自由と試行錯誤

渡辺慧著「生命と自由」(岩波新書)において、生命の4つの特性は

  1. 非決定性
  2. 価値追求性
  3. 実行能力
  4. 変化を通じての自己同一性

というものであり、これらが自由の定義にも一致することが示されています。生命とは自由という価値の追求であると言うのです。

これに対して、僕の考える自由とは「試行錯誤」のことです。試行錯誤は結果がはじめからわかっている行動ではないので「1非決定性」を満たします。試行錯誤の結果は何らかの価値観によって検討されるので「2価値追求性」も満たします。試行錯誤は行動である以上「3実行能力」を前提とします。試行錯誤は何らかの変化を求めてなされるものですが、自己を全面的に変化させようとするわけではなく同一性は保たれるので「4変化を通じての自己同一性」も満たします。したがって、「生命=自由=試行錯誤」だということになります。

それだけではなく、「自分のやりたいこと」というのもこの4つの特性を備えています。自分のやりたいことというのは面白いことであり、決められた通りのことは面白くないので「1非決定性」が必要です。やりたいことは自分にとって価値があるので「2価値追求性」を満たします。やりたいことをやるには「3実行能力」が必要です。やりたいことができた時、自分は変化していますが、「自分の」やりたいことである以上自己同一性は保たれ、「4変化を通じての自己同一性」を満たします。つまり、「生命=自由=試行錯誤=自分のやりたいこと」です。

近代という大脳優位の時代には決定性が重んじられます。大脳は自由とは反対の安定を求める性質があるということです。大脳は神経回路の性質上失敗に非寛容なため試行錯誤に向きません。試行錯誤しながら失敗から学ぶのは小脳です。生命は自由の追求で、自由とはやりたいことをやることで、自分のやりたいことは面白いことであり、面白さは暗黙的情報で、暗黙的情報は小脳にあります。「生命=自由=試行錯誤=自分のやりたいこと=小脳」という結論になります。