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兵庫の其隣ぬししはらく風流の
舩待なりしを浪花の追風に
吹おこされとみにまくり手して帆を
まき/\のかさなりぬれはしかさす
笘のとちものとなし一走りと号
みなと/\の得意に送りその品さためを
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「ひとはしり」
上部の印は、七十二峰庵の蔵書印。
静岡の松島十湖の蔵書であったようだ。 |
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はや草の小道となりぬ啼蛙 芹舎
風の柳のふりこほす雨 其隣
塞かすに置しこたつの間にあうて 素屋
旅のはなしのまた尽ぬ也 卓志
物くれて使をいなす宵の月 潮水
とうと野分も来す仕舞らし 舎
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きかまほしとなりおのれちから路
となる神戸に碇をおろし居れは
[舟益]にたちてこのことはりをのふる
西京
壬申水無月 卓志
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すた/\と角力の弟子の追付て 水
縄のあまりを口て喰いきる 舎
ひとしきり鼠もあれる花のうち 隣
寝にくきほとにあたゝかな宵 屋
川留にへらした春のをしまれて 志
赤兀山を正面に見る 水
けふ太義して置くは又翌から 舎
新潟唄は供の得手もの 燐
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ことし酒歩行はさめて拍子なき 隣
顔を見るより恨みたら/\ 屋
挑灯の紋は目なれぬ借処 志
とつてもつかぬ庭鳥か啼 水
居残るは分別すきた衆はかり 舎
ひらきおくれし葉隠の蓮 隣
朝雨ははれても月の見ゆる空 屋
右も左も螽飛ふ道 志
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はた/\の飛て蜻蛉も立にけり 舎
日の岡峠かよふ商い 燐
ちよつとし事ては齢もよれぬ物 屋
とかくなしみは心置なし 志
茶の下に柴折くへるはなの朝 水
霞なからも寒き瀬の音 筆
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襖まてはつすはすみの年忘 屋
何さゝやくと悋気せらるゝ 志
きりたての衣裳揃にし物参 水
ほめそこなひな水の打過 舎
掃除したやうに喧嘩の跡もなし 隣
飛乗舟は待ともう来ぬ 屋
いなつまも月のてる夜はあからさま 志
盆草臥かやめは八朔 水
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初汐にいつの経木か漂うて 屋
道のちかさに通る穢多村 志
疹瘡湯に入たにほひの終ぬけす 隣
独になれは水仕女(みずしめ)も来ぬ 屋
閨はまた行灯も置て夜のさま 志
とうやらつもる雪の塩梅 隣
はたか木に泊まり鴉の落つかす 屋
橋の細さにわたる人待ツ 志
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茅葺に久しき町や燕子花 素屋
何処も刈干す麦のさむしろ 卓志
ひる寝起き土瓶のぬる茶味かりて 其隣
誰か遣ふたかひけぬ鋸 屋
いふさねはならぬはかりに蚊の残り 志
吹落さうな風の三日月 隣
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夕立に芥の山の低うなり 隣
垣の木槿の土用から咲 志
すんかりとゆかたのまゝの薄化粧 屋
すはるともせす長いさゝやき 隣
呼に来た舟の使に荷をわたし 志
又燃さうにあふつ桃燈 屋
澄月をうこかす雲の折々に 隣
迯た河鹿もやはり庭の音 志
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畚の子のゆらるゝたひににこ と 隣
重につかえる草餅のの嵩 屋
朝の月軒端の花の露持て 志
出這入しけき蜂の巣つくり 隣
箒とるうちもはつさぬ腰衣 屋
鍋に一はい座禅豆焚 隣
四ッ谷まて往てかへるには日のはした 志
ためては国へまはす給金 屋
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山里は軒端の溝も清水かな 卓志
蝉の声澄風の間に/\ 其隣
検木荷の息杖幹に建かけて 志
重い口てもかるい事いふ 隣
のほる月影は手早う行わたり 志
磯際飛は鰡かすゝき歟 隣
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秋好のあるしをみなか陰気かり 屋
をかしいほとに嚔か出て 志
太々に裃つけてかしこまり 屋
業平菱の欄間めつらし 屋
花盛画にもおとらぬなかめにて 隣
おそき日なからをしまるゝ暮 志
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おろしたる駄荷のほとりへ御駕まて 志
そらはしつかに月の有明 隣
紅葉にも花の都をふらついて 志
さすもしふとき行秋の蚋 隣
米 のからた払うて一やすみ ヽ
あるかないかの火て煙草吸 卓
あつい日は精進料理もすつはりと 隣
蓮のひらけて池の曠やか 志
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祭とて無性に太鼓たゝきたて 志
髪をほといて頭痛紛らす 隣
留守になる用をとめるは悋気めき 志
小春も終にくもり出しけり 隣
枯なからちらり/\と綿の笑み 志
子に目はなしのならぬ井戸端 隣
豆腐屋の声か鶏より時計らし 志
報謝やつても未た経をよむ 隣
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味噌買に酢買に角力つかはれて 隣
吝いやうてもやはり有る袖 志
狛犬を天満宮へたてまつり 隣
知己らしう茶店辞宜する 志
咲みちて花の垂枝のゆさ/\と 隣
色音をつくる鳥のうらゝか 志
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若けれと脇目もふれす後家を立 隣
越路うまれの顔は雪なり 志
いつ春か来るやらしれぬ山奥に 隣
鍋を鳴してよける狼 志
おのつから乾いて箕の軽うなり 隣
南風も吹に北風もそよそよ 卓
月の入のちもあかるき銀河 隣
西瓜の甘ささすか市岡 志
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油断して居れぬ夏書の納め前 志
いつの間にやら尽す煎豆 志
猫さへも飼さぬ家の白鼠 隣
麻布簾のなひく涼しさ 水
親竹におとらす伸る今年竹 秀
今は木幡も只の里なり 志
月かけて日ころ望みのうさ晴し 水
床几のうへゝまねく角力取 隣
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朝風呂に爪とる日なり初さくら 其隣
まつ献立もそろふ若鮎 潮水
春の水空にあやかる青みにて 可秀
ひけは車の土かこほるゝ 卓志
この道へ来るは大かた月見衆 水
窓のほとりに馬追か啼 隣
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ときれては又はら/\と時雨けり 志
華は咲ても石蕗の淋しき 秀
拭掃か別荘守の仕事にて 隣
わたくし酒にたはいなく酔 水
たはこ入落した先も淀屋橋 秀
人に押れて歩行夕月 志
秋口は茶のやうな風か吹く 水
早稲つう/\と伸る一まき 隣
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雁にさへ文の便りはあるものを 志
おもひ出されぬ誰やらか歌 秀
花さかり寺もそは/\浮世めき 隣
塵に挿るゝすみれ蒲公英 水
あるしまて相伴ふりの雛の膳 秀
灯したはなはくらい蝋燭 志
かへもなき一分の金の通りかね 水
汐かれ声て沖の舩呼 隣
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京四条通御旅町
御摺物師
馬場利助 |
事觸のいふたか今て□らしき 志
夫トの留守は男気になる 秀
若々と三浦絞のゆかた着て 隣
空地十分あけし雑蔵 水
おのつから雲のつれにも花日和 秀
囀り競ふいろ/\の鳥 志 |
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