昔は外国人が大変珍しく、庶民が出会うことはほとんど無かったそうです。しかし世はインターネットの時代。そうなると外国人もどんどんやってきます。江戸の時代は外国人のことを異人さんと呼んでおりました。
熊吉「ていへんだ。ていへんだ。」
金造「また熊のていへんだよ。どうしたい。」
熊吉「天狗(てんぐ)が出た。」
金造「なに言ってんだよ。天狗なんているわきゃねえだろう。」
熊吉「いるんだよ。でっかくて赤い顔してやたら高い鼻してる。んでもって、わけのわからねえ事をしゃべってる。」
金造「ははあ。そいつあ、異人だね。」
熊吉「あれが、異人かい。椀頭(わんず)様で見ていた時はこんな小さかったのに、生はでけえ。」
金造「で、そいつはどこにいる。瓦版屋金造さんの単独インタビューだ。」
異人「コメクダサイ。」
金造「誰だ。表で物乞いしてるやつあ。」
異人「トダナモアリマセンカ。」
金造「欲の深いやつだね。米に次いで戸棚かい。」
熊吉「でた、でた。異人だよ。」
異人「コメクダサイ。トダナモアリマセンカ。」
金造「それを言うなら、御免下さい。どなたかおりませんかだろう。」
異人「ハーイ。ソウトモユウネ。」
金造「変なやつが来たね。異人さんが何の用だい。」
異人「ワラアリマスカ。」
金造「なんだよ。わらが欲しいなら最初っからそう言やあいいんだ。そこにわらじ用のが残ってら。好きなだけ持ってきな。」
異人「ワラデハアリマセン。ワラデス。」
一同困って羽噌紺之進(はそこんのしん)先生のところへと参りました。
金造「先生。異人さんが来てわけのわかんねえこと言ってんだ。ちょっくら助けてくんねえ。」
先生「やあ。ハリーじゃありませんか。」
異人「コンノシン。ヤットアエマシタ。」
先生「こちらは拙者(せっしゃ)の出島での先生だったお方だ。近いうちに訪ねてくるとの知らせをもらって待っておったのだ。」
金造「なんだ。それはそうと、この異人さんさっきからわらくれ、わらくれって言うんだが。」
先生「それはウォータだよ。水だな。」
金造「なんだよ。はなっからそう言ってくれりゃいいのに。妙に格好つけてワラなんて言うからわかんねえんだ。」
先生「別に格好つけて言っているわけじゃないよ。なまりだな。」
金造「へ、なまってんの。あっちにも田舎があるんですか。」
先生「外国は広い。いろんな言葉がある。特にメリケンは住んでるところで少しずつ方言がある。」
異人「ココガ、ウナギノヒョットコデスカ?」
金造「それを言うなら鰻(うなぎ)の寝床(ねどこ)だろ。」
異人「ソウデシタ。ウナギ、ネエ、ドコ?」
先生「ハリー。鰻の寝床というのは例えです。メリケンはとても広い国です。長屋が珍しいんですね。」
異人「イイエ、コノヒト、カラカウト、オモシロイ。」
金造「なんだと。瓦版屋の金さんをおちょくるたあいい根性だ。」
異人「アナタガ、カオガパンダノ、キンサンデスカ。」
金造「誰の顔がパンダだ。いいかげんにしやがれ。」
異人「アイムソーリ。」
金造「ぞうり編むったって許さねえ。」
先生「いや、メリケンの言葉で申し訳ないってことだ。」
異人「ハーイ、ジョークデス。」
先生「ハリー、まだこの国ではユーモアは通じません。金造さんも落ち着いて。文化の違いですから。この地図をご覧なさい。」
熊吉「こりゃ、でかい地図だね。」
異人「イエイエ、セカイチズネ。」
先生「ここが、日本国です。で、ここがメリケン国です。大きいでしょ。ここでインターネットは生まれたんです。ハリーは、この国で一番偉い大統領からの使いで来たんです。」
熊吉「なんでえ。同業かい。」
金造「大工の頭領が頭の国じゃ知れてるってもんだ。」
先生「頭領じゃないよ、大統領だ。メリケンでもウィルスは問題なんだ。で、町内でもファイアウォールを作ろうと思ってハリーに来てもらった。」
金造「なんでえ、そのファイアダンスってのは。」
先生「ファイアウォールだよ。防火壁、つまり火事の火を防いでくれる壁だな。」
金造「てことは土塀みてえなもんだ。」
熊吉「なんでえ、そんならこの大工の熊吉にいってくれりゃ、三日とかからねえ。」
先生「例えだよ。大江戸夜塾のコンピュータをサーバにしてそこに専用の処理を仕掛けるんだ。それで、不正に進入してくる連中を防ごうってわけだ。」
熊吉「ありゃいいね。酒のつまみにゃ最高だ。」
先生「なんですか、酒のつまみって。」
熊吉「サバ煮するんでしょ。」
先生「サーバだよ。裏方で仕事を肩代わりしてくれるコンピュータのことだ。」
熊吉「なんだかわかんねえが、そのサーバってのは偉いやつだね。」
先生「ところで金造さんや、こないだのパソコン持っといで。ハリーなら修復できるだろうよ。」
金造「おっ、さすがは先生の先生。」
異人さん、しばらく金造のパソコンを調べておりました。そしてなにやらごそごそと妙な呪文を打ち込んでおりました。
異人「キンサン、カクニンシテクダサイ。」
金造「おっ、もういいのかい。あるある、毎日集めた絵がちゃんとでるよ。へ〜すごいね。さすがは異人さんだ。凡人じゃこうはいかねえ。」