私の自然観について(2)
私の住んでいる団地の棟から5m道路を隔て小さな雑木林の山がある。山があれば水もある。 山の麓では山が保水する水がしみ出て湿地帯になっている。せいぜい1000平米程度の広さだが、このような場所は、一般に八戸と言われており身近な動植物の宝庫なのだ。
トンボをはじめ、ザリガニ、ウシガエル、トウキョウダルマガエル、ホトケドジョウ、エビもいる。また小さな羽虫を求めて、ツバメも沢山飛来する。一方山には野鳥が沢山いる。ヒヨドリ、コジュッケ、メジロ、シジュウカラ、ムクドリ、コゲラ、ウグイス、ホオジロ、カラスも多い。セミだって夏なればうるさいくらい鳴く。特に夕暮れ時に鳴くヒグラシは、仕事帰りに、どこからともなく夕食の匂いがする街並みを歩きながら聞くと、早く家に帰ってビールを飲みたくなる。こんな時しみじみ日本の夏は「いいなぁ〜」と思うのである。
秋には紅葉も楽しめる。トトロの好きなドングリが一杯とれる。ドングリ銀行があれば金持ちだ。
冬は全ての葉が落ちて雑木林は明るい日差しに包まれる。そんな時山道をランニングでもすれば、暖かい日差しの中で気持ちは爽やかになる。考えるといいことばかりだなぁ。でもそんな幸福は長くは続かない。それが今のJAPANの凄いところなのだ。
私がここへ引越しって来たのは、今から10年前1989年の夏だった。裏山は今より鬱蒼としていた。私はこの山を見てすぐにMTB(マウンテンバイク)を買った。山の中は未舗装の山道が何本か走っており、私はそれを利用して自分専用のコースを作り、MTBを楽しんでいたのだった。
ただ、時折山の中に不法投棄されているゴミを目にすると、全くしょうがないと思うのだった。でも、こんな住宅街には十分すぎるほど嬉しい場所だった。
だがそれから4年後、驚くことにブルドーザーが至る所で山を切り崩し始めた。また一部の林道は完全舗装されてしまった。特に幹線道路に面する林は根こそぎ綺麗に伐採されてしまったのだ。また宅地かよ・・、でもここは緑地保護区域のはずだ。おかしい?
それでも土建国家日本では土建工事は出来るのだ。つまりこの自然環境を利用して富士サファリパークのような動物園を作る計画が横浜市にはあったのだった。自然環境を利用するから問題はないのだ。幹線道路側の綺麗に禿げ山にされ整地された場所は広大な駐車場になるそうだ。
いまさら動物園?誰が望むんだ?何故税金を相変わらずにどぶに捨てるような計画を実行するんだろう?ただ、バブルの崩壊でこの計画は3年近く凍結されていた。そして、皆が忘れた昨年あたりから、ゴジラのように蘇って来たのだ。このままで行けばいつかは動物の糞で水が汚れ、木の伐採で山の保水力もなくなり水も濁り。車で大挙して暇人、よく言えば善良な人々がやって来て山はボロボロになるのだろう。
ザリガニも住めないような場所となるのだろうか・・・。選挙だけど長良川の一件で野党も信じられないし、誰を選べばいいんだ?
