政治問題

政治とは「社会システムを利用して、他人を変えようとすること」である。政治活動というのは「自分がやってもらいたいことを他人にやらせようとすること」だ。それは、我々がお金を使う場合と同じ形の行動である。経済活動において、我々はお金を払うかわりに「自分がやってもらいたいこと」を相手にやってもらう。政治と経済は同じような種類の行動を扱うシステムなのである。どちらも他人の行動を期待していて、自分のやりたいことを自分でやるのとは直接関係がない。

経済活動の場合、自分がやってもらいたいことを他人にやらせるのは「お金と引き換え」だが、政治で他人に何かをやらせるのにお金を使ってはいけない。政治というのは「社会システムを利用して他人に何かをやらせようとすること」だから、建前として「この考えは正しい」という理屈が必要である。だから、政治活動の根拠には常に「ナントカ主義」というような思想が(建前として)ある。「この考え方が正しいから、こういう風に行動するべきだ」という理屈で、自分がやってもらいたいことを他人やらせようとるのが政治である。

そういうわけで、政治家というのは「社会システムを利用して、他人を変えようとする職業」である。政治家は芸術家やプロスポ−ツ選手と同じで自分では生産的なことはやらないのである。我々は政治家に期待してしまったりすることもあるが、期待される側の政治家は別の誰かに何かをやらせようとするのが精一杯である。その「別の誰か」というのは結局のところ我々自身なのだ。政治家にあまり期待していると、すごくまわりくどい他人任せの社会になってしまう。

ところで、僕が考える理想の社会は「誰もが自分のやりたいことをやっている社会」である。「自分のやりたいこと」は自発的なものであり、他人にどうこう言われてやるものではないし、どこかに正解があるというものでもない。ということはつまり、「誰もが自分のやりたいことをやっている社会」は、政治という「他人を変えるための活動」によって実現することはできないのだ。

これからはみんなが自分のやりたいことをやるしかない、と僕は思うのだが、そうなると政治というものの重要性はどんどん低くなる。これから先、重要なのは行政だ。行政は「やりたいことをやっている人々のサポ−ト」をやれば良い。サポ−トという形をとる仕事は、他人に何かをやらせようとするのではないはずだから、「自分のやりたいこと」になり得る。行政はサポ−トをやりたい人がやればいいのだ。やっぱり、「みんなが自分のやりたいことをやればいい」というだけの話なのだった。