私の愛機
 (2006年機材整理の為、放出)
Shin Anamitsu




Nikon F4S は1988年に発売された、ニコンの4代目のフラッグシップ機です。
また、ニコン初の本格AFカメラでもあります。

含銅シルミン系アルミダイキャストボデイーを基本に、外装は、工業用プラスチックであります。
デザインは、ジュージアローが担当し、アナログ感覚のダイヤルレバー方式を採用し、
高度なメカニズムを有しながら、操作感は従来から使い慣れたカメラ感覚を残した物になっています。
また、プロ機としては始めて巻き上げレバーを廃止し、高速巻き上げモーターを標準装備しています。
それに伴い、大型のバッテリフォルダを装備し、電気食いフラッグシップ機の登場でもありました。

開発コンセプトは、
@AFを始めとした自動化を徹底追及する。
A専用アクセサリーのみに限らず、ニコンの一眼レフ用レンズ、アクセサリー全体に対する互換性の追及。
B基本機能(画質・作動音・耐候性)の向上。  
となっています。

私にとって、Nikon F4S というカメラは、ボディーを手にすると、少しだけ緊張感を感じるカメラです。
大きくて、重く、グリップも太く、材質がプラスチックということも関係するのでしょうか?
傷を付けてたくないので、取扱いも慎重になってしまうのも事実ですが、
その他、色々な要素が関係し、少しだけ緊張するのです。
しかし、この緊張感が、私は、心地良いのです。

シャッター音が素敵なのでしょうか?
Nikon F4S の機械的なシャッター音は、何ともいえない魅力を感じます。
いかにも『撮影しています!』てな感じがします。
また、これは Nikon F5 も同様ですが、シャッターを切った時の衝撃が、ほとんどないのが素晴らしいです。
この感触だけでも、両者は絶品です。

スタイルも素敵だからでしょうか?
シャッタースピード調整ダイアルと、フィルム巻上げノブが残されたスタイリングは、
MF機を使っていた頃と、操作感が変わらず、カメラらしい姿なので、好感を持っていますし、
現実問題、シャッタースピード調整ダイヤルを持った、最後のフラッグシップ機です。
また、フィルム巻き戻しノブは、従来機器同様に搭載されていますので、
シャッターを切り、フィルムが巻き上がる瞬間に、フィルム巻き戻しノブは回転します。
MFカメラ時代は、フィルムを巻き上げる時に、フィルム巻き戻しノブが確実に回っている事を、目で確認していましたが、
Nikon F4S 以降の自動巻上げ機は、シャッターを切った瞬間に、フィルムが巻き上がるので、
自分の目では確認出来ません。
私は、縦位置撮影の時に、左手の親指の一部を、フィルム巻き戻しノブに軽くタッチさせ、
シャッターを切った瞬間に、フィルム巻き戻しノブが回っている事を確認しています。
フィルム装着時に、確実にフィルムが巻き取られている事は確認しているのに、何度も確認してしまう・・・・
これは、昔ながらの癖なのです。

また、Nikon F4S のファインダーは最高です。
明るく、透明感があり、MF時のピント合わせも非常にやり易く、覗いていて、本当に気持ち良いのです。
何故?Nikon F5 のファインダーより素晴らしいのか?
少々疑問に思ったりもします。
とは言え、Nikon F5 のファインダーも最高レベルだということには違いありません。
最高レベルで両者を比較すると、少しだけ Nikon F4S に軍配が上がるのです。

私は、この Nikon F4S が、MF最高のカメラだと思っています。
Nikon F5 から比較すると、のんびりと感じるAF速度は、『AFレンズも使えますよ。』といった解釈です。
だからと言って、Nikon F5 を手に入れる前は、AF速度について不満を覚えたことはありませんでしたし、
動くものを追わない限り、AF速度は十分満足できる性能を備えています。
これは、Nikon F4S のAF精度が、その他一般のカメラと比較しても、非常に高いからだと思っています。

