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歌川国貞・三代豊国

・歌川国貞(三代豊国) 天明6(1786)年〜元治元(1864)年
 初代歌川豊国の高弟。文化6年(1809)頃から錦絵を描き始め、「偐紫田舎源氏」など草双紙の挿絵、役者絵、美人画によって、国芳・広重と並ぶ幕末の代表的な浮世絵師となった。
 師の没後の天保15年、二世豊国を名乗ったが、二代目は別にいたので三代目と呼ばれることが多い。豊国となってからは乱作の傾向もあるが逸品もある。
 主な門人に、二代国貞、国周らがいる。

国貞時代の作品

『本朝廿四孝』「十種香」

武田勝頼 八重垣姫 上杉景勝
中村芝かん 沢村田之助 市村羽左衛門
 武田勝頼の許嫁八重垣姫は、勝頼が将軍足利義春の暗殺を企てた容疑で切腹させたられたと聞き、その死を悲しんで、勝頼の絵に香を焚いて供養していた。しかし、腹切したのは替え玉で、勝頼は名を蓑作と改め、八重垣姫の前に現れる。
 簑作が、諏訪法性の兜を盗み出すようもちかけたことから、それが勝頼と知った八重垣姫は、父の長尾謙信が追っ手を差し向けたことを勝頼に知らせようと、諏訪明神の使いの狐の霊力に助けられつつ、勝頼の後を追う。
 国貞の絵は、背景にぼかしを入れた狐の影絵を配し、狐火まで散らして、その技術力を誇示するかのような凝った作りになっている。


『白波五人男』
南郷力丸
中村芝かん

香蝶楼国貞時代の作品 文政10(1827)年〜

『奥 州 安 達 ヶ 原』

安部宗任 安部貞任
市川市蔵 市川小団次

豊国時代の作品 天保15・弘化元(1844)年〜

鬼ヶ嶽 秋津嶌
坂東彦三郎 片岡仁左衛門

怪童丸 山姥
岩井粂三郎 坂東彦三郎


俳句のある浮世絵

立花の鶴吉
おひ茂る草々恋ひし雉の声 人なみに世も渡りたし秋の川


国貞舎豊国と一陽斎豊国の

「若紫年中行事の内 睦月」

 この2枚は不思議な組み合わせである。
続き物でありながら、左は国貞舎豊国の名、
右は一陽斎豊国の名で摺られている。しかも
色が合わない。同じ版を時期を違えて摺った
ものか。


喜翁豊国の時代

 喜寿を迎えようとするころ、豊国は「喜翁」を名
乗るようになる。

「仮名手本忠臣蔵」

顔白御前  桃井若狭之助 足利直義 顔白御前   高の師直
澤村田之助 片岡我童 坂東彦三郎 澤村田之助  坂東亀蔵

小なみ    となせ   おかる  平右衛門
澤村訥舛 坂東□三郎   沢村田之助 坂東彦三郎


「加賀見山旧錦絵」

お初 岩藤
沢村田之助 坂東彦三郎
 中老尾上に仕えるお初は、局の岩藤に草履で打たれた主人の恨みを晴らし、お家の大事を救うスーパーヒロインである。利発で武道にも優れたお初のきびきびとした感じがよく表現されている。背景には若い頃の凝った作りは見られないが、単純化された構図の中に、役者の魅力とお初の本質を明快に描いている。豊国晩年の傑作であろう。