たかもり児童図書館
(ダイジェスト版・正規版は心あたたまる美しい絵本です)
「み〜たんのえほん」
さく・え たかもりせいじ
だい1話『み〜たんのおそら』
み〜たんは、どこでもいつでも、ねむりこけるのがだいすきです。
いえのなかでは、いつでもうすいそらいろのもうふをひきづりながらあるきます。
かいだんでも、キッチンでも、おしいれのなかでも、えんがわでも、おどりばでも、ろうかでも、きにいったばしょをみつけると、そらいろのもうふにくるまってねむりだします。
――す〜す〜、す〜す〜
「あっ、み〜たんたら、また、ねてる!」
かいだんのしたのしゅうのうスペースでねてるところをママさんにはっけんされました。
「もう、み〜たんたら、どうしていつもちがうばしょでねるの?ママがさがすのにくろうするでしょ」
「・・・・・・・」
み〜たんがもうふにくるまりながらママさんをみあげています。
み〜たんのめはきれながで、ママさんにさえみ〜たんがめをひらいているのか、とじているのか、はんべつはこんなんです。
「だって・・・・」
ひらいていたようです。
「あのね、ちがうところでねんねすると、ちがうゆめをみるんだよ」
まんまるいかおに、きれながのめで、くちをとがらせてしゃべりだしました。
「そう、それで、いまはどんなゆめをみてたの?」
ママさんは、あきらめてそうきいてみました。
み〜たんは、へんじもせず、もっこりとおきあがり、とたとたとはしりだして、み〜たんのおきにいりの、かたかけポーチをもってきました。
ポーチのなかには、ちいさならくがきちょうと、いろえんぴつがはいっています。
「あのね・・・・・・」
そういって、み〜たんはそらいろのいろえんぴつをもって、らくがきちょうのしろいページをひらきました。
「あのね・・・・・・」
いまみていたゆめをえにかくみたいです。ママさんはみ〜たんのおにんぎょうのようなしろいちいさなぷくぷくしたてをみつめました。
「・・・・・・・・・」
み〜たんはうごかなくなりました。はたととまってしまいました。かんがえているのでしょうか?またねてしまったのでしょうか?きれながのめはおきているのかねているのかママさんにもはんべつできません。
「あちゃ〜〜〜〜〜」
とつぜん、み〜たんはひだりてでかみのけをかきむしりだしました。
おきていたようです。
「わすれちゃった」
ママさんをみあげてあかいべろをぺろっとだし、てれくさそうにそういいました。
「・・・まったく」
ママさんはあきれがおでためいきをつきながらみ〜たんにいいました。
「ミツコ。よくきいてね」
み〜たんは、ほんとうはミツコというなまえです。ママさんはおせっきょうするときだけ、み〜たんをミツコとよびます。
「ミツコはいくつになったのかな?」
み〜たんは、またあたまをかきだしました。
しろいこなゆきのようなフケがらくがきちょうにふんわりとふってゆきます。
み〜たんはおふろであたまをあらうのがだいきらいです。シャンプーがきれながのめにはいってしみるのが、とってもこわいのです。
おそるおそるわたがしのような、なめればとけてしまいそうなしろくてぷくぷくのゆびを3ほんたててママさんにみせました。
「それは、きょねんでしょう。このあいだ、おたんじょうびかい、したでしょう。プレゼント、いっぱいもらったでしょう」
「そうだ!み〜たんはね、よっつになったんだよ!よっつ!」
かおをかがやかせ、きれながのまぶたのおくのめがいっしゅんだけびーだまのようにまんまるにひかりました。
「そうでしょ。よっつでしょ。ミツコはもうあかちゃんじゃないんだから、あんまりひるねしちゃいけませんよ。よるねむれなくなるから」
「それに――」
ママさんはらくがきちょうのうえのフケをはらいながらいいました。
「こんどから、おふろにはいったら、まいかいかみのけをあらうのよ。せっかくきちんとおかっぱにセットしてあるのにこれじゃだいなしでしょ」
