金造「先生、大変だ。」

先生「また、金造さんの大変ですか。今度はどうしました。」

金造「うちの椀頭様が食べ過ぎらしいんだ。」

先生「はて、どういうことですかな。」

金造「絵を取り込もうとしたら、いっぱいだから、減らしてくれって。」

先生「そりゃ、ハードディスクがファイルでいっぱいってことだな。すこし捨てて整理したらどうかね。」

金造「やだよ。せっかく集めたのに捨てられるかい。隠居に圧縮をしたらどうだって言われたんだが、銭がかかるってんでことわってきた。」

先生「もともとインターネットの絵は圧縮されてるからね。あまり効果がない。この際、OSR2にしてFAT16からFAT32に代えちゃどうだい。」

金造「え!?16より32の方が減るの。逆じゃねえのかい。」

先生「どうして。」

金造「16の方が小さいだろ。だからローファット。」

先生「そりゃ、低脂肪のことだ。FATてのは形式のことだ。金造さんだとデータを飛ばしかねないな。いっそ外部記憶装置を付けたら。」

金造「何です。その、大不器用装置ってのは。」

先生「記憶装置だ。速さの点ではMOがお勧めだが、安さからすりゃPDもいい。またMDやZipてのもあるな。」

金造「でも、おぜぜが、かかるんでしょ。」

先生「バックアップにも使えば、こないだみたいにデータが消えたってさわがなくてすむ。」

金造「物が安いのはどれだい。」

先生「PDかな。今、使ってないのが一台あるから試しに貸してあげよう。パラレルポート用だから余分な設備はいらないし。」

金造さん、さっそく借りたPDをつなぎます。10日ほど経ちまして、再び先生のところへやってきました。

金造「いやあ、さっそくPDってえのを使ってみたけど、ありゃいいね。使わないときゃ切っておけるし、いっぱいになったら交換すりゃいい。便利だね。ねえ、先生もうしばらく貸しておいてくんねえかな。」

先生「一月かい。それとも二月かい。」

金造「いや、百年ほど。」

先生「そういう訳にはいかない。時々使うでな。」

金造「ただとはいわないからさ。中古だし、一両でどうだい。」

先生「しかたないね。またトラブルで、さわがれるよりはいいから譲りましょう。」

金造「ところで、先生はどうするんでえ。」

先生「わしは、CD−Wを使う。媒体もPDの一割ほどで買えるからな。」

金造「あ、汚ねえなあ。自分は安いやつを使うっていうのかい。」

先生「初心者は大抵失敗するからね。それに、書き換えができないからな。」

金造「これがそのCDですかい。普通のCDと同じじゃねえか。あ、わかった。これでゲームをコピーして売りつけようって魂胆だな。」

先生「そんなことをしたら御用になる。こないだも隣町で一人捕まったばかりだ。たしか、瓦版のホームページをコピーして売ってたとか。金の瓦とかいったな。」

金造「それ、あっしのページだ。最近解約する連中が急に増えたと思ったら。先生、何かいい方法は無いかね。」

先生「止めることはできないが、復号プログラムを売ってはどうかな。ページ自体は暗号化しておき、復号処理を通すことで見れるようになる。」

金造「でも、そいつをコピーされたら終いでしょ。」

先生「復号プログラムと復号結果には顧客別に番号が入るから、誰が横流ししたかわかるって寸法だ。」

金造「何だか、面倒そうだな。とりあえずは黒字だからいいや。ところで、こないだの異人の娘はどうしたい。」

先生「あ、レイ・サンディ。」

金造「そのレイさんでぃ。」

先生「サンディは名字だ。」

金造「じゃあ、レイ・サンディさんでぃ。」

先生「紛らわしいなあ。あの娘なら、知り合いの店につとめてる。そろそろ戻ってくるころだ。」

金造「え、戻ってくるって、ここに泊まってるの。」

先生「日本に身寄りもないし、親方のところにも置いとけなくなったしな。」

金造「特ダネだよ。先生と異人の娘とが同棲っと。」

先生「これ、金造さん。妙な噂は立てないどくれ。」

金造「だって、ひとつ屋根の下に暮らしてるんだろ。同棲じゃなくて何だい。」

先生「ひとつ屋根には違いはないが、それならおまえさんもそうだよ。長屋なんだから。」

金造「同じ部屋ってことだよ。」

先生「おまえさんの早とちりだ。となりの部屋だよ。」

金造「なんでえ。つまらねえ。だったら壁をぶち抜いてやるよ。せっかくのネタだからね。」

先生「困った人だな。そうだ、代わりのネタをやろうじゃないか。」

金造「へ?本当。いやあ、先生はいい人だ。」

先生「近々、わしはメリケンへ行くことになってな。そこで、見聞きしたことをお前にメールで送ってやろう。」

金造「そいつあすげえ。しかし、先生がいなくなると寂しいね。」

先生「お上のご用でな。」

金造「メールはいらねえから、代わりに頼みがあるんだが。」

先生「何だい。」

金造「あっしも付いていっちゃいけませんか。」

先生「弱ったな。もう顔ぶれはきまってるしな。」

飛脚「羽噌紺之進さんのお宅はこちらかい。城からの早文だ。」

先生「何かな。え〜と。この度の、メリケンへの視察に同行予定の広報担当が、空出張や接待海外視察の不祥事により、代わりを平民起用することとあいなった。ついては人選を一任いたすので、至急連絡いたせ。弱ったね。日もないし、塾生は休みで里に帰ってるし。」

金造「先生、誰かわすれちゃいませんか。」

先生「かといって、危険な航海に、所帯持ちの熊吉さんはつれてけないしなあ。」

金造「やだなあ。先生、独り者が、ほれ目の前にいるでしょ。」

先生「目の前って、御隠居はもう歳だから、無理だ。」

金造「もっと若いのがいるでしょ。」

先生「金造さんや、これは遊びじゃないんだよ。それに、日当もでない。」

金造「かまわねえよ。こんな面白れえことを見逃す手はねえや。わくわくするね。ところでメリケンはどっちの方だい。こっち、いやあっちかな。」

先生「やっはり、お前にタダ働きは続かないよ。伊勢にもいけなかったくらいだ。奉公(方向)が定まるわけがない。」

え〜、長い間お楽しみいただきました、電脳横丁(お江戸編)は以上を持ちまして終わります。

この続きは現代版電脳横丁でお楽しみください。現代に蘇った金造と先生のメリケン道中。はてさていかがあいなりますことやら。