速報!平成13年度専技試験問題



 みなさんからお寄せいただいた今年の専技試験の問題をとりまとめたものです。もし、掲載されていない専門分野の問題をお持ちでしたら、ぜひ、こちらまでメールで送付してください。


課題 ア、イ

1 土地利用型作物(稲、麦及び大豆)
2 野菜
3 果樹
4 特産作物(工芸作物、雑穀(加工のいも類を含み、大豆を除く。)及び養蚕)
5 花き
6 乳牛及び肉用牛並びに飼料作物
7 豚及び鶏
8 土壌及び肥料
9 病害虫
10農業労働及び農業機械
11農業経営及び生活経営
12農産物流通及び食品加工
13農村振興
14男女共同参画
15農業を担うべき者の育成
16普及指導活動

共通課題 ウ

土地利用型作物

課題(ア)
1 農業の持続的発展を図るために,環境と調和のとれた農業生産(環境保全型農業)を行うことが求められています。稲作,麦作,大豆作の中から1つを選び,環境保全型農業をねらいとする生産技術の要点と問題点,今後開発すべき技術的課題について述べなさい。

2 次の事項の中から5つを選び,それぞれについて解説しなさい。
 1)有機農産物の日本農林規格(有機JAS)
 2)緑の革命
 3)遺伝子組換え作物
 4)ハイブリッドライス
 5)水稲の要水量と用水量
 6)小麦の穂発芽
 7)製めん適性
 8)国産大豆の用途と品質特性
 9)根粒と根粒菌

課題(イ)
 稲作,麦作,大豆作の中から1つを選び,あなたの県(都道府)における生産技術の特徴と普及状況を概説しなさい。
 また,「食料・農業・農村基本計画」では,食料の安定供給を確保するために消費者・実需者により国内産の農産物が選択されるよう,品日ごとに生産性の向上,品質の向上等の課題を明確にし,農業者とその他の関係者が積極的に取り組む必要があるとされています。この観点から,県としての生産努力目標とそのため当面解決すべき技術的課題を列挙し,その中で最も重要と考える2つを選んで
対応策を述べなさい。

(データ提供:天使さん)

野菜

課題(ア)
1 アブラナ科野菜を属、種、亜種またはグループ別に、さらに利用部位別(葉・茎・花序・根など)に分けて、通常野菜名(例コマツナ)を列記した表を作りなさい。属、種、亜種またはグループの植物学名が分からない場合はそこを空欄か仮の名称にして表をまとめなさい。

2 現在市場でキュウリ価格に影響している果実諸形質とそれらに及ぼす栽培方法及び品種の効果について、またこれと関連してキュウリ生産の将来方向についてのあなたの考えを述べなさい。

3 被覆資材(マルチを含む)で要求される光線(紫外線及び赤外放射を含む)透過・反射特性を使用目的別に述べなさい。

4 次の事項について野菜生産との関連を中心に簡潔に説明しなさい。
(1)指定野菜
(2)脱春化(デバーナリ)
(3)水ポテンシャル
(4)ミナミキイロアザミウマ
(5)マイクロチューバ(MT)

課題(イ)
 あなたの県(都道府)で特に輸入野菜の増大によって生産低下の著しい野菜種目(複数可)をあげ、生産現場としてどのように対処するべきか、あなたの地域の実情に即して述べなさい。

(データ提供:上田さん)

果樹

課題(ア)
1.果樹の施設栽培について、その意義と問題点を述べ、さらに技術上の改善点を述べなさい。

2.次の用語等のうち、5題を選び、それぞれ説明しなさい。
(1)ゴールド二十世紀
(2)花粉銀行
(3)頂芽優勢性
(4)ウインドマシン(防霜ファン)
(5)隔年結果
(6)柿の脱渋
(7)フェロモントラップ

課題(イ)
 果樹の生産力が、他の地域と比べ非常に低い地域があるとする。この地域の生産力を上げるようにするには、どうしたらよいか。対策を立て、それを段階的に述べなさい。ただし、果樹の種類は任意とする。

(データ提供:大原さん)