「え〜〜」
み〜たんは、かみのけをあらうのがだいきらいです。だってどうしてもシャンプーがめにしみるから。
「ね〜、ママ。よるねないとどうなるの?」
み〜たんはわだいをそらすようにママさんにききました。
「よるねないとね、――」
ママさんはかんがえながらこたえました。
「み〜たん、あのね、ちきゅうはね、まわってるんだよ。よるになるとね。なにもかもはんぶんまわってさかさまになるの。
だからね、じめんとおそらがさかさまになって、み〜たんのようにちいさなこどもだと、おとなのようにじめんにはりついているのにまだなれてないから、ふわふわとおそらにおっこちていくんだよ」
いたずらっぽくそういいました。
「エ〜〜!ほんとう?」
「ほんとうだよ。だからよるになると、み〜たんがおそらにおっこちないように、ママとパパがこうたいでいっしょうけんめいみはっているんだよ。でもね。もし、み〜たんがよる、ママとパパのいないところでめをさましたとしたら。そうぞうしてごらん。ひとりでめをさましたとしたら。ふわふわとおそらへとんでいっちゃうかもしれないんだから。そうしたら、み〜たんひとりでかえってこれる?これないでしょ。おうちのばしょがわからないでしょ。だから、そんなことがないようによるはちゃんとねなければいけないの。わかった?」
み〜たんは、へんじもわすれ、ただ、くびをこくりこくりとじょうげにうごかしました。
さて、そのばん。――
(後略)
だい2話『み〜たんともぐら』
きょうは、ママさんとみ〜たんとふたりでデパートにおかいものです。
み〜たんは、おきにいりのあかいポーチをかたにかけて、にこにこしながらにわにでました。
そとはいいてんき、まっさおなおそらとぽかぽかのひかりがみ〜たんをつつみます。
ポーチのなかにはらくがきちょうといろえんぴつがはいっています。
「あれ?」
み〜たんは、にわのかだんのよこでかたかたなっているおおきなあきかんをみつけました。
かりかりかり・・・・・・
かたかたかた・・・・・・
なかをのぞきこむと、みたことのないふしぎなはいいろのどうぶつが、あきかんのそこでもがいています。
「うわっ!」
み〜たんは、おどろいておおごえをあげました。
「それは、もぐらよ。そっとしといてね。そうしておけばやがて、おとなしくなるから」
ママさんはいいました。
「やっと、つかまえたんだから。もぐらはね、はなのようぶんをすって、からしてしまうわるいどうぶつなのよ。みなさい。せっかくつくったきれいなかだんのなかで、もぐらのとおったあとだけ、おはながかれてるでしょう。みんなそいつがからしたんだから。そうやって、あきかんにいれて、ひぼしにしとけば、かいものからかえるころにはしんでいるわ。もぐらはにっこうによわいから。かわいそうだけどしかたないのよ。かえってきたらおはかをたててあげましょう」
ママさんはみ〜たんにさとすようにいいました。
「まったく、こんなとかいで、もぐらなんて、わたしもはじめてみたわ」
「・・・・・・」
み〜たんはなんだかとてもかなしくなりました。もぐらのおおきさはみ〜たんのはいているくつくらいのおおきさです。
もぐらがみ〜たんをみあげたようなきがしました。きれながのみ〜たんのめと、もぐらのめがにているようなきがしました。
ママさんがとじまりをしているすきに、み〜たんは、くつであきかんをけっとばしました。
たおれたあきかんから、すたこらすたこらともぐらはいっちょくせんにかだんにむかってにげたかとおもうと、ふりむきもせず、あっというまにあなをほって、ちちゅうににげこんでしまいました。
「はや〜」
あっけにとられてみていると、ママさんがみ〜たんのよこにやってきました。
「どうしたの?」
「あのね、あのね、あきかんがね、いきなり、ぱたんてたおれたの。それでね、それでね、もぐらさんがね、すんごいいきおいでとびだしたの」
