金造「その絵がちょこまか動き回っているのは新しい遊びですかい。」

先生「いや、これはスクリーンセーバーだ。」

金造「ハゲのオカマバーだろ。ツルリンゲーバー。」

先生「画面の焼き付けを防ぐソフトのことだよ。同じ画面のままだと絵の色が残ってしまう。ちょうど、たんすをどけると周りの畳の色が変わっているのがわかるだろ。」

「シロ・クロ・ミケ・三人あわせて、てやんでぇず。」

金造「あ、これ最近はやりの女の子達でしょ。先生もすみにおけないね。」

先生「塾生がいれてったんだ。」

金造「あ、この唄『脅したの男の子』ってやつでしょ。」

先生「金造さんは若い女性のことになると詳しいね。」

金造「瓦版屋はそれでおまんま食ってんだ。でもおしいなあ。解散しちまってよ。」

先生「ほかにもいくつか入ってるようだよ。」

金造「あ、これ二人組のボンクレディ。この娘達も解散したな。なんでも盆暮まで働かされてやになったとか。」

先生「ところで、近頃伊勢さんを見かけけないが戻ったのかい。」

金造「それが、帰る途中に赤城のところへ寄ったんだ。そんとき泊まってた芸能界の世話人が二人を気に入ったらしくて、こないだお披露目があったんだ。」

先生「そりゃすごいなあ。で、なんてえ芸名だい。」

金造「それが、上州出のいとこってんで、いとこんず。」

噂をすれば何とやら。そこに駆け込んできましたのが赤城と伊勢。

伊勢「金造さん。かくまって。」

金造「どうしたんだい。」

話をよくよく聞いてみると、一月間、休みなしで働きづくめ。この先一年も休みなし。これじゃ身が持たないってんで逃げてきたようでございます。

金造「かくまうのはいいんだが。けんかは、からっきしだからなあ。そうだ、先生は仮にも武士だ。何とかしとくれよ。」

先生「わたしも、もめごとは苦手だが。なんとか話し合いで事が済まんかなあ。」

若衆「いやがったな。おめえたちには元手がかかってんだ。今、逃げられたんじゃ損なんだ。まだまだ仕事がつまってんだから。」

先生「いやがってるのを無理に連れ帰ってもしかたあるまい。」

若衆「何を、関係ないやつはすっこんで・・・って、こりゃ先生じゃないか。」

先生「おう、おぬしは塾中途退学の権蔵(ごんぞう)ではないか。」

権蔵「先生、その中途退学ってのは勘弁してください。それより先生には関係ないことですから。」

先生「そうはいかない。わしはこの娘達の後見人だ。話はこの娘達から聞いたが、このような弟子を育てのはわしの不徳。せめてもこの手で刀の錆にしてくれる。」

権蔵「先生、落ち着いてくださいよ。でもまいったなあ。このままじゃ、他の連中にしめしがつかないし、元手も回収できてないし。」

伊勢「別に仕事がいやなんじゃなくて、少しはゆっくりしたいでけなんです。」

権蔵「そう言っても、いつ人気がなくなるかわからないからね。儲かる時に儲けないと。しかも駆け出しだから仕事を選んでられないし。」

先生「すぐに結論はでないだろう。とりあえず、腹が膨れれば気も落ち着くってもの。ちょうど、刺身があるからどうだね一杯。」

権蔵「うれしいね。飲まず食わずでおっかけてきたからね。」

先生「金造さん。桶に、はまちが入ってるだろ。ちょっとさばいてもらえないかい。」

金造「あっしが、だめですよ。もっと小さいのじゃだめですか。」

先生「いわしでもいいが。それもだめかい。なにがいいんだいい。」

金造「さばくと言えば、しらす。」

先生「そんな小さいものさばいたってしょうがない。」

伊勢「わたしがします。漁師娘ですからね。薬味は何がいいかしら。」

権蔵「いいねえ、唄って踊ってさばける娘。」

先生「こやつ、まだ、稼ごうとしてるな。」

権蔵「月に一日休みでどうでしょ。」

先生「やはり、刀の錆に・・・。」

権蔵「わかりました。十日に一日。」

先生「そうだ、さびにしよう。」

権蔵「やだなあ、じゃあ二日につき一日。」

先生「薬味は、山葵(さび)にしておくれ。」