村上春樹の文章論 3

インターネット「村上朝日堂」で、村上春樹の好きな文章の条件は、

  1. 鋭利なリズムのある文章
  2. 深い優しさのある文章
  3. ユーモアのある文章
  4. 姿勢が良く、志のある文章

だと言っていた(「そうだ、村上さんに聞いてみよう」に収録)。この4条件を見て一番に思い浮かんだのは奥田民生である。民生の歌詞は「リズム、優しさ、ユーモア、志」の全てを備えている。村上春樹は「文体を作るのは音感だと思う」とも言っているが、奥田民生の歌詞も音感によって作られている。村上春樹と奥田民生の感覚はかなり似ているのだと思う。

ところで、この4条件は哲学者渡辺慧の「自由と生命の4条件」

  1. 実行能力
  2. 変化を通じての自己同一性
  3. 非決定性
  4. 価値追求性

に通じるものがあるような気がする。ちょっと考えてみると、

  1. 「鋭利なリズムのある文章」を書くにはそれなりの「実行能力」が必要である。
  2. 「深い優しさ」は他者への共感に基づくもので、自他の境界を超えての同一性の認識である。
  3. 「ユーモア」はものごとの意外な結び付きの発見であり、意外性とは非決定性である。
  4. 「姿勢が良く、志がある」とは、自分にとっての価値を追求する姿である。

というわけで、要するに同じことを言ってるのだということが解った。そして、「やりたいことをやる」というのも「自由と生命の4条件」を満たすのだ。だから、やりたいことをどこまでも追求すれば、リズムと優しさとユーモアと志が滲み出てくるはずである。そう思ってがんばろう。