み〜たんはまんまるいかおで、くちをとがらしながらしんけんにしゃべりました。
ママさんは、み〜たんがあきかんをけって、もぐらをにがしてやったところからみていたのですが、それはいわないことにしました。
「そう、うんのいいもぐらだわね。それじゃしかたないわね・・・」
デパートにつきました。み〜たんのおめあてはおもちゃうりばです。
「あ〜!このおにんぎょう!このおにんぎょう!」
めざとくみ〜たんはあたらしいおにんぎょうをみつけました。
つぶらなひとみのかわいいおにんぎょうです。
「え〜、またかうの〜。おうちにいっぱいあるでしょ」
ママさんはわざとらしく、しかめつらをしました。でもちゃんとねふだをかくにんしました。
「じゃあ、とうぶんおもちゃはかわないからね。いいのね」
み〜たんはしんけんなかおでうなずきかえしました。
あとはママさんのおかいものです。み〜たんをデパートのなかにあるこどもスペースにつれていき、
「いい?ここからうごかないでね。30ぷんぐらいでもどってくるから。しらないひとにこえかけられてもついていっちゃだめよ」
ママさんは、み〜たんがほしいものをかってあげればおとなしくしていることをしっているのです。
み〜たんは、かったばかりのおにんぎょうをあたまだけつつみからだしていじってあそんでいました。
「おや?」
そのうちみ〜たんは、まどからみえるデパートのとなりのこうえんのベンチにしょうじょがすわっているのにきがつきました。
「・・・・・・・」
しょうじょがひとりでしたをむいてさびしそうにすわっています。
そのしょうじょは、み〜たんがこのまえデパートにきたときもそこにすわっていました。
そのまえも・・・・・。
そのまえも・・・・・・・・。
み〜たんは、ママさんをほそいめでさがしました。ママさんはいっしんふらんにようふくかなにかをえらんでいます。とうぶんかえりそうもありません。
み〜たんはデパートをぬけだし、そのしょうじょのいるこうえんのベンチのまえにとことことやってきました。
しょうじょはかおをあげません。
み〜たんはしらないかおでしょうじょのまえをよこぎってみました。しょうじょのまえをとおるとき、なぜか、つちの、なつかしいにおいがしました。
それから、ひきかえししょうじょのよこにすわりました。しょうじょはみ〜たんよりもすこしおねえさん、いつつか、むっつくらいにみえます。
「・・・・こんにちは」
み〜たんはおもいきってこえをかけました。
「・・・・・・・・」
しょうじょはむごんでみ〜たんのほうにゆっくりとかおをむけました。
めが、おにんぎょうのようにつぶらで、そのまっくろなひとみはみるものをどうくつのおくへひきこむかんじがします。
「あのね、あたしね、み〜たんていうんだよ」
み〜たんはそういって、ベンチからういているあしをぱたぱたさせました。
「・・・・・・・・」
でもしょうじょはやはりむごんです。むごんのままみ〜たんのうでにかかえられているおにんぎょうをみつめています。
そしていきなりりょうてでじぶんのかみをかきむしりだしました。わたゆきのようなフケがさわさわとおちてゆきます。
「あ〜!み〜たんとおんなじだ!」
み〜たんもかみをかきました。こなゆきのようなフケがにっこうにあたってきらきらとまいおちていきます。
「み〜たんね、かみのけあらうのにがてなの」
ふたりはかおをみあわせて、わらいあいました。
「わたしね、ハナコっていうの。はなちゃんでいいのよ」
しょうじょははじめてくちをひらきました。
「はなちゃんのママは?」
み〜たんがたずねました。
「・・・・・わかんない」
しょうじょはまたうつむきました。み〜たんはなにをいえばいいのかわからず、
「み〜たんのママはね、いまデパートにいるの。これいまかってもらったんだよ」
と、おにんぎょうをさしだしました。
「いいなあ・・・・・・」