特産作物

課題(ア)
次の用語のうち(1)〜(5)の5語および(6)〜(15)または(16)〜(21)のうちの5語を選び,その意味および意義を説明しなさい。
(1) 根圏環境
(2) 葉面積指数
(3) 低投入持続型(LISA)農業
(4) 生物農薬
(5) 機能性成分
(6) 焼畑農法
(7) 景観作物
(8) 抗酸化作用
(9) 硝酸化成作用
(10) 半醗酵茶
(11) ソバ品種の生態型
(12) ナタネの抽苔・開花
(13) 有色サツマイモ
(14) 有害性非糖分
(15) サトウキビの収穫早期化
(16) 一春一夏収穫法
(17) 多回育
(18) 責め桑
(19) ヒシモンヨコバイ
(20) ロびき試験
(21) 地域ブランド化

課題(イ)
 あなたの県(担当地域)における農業の現状と問題点およびそこでの工芸作物(雑穀,加工用いも類を含む)または養蚕の位置付けと期待される役割並びにその技術的課題について述べなさい。

(データ提供:天使さん)

花き

課題(ア)
1 バイオテクノロジーを利用して、育種したい花きの品目を1、2例あげ、その理由、方法などを説明しなさい。
2 次の事項について説明しなさい。
(1)わが国でキクの生産量が最も多い理由
(2)フラボノイドとカロチノイド
(3)DIF
(4)シード バーナリゼーション
(5)雌雄同株と雌雄異株
(6)施設内土壌の消毒方法
(7)花きの実用的分類

課題(イ)
 あなたの所属する地域(または都道府県)で、花き園芸に関連する問題点を大きい順に3つあげ、その対応策を考えて下さい。

(技術と普及2001年12月号より)

乳牛及び肉用牛並びに飼料作物

課題(ア)

1. 次の3課題の中から1課題を選んで答えなさい。
(1)わが国におけるサイレージ(ヘイレージを含む)調製技術について、その発展過程と現状、今後の課題について述べなさい。

(2)自然循環型畜産を進める上で、日本型放牧(地域に合った日本独自の放牧)の推進が重要な課題であるが、それぞれの地域に適すると考えられる放牧形態を取り上げ、その特徴と技術的問題点を述べなさい。

(3)最近、和牛(黒毛和種)の遺伝的多様性が失われてきたとの指摘があるが、その現状、問題点、改善のための対応策を述べなさい。

2. 次の6つの用語の中から4つを選び簡単に説明しなさい。
(1) スターリンク
(2) 稲発酵粗飼料
(3) ゆめそだち、ハルサカエ、ニオウダチ(いずれか一品種を選んで答えなさい。)
(4) 肉用種雄牛広域後代検定
(5) 搾乳ロボット
(6) 狂牛病


課題(イ)
次の3課題の中から1課題を選んで答えなさい。
(1)昨年4月に農林水産省は「飼料増産推進計画」を策定しましたが、この計画の基本的な考え方について述べるとともに、飼料増産についてのあなたの地域での実態及びあなたの指導事例を通じて得られた成果、課題と今後の指導方向について述べなさい。
(2)今後、畜産が継続的に発展するためには、自給飼料の安定確保、家畜糞尿処理等の面から、耕種農家(稲作、畑作等)等地域との連携が重要なカギを握ると考えられます。これについて、あなたの地域での実態及びあなたの指導事例を通じて得られた成果、課題と今後の指導方向について述べなさい。
(3)牛群検定事業によって、乳牛の改良が進められ、顕著な効果が認められていますが、牛群検定事業のあなたの地域での実態及びあなたの指導事例を通じて得られた成果、課題と今後の指導方向について述べなさい。

(データ提供:中さん)

豚及び鶏

課題(ア)
次について4問を選び、簡潔に説明しなさい。
1) フィターゼ添加飼料の環境負荷物質排泄量低減効果
2) 鳥インフルエンザ
3) 豚の呼吸器病発生の現状と対策
4) 銘柄豚の開発の現状と普及対策
5) 破卵の発生とその流通上の課題
6) ウィンドウレス鶏合の構造と機能
7) 肉豚出荷頭数の季節変動の解消方策

課題(イ)
 あなたの県 (都道府)における養豚または養鶏のいずれかを選び、現状を概説しなさい。さらに、国際化および産地間競争に対応して、今後とるベき重要な技術的改善方策について、あなたが従事した技術指導、農業教育または試験研究の経験に基づき論じなさい。

