず、説教を続けた姿で伝えられており、 これが嵐の際メイン・マストにたまに起きる放電現象と結び付けられ、 航海者の保護者とされるようになったようです。
ふたご座のディオスクーロイと航海との関係は前400年頃の詩(下記参照)に 既にあるのを見つけましたので、ディオスクーロイの話がなければ、 この放電現象とエルモは結びつかなかったことになりますね。
又一説では、彼が処刑された方法が、 巻上げ機によって内臓を引きちぎられながら 絶命した事になっておりして、 その巻上げ機と帆の縄張りの道具とが良く似ていたので、 船乗り達が自分たちを 保護してくれる聖者として祈りを捧げるようになったと言う事です。 そのため出産中の女性や盲腸・内臓の病気を持った人からも 祈りを捧げられるようになったそうです。 (参考:聖者の事典:柏書房ほか 天使の事典の姉妹本になります。)
カストルとポルックスは誕生はこの他にもお話があります。
セウスとレダが一時を過ごした後、レダは夫ティンダレイオスとも夜を過ごしたため、 ゼウスの子は不死身となり、夫ティンダレイオスの子は不死とはならなかったと言うのであります。またゼウスが夜の女神の娘・怒りと復習の女神ネメシスを手に入れようと、 追い掛け回し、最後に女神ネメシスは「がちょう」に変身しましたが、ついにはつかまり、 その時の卵が1つ青いヒアシンスの下に落ちていたのをレダが見つけ、育てたと言うお話もあります。
二組の双子の戦いお話は別にありまして、イ−ダスとリンケウスの双子のうち、 力の強いリンケウスが弓を引き、遠目のできるイ−ダスが指示をして遥か彼方のカストールを 射止めた話があります。
これらの神話の後に双子のディオスクローイ(カストールとポルックスの兄弟)は、 激しい戦いの場にどちらか1人が、時々姿を現していたようであります。古代ローマ民話(第二篇「レーギルス湖の戦い」)第32節、第40節
二人はまさに瓜二つの兄弟 ギリシア神話と英雄伝説 上 Tブルフィンチ 講談社学術文庫 より引用
見分けるものは誰もいないだろう二人の甲冑は雪の如く白く輝き
その馬も雪の如く白かった。〜中略〜
あの勇猛果敢な双子の兄弟が
わが右手に軍馬を率いるのを見てとった。無事に船は港に帰還するよ
大波乗り越え 疾風(はやて)をついてあの勇猛果敢な双子の兄弟が
元気な帆船をあやつれば。
ロクリス人とクロトーン人との戦いの時。ロクリス人はスパルタに助けを求めました。 スパルタは「それではディオスクローイを貸そう」と返事をしました。そしてサグラの戦闘の時 に二人の神将が現れてロクリス人に味方したので、ロクリス人は勝つ事が出来たと言います。
この話しがローマに伝わり、ローマ人がラティーニー族とのレーギルス湖での戦いの時、 やはり二人の神将が現れてローマ軍の先頭に立って戦ったと言う話になったようであります。
マケドニアでも同様な話しがあるようです。
歴史(ヘロドトス)でもディオスクローイの名は三箇所出てきます。
参考引用文献
A1★星のギリシア神話・白水社
A2★星座神話クラブ・脇屋奈々代著・誠文堂新光社
A3★ギリシア・ローマ神話辞典・高津春繁著・角川書店
A4★『星座の神話』・原恵著・恒星社
A5☆ギリシア神話と英雄伝説 上 Tブルフィンチ 講談社学術文庫B1☆星座手帳・草下英明著・教養文庫・658・c028
B2☆星座の話・野尻抱影著・ちくま文庫・490・476
B3★21世紀星座早見ガイド・林完次著・講談社・B1069C1ギリシャ神話・アポロードロス著・岩波文庫(紀元1−2世紀)
C2変身物語・オウィディウス著・岩波文庫(紀元前1世紀)
C3★ギリシャ神話英雄伝説・C.キングズレイ著・中央公庫(1856年)
C4★ギリシャ・ローマ神話・T.ブルフィンチ著・ちくま文庫(1855年)
C5★ギリシャ神話・呉茂一著・新潮文庫(昭和44年)D1星座ガイドブック秋冬編・藤井旭著・誠文堂新光社
D2ギリシャ神話小辞典・B.エヴスリン著・教養文庫