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僕は今残業している。でも、それほど忙しいわけではないんだな。
だったら何故?
つまり今日はクリスマスイブだからさ。
こんな日、彼女もいない、また、ぎらぎらした顔してクリスマスパー
ティなんか行く気もしない、そんな僕には、会社で暇を潰すのが一番
似合っている。
それに少しストイックな気分にも浸れるしね。
みんなは徐々にいなくなり、僕はフロアーに一人だ。
「さて、そろそろ帰ろうかな」
パソコンの電源を切ろうとした時。
画面に「メッセージが届きました」
との表示が現れた。
この日この時間に仕事している奴がまだいるのか?
日本企業は凄いと思いつつ、僕はメールを開いて見た。
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Marry Christmas !
ジョージアで一休み。
帰り際に貴方の姿を見たので、このメール送りました。
コーヒーを後ろの打ち合わせ机の上に置いておきます。
貴方と同じ気持ちの女の子より
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たった一言のメールで、いい気分になれる。まだまだ素敵な人が沢山
いることを知らせてくれたサンタクロースに感謝だ!
今日は、いつもと違うはずだ。私はそう思いたい。でも彼はいつもと
同じだった。
昨日の電話からそうだった。
「赤坂のイタリア料理の店を予約した。虎ノ門のいつものところで
待ってる」
「時間は?」
「9時。少し遅いけどね、残業でもしてればいいよ」
電話は一方的な話で終わった。
私は一体何なのかしら? 彼の飾り?
自分をクリスマスツリーの飾りの一つみたいに感じた。
会社でも、女子は組織の潤滑油みたいなもの、古くなればオイルは新
しいものに変えられるだけの運命。彼もそんなふうにしか女を見られ
ないタイプ。でも、そうでない優しい男達は自己愛が強すぎる。
いつも自分の優しさに酔っている男達だ。
そんなことを取り留めもなく考えながら、私は時間つぶしに会社のパ
ソコンで友達宛にメールを書いていた。
画面には、今打ち込んだ文字が表示されている。
・・・・・どうしてこんなに、寂しいんだろう・・・・・
・・・・・どうして満たされないのだろう・・・・・・・
・・・・・本当に私は人を愛せるのだろうか・・・・・・
・・・・・私を本当に愛してくれている人が・・・・・・
・・・・・本当にどこかにいるのだろうか?・・・・・・
『時間だ。そろそろ行かないと』
はっと我に返り周りを見回す。
『もう、誰もいないやぁ。あれ あいつ』
私は柱一本向こうの隣の課にいる同期の裕司がまだ机にへばりついて
るのに気づいた。
『こんな日に残業やってるなんて。相変わらず要領悪いなぁ』
『でも・・あいつらしい』
私はまたパソコンに向かった。
手元には、買ったまま飲まずいたジョージアコーヒーがある。
私はメールを発信して直ぐに立ち去った。
『へへ、あいつ驚くだろうなぁ』
会社から一歩外へ出ると木枯らしが舞っていた。
コートの襟をただし、私は駅へ歩きながら携帯電話を取り出した。
『メモリーコールで・・』
「もしもし、私、うん今日駄目。急な仕事で行けないよ・・ごめん」
私にも今日は特別な日となったようだ。