「心理学と言語学への接近」


 1章で我々が述べたように、我々の音楽理論の適切さの基準の一つは普遍的な心理学的課題に光を注ぐことができたことである。

 ナイサーは生成言語学と1920-1940年のゲシュタルト心理学の精神的類時性を指摘した。我々の理論も言語学と同様に普遍的なゴールを目指している。(Neisser.1967.Cognitive Psychology.pp.245-248)
例えば、ほとんど無意識な人間の知識の領域にある説明を加える、ある階級の直感の性格の解説を行う、この直感を先天的なものと後天的なものに区分することなど。

 しかし、我々の音楽理論はナイサーによる認知理論とは異なっている。この章の一つの要点は、単なる普遍的言語学とゲシュタルト心理学との間の精神的な結合以上のものを作るために、音楽理論を使うということである。1章では3章で示した、音楽的グルーピングのルールと視覚形式知覚における関連づけられるプロセスの類似性を検討する。これは、現代心理学の観点や現在の音楽理論においてゲシュタルト理論がもついくつかの欠点がどのように克服される可能性があるかという話題に導く。最後に、我々の音楽理論に類似した視覚における最近の普遍形式(general form)をサーベイする。

  1章ですこし述べたように、言語理論と音楽理論の大きな差異は、音楽理論におけるプリファレンスルールの存在である。そして、その1つのルールの典型は生成変形文法(generative-transformational grammar)とは相い入れないのである。
 2章では言語理論における現在のいくつかの課題を提示する。そこではプリファレンスルールによる形式主義(形態心理学)は洞察的解説を示しているように見える。そこでは言語学と音楽理論はこの点においては違った風に想像されたより、異なっていないということを提示している。
 3章では、音楽構造と言語構造との強い類似性について述べる。音声学(音韻論)における最近の研究は、タイムスパン還元に似ている階層的構造の点から言語の音響構造の分析を目的としている。我々は、この音声学的構造とタイムスパン還元は形式的に非常に関連があることを示すであろ。そして、それは類似した規則システムの結果であるが、ルールを操る(扱う、処理する)統一体は全く異なっている。


12.1ゲシュタルト理論と視覚形態(様式、形状)の知覚


3.2および3.4で指摘した視覚的と聴覚的なグルーピング両者の間の類似性を思い出せ。
そのような類似性の存在はWertheimerによって観察された。;kohlerは二つの領域の(変数;domain)における類似した心理学的組織の結果であると推測する。Lashleyはまた、本質的に類似した心理的な表現は空間的に、かつ時間的に連続した記憶に奉仕すると主張する。しかし、たくさんの高度に暗示的な証拠にもかかわらず、時間的組織の構造について言うときこれらの心理学者の誰もが非常に体型的というわけではない。時間的組織のひとつのタイプとしての形式理論を発達させたが、我々は類似性についてさらに詳しく調べるべき時にいるのである。
1923年に、Wertheimerの示した例は、3.2における視覚と音楽のグルーピングの図表と正確に類似している。そして、3つの一般的な特性がこのような判断に関係していることを暗示している。(例:3.6-3.11):より近い近接とより強い類似性はグルーピングの判断を強め、原則がコンフリクトした場合は判断が不明確になり、ある状況では1つの原則がほかのものを無効にする。これらは我々が用いた優先ルール形式主義のはっきりとした特性である。他の原則のかなりの数のある類似した観察が、形と地の対比、3D、Koffkaの討論に見られる。WertheimerとKoffkaは、対称性や規則的なカーブに添う線の連属性、スペースを囲むパターンの能力、そして見る人の直感のなどの、機能の影響を証明した。3.2に我々が適用したものは、一般的に非公式に彼等が主張したルールであるが、3.3のようなより公式なルールは見られない。


WertheimerとKoffkaはゲシュタルト心理学の基本的な主張を論証した。

 知覚はほかの心理的活動と同様に、組織化の動的過程であり、知覚領域の全ての要素は他の独自な部分の組織化に巻き込まれてしまう。この主張の2つの実際の様相を指摘し、証明することは苦しいことである。最初に、知覚は環境でおいて存在する単なる生産物でだけではない。普通無意識に見る人はある活動を行う。かれが感じたことの決定を区分(分配)すること。2つめに、知覚したものである「領域の総合性」は、各々その部分の個別の認識の蓄積として少しずつ増加るももではない。(全体は部分の総和以上のものである。=ゲシュタルト理論概念。補足:竹内)


 知覚のゲシュタルト的説明の基礎を形成する「一般的根本原則」はウエルトハイマーによって形式化された「プレグナンツの法則」である。コフカはそれについて以下のように短い解説をしている(1935.p.110)


 心理学的機能は常に、一般的に認められる状況として、「良い」とされるものであろう。 この記述において「良い」という概念規定はない。それは規則性、対称性、単純性などの特 質をもつものである。

言い替えれば、コフカが示した視覚知覚の様々な原則は、「良い」組織化の観念の解説であるといえる。

 to be continued