そんなムシャクシャした思いで、また暑い夏を迎えるのだった。
子供って、遊ぶとき全力で大声をあげて遊ぶ。だから子供のいる遊び場はキンキンと響く大声で満ちている。自分もそうだったのかな?それにしてもうるさい。
今日は天気がいいので裏山のザリガニつり場も混んでいった。思ったより家族連れが多い。最近この場所も有名になったもんだ。
ここは湿地帯、つまり沼地だ。となると何人かの子供は絶対に沼にはまる。そして泥だらけになる。その時は子供は本当に楽しそうだ。
一方親も泥だらけの子供に結局泥をつけられてしまう。そして初めは怒鳴っているのだが、終いにはそんな泥などなんのそのと、子供の道具を取り上げてザリガニ釣り夢中になっている。そりゃそうだ。泥とか水とかは一度付いたり濡れたりすれば、もうそのことを心配することもないので、大いに楽しめるのだ。アウトドアでは汚れればそれだけ楽しめるのだ。でも時折、子供が泥をつけたりすると、もの凄く怒る親がいる。だったら来なければいいのに。
「雑誌で、親子で遊ぶアウトドアは子供の教育にいい」となれば、教育のためにと無理してアウトドアに出かける。音楽は幼少から始めるのがいいと聞けば、ピアノを習わす。子供が、ましてや自分が好きでもないものを子供のためにと無理にやらせる。こんなのは最悪の親子関係だと思う。
よく見ると親がものぐさなのか、子供達だけのグループもいる。こちらはやり放題だ。こいつらの方が楽しいだろうなぁ、でもきっとグループで一番のちびが沼にはまって、後で兄貴達が親に怒られるんだろう。そんな情景が目に浮かぶ。これがきっと正しい遊び方だ。
何故なら子供に責任と判断力がいるからだ。
さて、今日は私と息子の佑太(5才)と杏奈(2才)連れだ。
そして今日の目的は、なんとホトケドジョウとカエルを捕まえることだ。まさかここで、そんなマニアックなものを捕まえようとする奴らはいまい。皆ザリガニ釣りしかしてない。だから混んでいてもあまり関係ないのだ。地べたにザリガニ釣り用のスルメがいたるところで、水にふやけて転がっている。「くさいなぁ」今も昔もザリガニの餌はスルメがオススルメ(オヤジギャグです)だ。
佑太と私とで何度か細い水路に網を入れる。30分ほどで10匹捕まえた。
ホトケドジョウは他のドジョウ類と比べ浮き袋が発達しており、水中をうまく泳ぐ。だから一見すると鯉かなんかの稚魚のようだ。全体にずんぐりしていてヒゲも可愛く最近の私のお気に入りだ。成魚でも5cm以下なので、普通のドジョウより小さい。今年は何匹か飼育するつもりだ。
「よーし、佑太。行くぞ!」次はカエルだ。子供達はシーズン当初に、妻と何度もここに来て、かなりの数のザリガニを捕まえており、現在5匹を飼育中だ。だからザリガニには未練はないのだ。
「カエル、カエル」ここでは、ウシガエルとトウキョウダルマガエルと、もし生きていれば、この前リリースした本栖湖産のアカガエルもいるはずだ。それとアマガエルいる。
カエルは一般に夜行性だから昼間に捕まえるのは難しい。でも丹念に葦の生える水際を調べる。
「いたーっ」私は、すぐに網を使い捕らえた。まさにタイミングの勝利だ。職人の技とでも言いましょうか・・・。私たちは小さいながらトウキョウダルマカエルをついに手にしたのだった。
私は久しぶりにカエルのヌベヌベ(しっとりと張り付くような)の感触を楽しんだ。杏奈はまだものを握る力の加減が上手く出来ないので、カエルは杏奈に握られると潰れて非常に苦しそうだ。
家に帰るとホトケドジョウは、ザリガニ3匹が入っている水槽に入れた。カエルは、バケツに入れておいた。これで当分会社から帰ってくる楽しみが増えるのだ。
翌日
会社から帰ると、私は朝忙しくて見られなかったホトケドジョウを見ようと水槽をのぞき込んだ。
「あれ、いないぞ」私は妻に聞いた。
「ねぇーっ、ドジョウ移したの?」
「なに?知らないよ」
どこかに隠れているのか、私は丹念に水槽を覗いた。一匹いた!
知らない間に横に佑太がいた。
「なあ、ホトケドジョウいないぞ、おまえ知ってるか?」
「うん、ザリガニが食べたよ」とのご回答。
そうか、野生産のザリガニを甘く見ていた。
「佑太、カエルはどうした?」
「え?死んだよ」
「おまえ、いじり殺したんだろう」
また知らぬ間に憤慨する私の横に来た妻が言った。
「おぼれたの」
「おぼれた?」
「水が多すぎて溺れたの、カエルも溺れるのよ」
そうだ、カエルにはえらはないのだった。
えらいすいません。駄洒落日より。

| 作者紹介:Masahiro Ikezaki 団地住まいなので、犬や猫などが飼えないのが寂しい。 密かに団地脱出を計画中である。子供2人のオヤジなのさぁ。 |