POP MUSIC FOR SINGLE LIFE


(ODE/EPIC/LEGACY EK 64942)

Carole king

『THE CARNEGIE HALL CONCERT』(’96)

 最近公開された映画『ユー・ガッタ・メール』の主題歌をキャロル・キングが歌っているようで、彼女の歌声をその映画のCMからも耳にします。

 ところで、彼女のオード・レーベル在籍時代のアルバムは個人的にはあまり好きではありません(と言ってもよく聴いています(笑))。その頃の彼女のアルバムは70年代前半の「内省」がもてはやされた、と伝え聞くシンガー=ソングライター全盛時代の作りになっているのですが(という彼女自身、その代表です)、何しろ曲が良いのに彼女の少し遠慮した様な歌い方、フォーキーな大人しいアレンジが曲自体の魅力をスポイルしているというか、覆い隠しているというか、何か勿体ない気がするのです。それに彼女の曲は「ロコ・モーション」だろうが「アップ・オン・ザ・ルーフ」だろうがそんな「内省的」肌触りを業わざ加えなくても、元々そういったものを内包している様な気もします(最初に好きでないと書いたのは全面否定という訳でなく、彼女の作品の中で考えたら、という事)。

 なんでこんな事書くかというと、彼女の曲が大好きだから。60年代前半のジェリー・ゴフィンと組んで作り出した曲は殆ど好きだし、逆に「いい曲だな」と思ってクレジットを見ると、彼女の曲だった、という経験は何度となくあります。誰が歌おうと、どんなアレンジだろうと、それなりに楽しめるのが彼女の曲の凄いところだと思うのですが。シンガー=ソングライター全盛時代の彼女自身が歌った作品はその魅力を最も消していると思うのです。しかし、実際は売れたのだから余計なお世話、ということでしょう。

 で、今回紹介するこのアルバムは96年に突如発売されたもので、彼女のシンガー=ソングライター絶頂期の71年、カーネギー・ホールでのライブを収録したもの。曲の内容はそのころ売れに売れていた『つづれ織り』前後のアルバム収録曲を中心に、他のアーティストへの提供曲も交えたものになっています。伴奏は彼女のピアノ=つまり弾き語りで、後半で一部、ベースやギター、ストリングスがサポートに入りますが、そのサポートも最小限に止めています。                          
 こう書くと、デモ・テープみたいなものを連想するかも知れません。しかし、そんな舞台裏臭さは微塵も感じさせません。1曲目の「空が落ちてくる」から、オリジナルアルバムと違って精一杯歌う彼女の声と、無駄なく絡むピアノとが彼女の曲の世界を浮かび上がらせて、どんどんその世界に引き込まれていってしまうのです。10曲目の「ソー・ファー・アウェイ」からダニー・クーチを加えての「イッツ・トゥー・レイト」辺りの力強い歌声には本当ジーンとくるものがあります。
 彼女の歌とピアノさえあれば他には何も必要無い、と改めて思いを馳せた私には、最後の方になって「ウィル・ユー・ラブ・ミー・トゥモロウ」等のメドレーにコーラスで絡む、彼女と並ぶSSWの代名詞=ジェイムス・テイラーでさえ邪魔に思えて仕方ありません。それを除けば大満足のあっという間の70分。
 ところでこのアルバムの存在を教えてくれたのはニフティーのロックライン・リスナーズ・フォーラム(かつては「クラシックス」、現在は「懐古亭」)に入室されていた方々。ここでいろんなジャンルの音楽を教えてもらっている私ですが、最近、このホームページ作っていてご無沙汰になっています。落ち着いたらまた覗いてみようと思っています。

 

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