Nikon F4S は、もともと独自の機構が満載で、AF速度の性能より、その他の部分の魅力が打ち勝っているのです。
2枚のフレキシブルプリント基板と、1枚のソリッド基板を中心とした、大規模なエレキトロニクスパーツ。
同時期発売の Nikon F801S と基本性能は同じであるが、まるっきり中身の違う、シャッターユニットの搭載。
それぞれ役割を分けて与えられた、4個の内蔵モーター。
シャッター幕のバウンドによるブレを抑えるためのシャッターバランサーの搭載。
スポット・中央重点・マルチパターンといった、多彩な測光。
縦位置、横位置で、マルチパターン測光のアルゴリズムをダイナミックに変更する縦位置センサー。
各部の防滴性を、徹底配慮した設計。
Sタイプのレンズなら、 AFであろうがMFであろうが、マルチパターン測光が出来るのも、F4だけです。
このマルチパターン測光ですが、Nikon F5 の 3D-RGB マルチパターンと比較しても遜色なく、
現在でも的中率は高く、問題なく使える、非常に完成度の高いものです。

それと、F4の特徴である、 すべての設定を、別々のスイッチにより個別に設定するシステムが、
現代のボタンを押しながらダイヤルを回して、液晶出確認するというシステムとの違いで、
一見、使い勝手が悪い様な印象はありますが、操作してみると、すこぶる判り易いし、
撮影の合間に、設定の確認が、容易なのです。
基本操作は、昔ながらのダイヤル式カメラと同じなので、操作が体に染み付いている、と言うのもありますが、
昔ながらの操作を行える、最後のフラッグシップ機なのです。

私にとって、Nikon F4S は、Nikon F5 と同様に、永久保存として使い続けたいカメラです。
Nikon F5 と比較しても、大きくて重たいカメラですが、
私に、ニコンのフラッグシップ機の凄さを体感させてくれた、貴重なカメラです。

私は、Nikon F4S を手に入れる前は、Nikon F801S を主に使っていました。
Nikon F801S は、結婚する前に、『新婚旅行に持ち込むカメラは、AF機にしよう!』という事で、購入した、私にとって初めてのAFカメラです。
当時を振り返ると、ボディーデザインは、圧倒的に Nikon F4S の方が好みでしたが、
カタログ上の性能データは、Nikon F801S と、Nikon F4S は、ほとんど一緒です。
しかし、ボディー価格差は、途方もない金額でした。
当時の私にとって、Nikon F4S は雲上の存在で、また、2台の価格差の意味も理解できませんでした。

しかし、Nikon F4S を実際に手に入れてみると、まったく別次元のカメラという事が、シャッターを切った瞬間に判りました。
私にとって、初めてのフラッグシップ機でしたが、
カタログデータでは表現できない凄さを、体感させられた、貴重な出会いでした。

しかし、冷静に考えると、やはり重くて大きいカメラです。
自分で撮影している時は感じませんが、
他人が手に持っているのを見ると、大きく、時代遅れな、感じがする事は確かです。
この辺は、コンパクトな Nikon F3 とは違った、不幸な存在であるような気がします。

Nikon F4S の特徴は、大型バッテリーホルダーを取外して、コンパクトな Nikon F4 として使えることです。
しかし私は、Nikon F4 として使う事は、ほとんどありません。
理由は、バッテリーホルダーを外して、Nikon F4 として使った場合、シャッター音が変化するからです。
厳密に言えば、シャッター音ではなく、シャッターを切った瞬間に、フィルムが巻き上げられる時の音が違うのです。
バッテリーホルダーの違いで、シャッターの巻き上げ速度が少しだけ変わります。
その微妙な速度の違いが、シャッターを切った時の気持ち良さに、影響するのです。
実際問題、部屋で磨いている時には、『大きくて重いなぁ!』と感じますが、
撮影時には、重いとは感じた事はありません。

たまに、現在、弟の所有物である、Nikon F801S を使ってみると、
コンパクトで軽く、携帯性も良く感じますが、
ファインダーを覗いて、シャッターを切った瞬間の気持ち良さは、比較にならない差を感じ、しっくりとしません。
これは、現在ニコンの中型機器である、Nikon F100 も同様なのです。
Nikon F100 は、『Nikon F5 の良い所を取ったコンパクトなカメラだ!』と、表現されますが、まったく別次元のカメラです。
それは、シャッターを切っただけで、感じると思います。
Nikon F4S と Nikon F801S の関係とよく似ています。
Nikon F4S と Nikon F100 という時代の差がある対決でさえ、基本性能は、Nikon F4S に軍配が上がります。
ニコンのフラッグシップ機とは、そういった存在なのです。

さて、長々と書いてしまいましたが、
Nikon F4S は、撮っていて気持ち良いカメラです。
Nikon F5 の気持ち良さとは、別の快楽があるのです。