昼寝について

昼寝はゴクラクだ。今までで一番ごくらくだったのは、四万十川の河原で樹の間にハンモックを吊るして寝たときだ。川はサラサラと流れる。赤とんぼが飛んでいる。陽はまだ高く、晩ご飯まで何もすることがない。ヒグラシの声が聞こえる...。一方、そういう状況とは正反対だが、会社の机で分厚いファイルを枕に昼休みに15分だけ寝るのもまたごくらくである。しかし、休み時間の終わりを告げるチャイムは容赦なく鳴り響く。ほっぺたにファイルの跡がついて、書類の上にはよだれが垂れていたりする。

以前旅行したイタリアでは1時から4時くらいまで閉まっている店が多かった。店員が昼寝をしているとも思えないが(してるのかな?)、街全体が昼寝的な雰囲気になるので、我々も宿に戻って昼寝をすることになる。昼寝から覚めると新鮮な気分になっている。出かける時、フロントのおじさんに「ボンジョルノ(こんにちは)」と挨拶すると、おじさんは首を振って「ボナセーラ(こんばんは)」と僕らの間違いを正した。

夕方といっても4時だからまだまだ明るくて全然「こんばんは」という感じではないのだけど、イタリアでは「昼寝休み」が終わると一日の後半が始まることになっているのではなかろうか。だから、挨拶の言葉も変わるのだろう。午前中に行った靴屋にもう一度行ってみると、ショウウィンドウのディスプレイが変わっていて、店員がただ昼寝をしていたのではないのだと判る。さっきは迷った末に買わなかった靴をやっぱり買うことにした。

ところで、うちの息子の通う保育園では12時半から3時までがお昼寝の時間である。教室に各自の小さな布団を敷いて寝ている。眠っていない子もいるが、そんな子も目を開けたまま黙ってゴロゴロしている。それもまた昼寝だ。とても平和な光景である。「平和とは子どもの寝顔である」という格言を思い出す。僕が考えたんですけど。

考えてみると幼児とイタリア人には共通点が多い。おしゃべりで人なつっこくて食いしんぼうで歌や絵が好きだがあまり決まりを守らない。その上、昼寝によって一日を2回に分けて楽しんでいる。本当にイタリア人が昼寝をしているかどうかは別にして(多分ワインを飲みながら優雅な昼食を食べているのだろう)、長い昼休みをはさんで一日がくっきりと2つに分かれているというのはいいですね。