土壌肥料

課題(ア)
1.土壌養分と肥料養分の、作物生産上における役割と相互関係について述べなさい。
2.次の用語について、土壌・肥料専門家の立場から具体的に説明しなさい。
1) 団粒構造
2) 塩基バランス
3) 窒素固定菌
4) 土壌の有効水分
5) アロフェン
6) 肥料の利用率
7) 液状複合肥料
8) コーティング肥料
9) 湿害
10) 地下水汚染

課題(イ)
 あなたの県(都道府)において、施肥技術に関して、今後どのような観点のもとに展開を図っていく必要があると考えますか。あなたがこれまでにあげた研究あるいは普及における成果とできるだけ関連させて、その理由を述べなさい。

(データ提供:きむとらさん)

病害虫

課題(ア)

 植物防疫、農薬に関する次の用語について、簡潔に説明しなさい。

1.害虫の交差抵抗性
2.LD50とLC50
3.微生物農薬
4.ドリフト軽減散布技術
5.スルフォニル尿素系除草剤
6.交信攪乱法
7.ADI
8.残留農薬基準と登録保留基準
9.メトキシアクリレート系除草剤
10.土壌線虫の検診法
11.経済的被害許容水準
12.果樹カメムシ類
13.絶対(活物)寄生菌
14.残留農薬のマーケットバスケット法
15.投下成分量の低薬量化
16.有害動植物(植物防疫法上)
17.永続伝搬性ウイルス
18.コンピュータ利用の発生予察
19.繁殖毒性
20.付着器と吸器

課題(イ)

 昨年3月、食料・農業・農村基本計画が決定され、食料自給率の目標や総合的かつ計画的に講ずべき施策などが定められています。その一環として、「農業の自然循環機能の維持増進」が謳われていますが、一方では、食料自給率の低下が懸念され、その向上を目指して、「国際競争力の強化」が求められています。
 このような状況を背景として、あなたがそれぞれの地域で病害虫防除に取り組む場合、どのように指導し、実施して行くのか、具体的な防除手段とその経済的評価などを含め、課題解決のための方策を述べてください。

(データ提供:砂池さん)

農業労働及び農業機械

課題(ア)
1 次の5問より3問を選択して、解答しなさい。
(1)静的筋労作とは何か。その特徴を説明し、静的筋労作に伴う労働負担の軽減対策を述べなさい。
(2)ある特定の職業に従事する事によって発生する職業性疾病は、作業環境や作業条件によるものが考えられる。農業従事者にとって、それぞれの要因により発生する疾病とその原因について説明しなきい。
(3)農業労働の他産業と異なる特徴を述べ、労働改善を図る上での留意点を簡潔に説明しなさい。
(4)耕転作業は、反転耕(プラウ耕、すき耕等)と操土耕(ロータリ耕等)に大別される。それぞれの技術的・経済的特性と適応場面を列記し、我が国において特に水田作を中心にして攪土耕が広く普及している理由を簡潔に述べなさい。
(5)高性能農業機械の負担面積を増大するための対応策、留意点等について知るところを簡潔に述べなさい。
2 次の用語の中から4問を選び、200字程度で説明しなさい。
 1) アレルギー性疾患
 2) 労働保険
 3) 農業労働の季節性・異種継起性
 4) 蓄積疲労
 5) 熱中症
 6) フリッカー値
 7) 農業機械銀行
 8) ミニマムティレッジ
 9) 部分耕移植
 10) 除湿乾燥
 11) 安全フレーム・キャプ

課題(イ)
 次の課題の中から2問を選び、解答しなさい。
1 今後の農村の活性化、農家経営の発展を図るためには、労働力の確保、効率的な活用が重要である。そこで農業労働力調整システムの必要性、成立条件、メリットについて、取り組み事例を上げ、説明しなさい。
2 機械化・施設化を進める上では快適な労働環境条件を実現することが重要である。あなたが取り組んだ事例を中心に、快適な労働環境条件実現のための主要なポイント、具体的な行動とその成果、残された問題点について述べなさい。
3 あなたの地域(都道府県)における中山間地農業の機械化の課題を整理し、解決または改善するための方法、問題点、展望等について考えていることを述べなさい。

(技術と普及)

農業経営および生活経営

課題(ア)

下記の1.および2.から1つを選んで、それぞれの2問について解答しなさい。

1.
(1)農業経営の複合化・多角化の意義と問題点について説明し、その地域農業における位置付けについてあなたの見解を述べなさい。
(2)農業改良資金の資金需要拡大に向けての活動方策について、あなたの見解を述べなさい。

