おじゃる丸の時間

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たまたま平日の夕方家にいた時に、息子が最近気に入っていると言うアニメ「おじゃる丸」を見た。テーマソングは「詠人(うたびと)」というのだが、レゲエみたいなゆったりとしたリズムでイイ感じ。「まったり、まったり、まったりな〜」と歌っているのは北島三郎である。サブちゃん、レイドバックしてます。「夢をえがいて〜、空を見上げれば〜」という歌詞も良い。

初回から見たわけではないので話の筋がよく分からないのだが、主人公の「おじゃる丸」はお内裏様のような服を着て笏(しゃく)を持っている。平安時代の貴族の子どもがなぜか現代にタイムトラベルしてきたらしい。フルネームは「さかのうえのおじゃるまる」で、いかにも高貴そうである。付き人(?)の虫がいつもそばを飛んでいて、僕はそれをカナブンだと思っていたのだが実は蛍なのだった。なるほど、カナブンだと訳がわからないが蛍なら風流だ。

おじゃる丸は小学生カズマ君の家に居候していて、月光町という町の人々と付き合いながら、現代人とは違った時間の使い方で暮らしている。いつもより早く目が覚めたというので、道端に畳と屏風をセットして肘掛けにもたれながら景色を楽しんだりする。「まろは景色に溶け込んでおる」と悦に入り、「朝プリンも良いものよ」などと言いながら好物のプリンを食べる。

おじゃる丸は「そうであったか」とか「〜するがよい」とか偉そうなしゃべり方をするのだが、おじゃる丸のことを偉いと思っていない現代の人々に相手にされなくても全く意に介さない。とにかく独りで満足していて、誰にでも気安く声をかける。ところで、おじゃる丸がいつも持っている笏は元々閻魔大王のものだったらしく、鬼の子供の3人組が取り戻そうとするが、その企てはいつも失敗に終わる。そのへんの詳しい経緯はよくわからない。

この漫画は色もキレイである。中間色を多く使っていて色合いがやさしい。色の刺激が強すぎて見ている子どもが倒れてしまった「ポケモン」のように、最近のアニメは色がドギツイものが多いが、「おじゃる丸」はそれらとは対極にある。背景が水彩画のようなタッチでぼかして描かれていて、塗り残した白い部分があるのも良い。前景である人物はくっきりと、背景はぼんやりと描かれている。

この前、おじゃる丸は近所の喫茶店に行き、ここは何をするところかと尋ねた。一緒に行ったおじさんは「のんびりするところ」だと言い、おじゃる丸はそれが気に入ったようだ。おじゃる丸はいつも現代人がせかせかしていることにあきれていたのだ。その後、常連のおじさん達がジャズの生演奏を始めたのだが、それが幼児向けアニメにしてはシブかった。絵も物語も音楽も、力は入っていないが手も抜いていない。僕も気に入った。