はなちゃんは、さびしそうにひとことそういいました。
「み〜たんね、おうちにおにんぎょういっぱいあるんだよ」
とくいげにみ〜たんはいいました。
「はなちゃんのおうちにはおにんぎょういっぱいあるの?」
はなちゃんはさびしげにくびをふりました。そしてむねポケットからちいさなぬいぐるみをとりだしました。
「これだけ・・・。これね、はなのママがね、つくってくれたんだよ。はなのたんじょうびに」
み〜たんはしばらくそのぬいぐるみをみつめていました。
「・・・・・・あー!もぐらだ!」
とつぜん、み〜たんはおおごえをあげました。そのぬいぐるみは、けさみたもぐらにそっくりなのでした。
「そうだよ。もぐらのぬいぐるみだよ。めずらしいでしょ。はなのママがね、いっしょうけんめいつくってくれたんだよ」
「ふ〜ん。いいなあ・・・・」
み〜たんはしげしげときれながのめでそのぬいぐるみをみつめました。するとそのぬいぐるみはりょうてのつめであたまをかくしぐさをします。
「ね、おもしろいでしょ。これ、いきているんだよ」
み〜たんはほんとうにおどろきました。そしてはなちゃんのことがすきになりました。
「はなちゃん、これあげる」
み〜たんは、かったばかりのおにんぎょうをさしだしました。
「え〜、いいの?」
「いいの。み〜たん、おうちにおにんぎょういっぱいあるからいいの。あげる」
「じゃあ・・・・はなちゃんのぬいぐるみとこうかんしよう!」
「え、だって、それ、はなちゃんのママがつくったんでしょう。わるいよ」
「いいの。わたし、はじめておともだちできたんだもん。あげる」
はなちゃんはもぐらのぬいぐるみをみ〜たんにあげるといってききません。
「でもね、そのぬいぐるみがいきてることをだれにもいっちゃだめだよ・・・・」
「・・・・・・・・」
「ミツコ!なにしてるの!そんなところでひとりで!」
そのときです。み〜たんのママがおおごえをあげながらはしってきました。
「ほら、み〜たんのママがきた。はやくぬいぐるみをそのポーチのなかにかくして!」
み〜たんのママがかけよったとき、すでにはなちゃんのすがたはありませんでした。
「あそこからうごいちゃだめだっていったでしょ!」
み〜たんのママははんぶんなきそうなかおでおこっています。
「どうしてそとになんかでたの!じこにでもあったらどうするの!」
ほんとうになきだしてしまいました。
「あのね、あのね、あのね、いま、おともだちとあってたの」
「え?」
「ほんとうだよ。はなちゃんていうんだよ」
「み〜たん・・・かってあげたおにんぎょうは?」
「はなちゃんにあげたの」
「・・・」
ママさんは、ベンチのうしろのかきねをのぞきこみました。
するとそこに、かれたはなたばやおせんこうといっしょにおにんぎょうがよこたわっていました。
つぶらなひとみはねかすととじるようにできているのでしょう。まるでねむっているように。
かきねがじゃまになってみ〜たんからはみえません。
「はなちゃん、かえっちゃったのかな〜」
み〜たんは、まんまるいあたまをきょろきょろさせています。
ママさんはおもいだしました。そこは、2ねんまえにびんぼうなふうふが6さいのこどもをがしさせて、うめたばしょなのです。
こどものなまえはたしか、花子といいました。
ママさんはみ〜たんのてをひいてゆっくりとデパートにもどりました。
とちゅう、み〜たんがふりかえり、わらいながらこうえんにむかっててをふったのですが、そのひとみがいっしゅんびーだまのようにきれいにかがやき、そこにおにんぎょうをかかえながらてをふるしょうじょのすがたがはっきりとうつっていました。
ママさんは、ふりかえることができませんでした。
だい3話『み〜たんのぷ〜ち』
だい4話『み〜たんのどろにんぎょう』
だい5話『み〜たんのぼ〜し』
だい6話『はなぞののみ〜たん』
だい7話『み〜たんのぼ〜けん』
(きままにこうしん)