2.
(1)農山漁村女性の経済的地位の向上は、男女共同参画型農山漁村社会の基本的課題です。特に遅れている女性の資産形成について具体的事例をもとに支援方策を述べなさい。
(2)農山漁村女性の仕事と子育ての両立支援対策について3点をあげ、それぞれについて説明をしなさい。

課題(イ)
 家族経営協定の経営改善における今日的意義と推進方策について、あなたの見解を述べなさい。

(データ提供:岡崎さん)

農産物流通及び食品加工

課題(ア)
1 記の事項を簡潔に説明しなさい。
(1)セーフガード
(2)コーデックス
(3)国民栄養調査
(4)地産地消
(5)メイラード反応(アミノカルポニル反応)

2 次の(1)、(2)、(3)、(4)の中から2問を選び答えなさい。選んだ問いについては@−Bのすべてに答えること。
 (1)食品の品質保持に関する以下の事項についてその原理と適用方法を説明しなさい。
   @水分活性
   A機能性包装材
   B脱酸素剤 (酸素吸収剤)
(2) 野菜に見られる以下の現象の理由として考えられることを述べよ。
   @シソの色調がpHにより変化する。
   Aジャガイモを酢水で煮るとシャリシャリした口触りになる。
   Bダイコンに塩をふるとダイコンから水がでてくる。
(3)以下の米の加工品についてそれぞれの特徴と製造方法について述べよ。
   @発芽玄米
   A無菌米飯
   B冷凍米飯
(4) 油脂に関する以下の項目について説明しなさい。
   @HLBとエマルション
   A水素添加
   BPOV(過酸化物価)と揚げ油の劣化

課題(イ)
 あなたの地域で今後特に力を入れて需要拡大を図りたい素材を1つ取り上げ、以下について解答しなさい。
(1)その素材(農林畜水産物)を取り上げた理由、
(2)現在の生産、利用および加工状況、
(3)需要が期待通りに広がっていない理由、
(4)問題点を解決する、または現状を改善するための方策。

(技術と普及)

農村振興

課題(ア)
1 今までに活動対象としてきた1つの集落をとりあげ、環境共生型の整備を進めるにあたって、重要な地域資源を3つ以上挙げて、整備の留意点を具体的に述べなさい。
2 全国で環境保全型農業への取り組みが始まっていますが、環境への負荷を出来るだけ減らした農業の普及には、その趣旨に賛同する活動グループの存在が不可欠です。農山村の住民が、自主的に自分たちの創意工夫を生かす活動グループの結成方法について、望ましいアクション・プランを具体的な事例をもとに述べなさい。
3 次の用語の中から5つを選択し、簡潔に説明しなさい。
 @グリーン・ツーリズム
 A地産地消
 Bファーム・イン
 C中山間地域等直接支払い制度
 Dグラウンドワーク
 Eワークショップ
 F農振白地地域

課題(イ)
 交通量の比較的多い幹線道路沿いにある集落の空き地(1,000m2)を利用して、地元農家の人たちが農産物直売所をつくることになった。施設の敷地内配置と基本計画は既に別図のようにできている。施設面積は100m2であり、売場、貯蔵庫、トイレ、休憩スペースなどを備えている。施設の形態は木造平屋建てで、大きな方形の屋根がかけられている。しかし、広場−1および広場−2の計画がまだできていない。そこで、地元農家と訪れた人々とが交流できる魅力的な広場を、次の条件により提案しなさい。
@広場−1は車を乗り入れられるが、広場−2は乗り入れできないことを考慮した地面とする。地面を覆う素材に意を用いること。
A花壇、植栽、池、バーゴラ(つるなどをはわせた日よけ棚)、遊具、ベンチ、野外卓その他自由に発想して配置すること。
B直売所の他に別の施設を新設ないし増設してもよいが、平面計画は不要。建物の外形と用途がわかればよい。
C農家と来訪客が交流できる具体的な場の提案が望ましい。

(図についてはこちらを参照)

 提案内容は以下の通りとする。
@基本計画に即した配置計画図を描きなさい。
A計画した個々の施設・装置の具体像(使い方を含む)を、部分スケッチまたは簡潔な説明文で表現しなさい。配置計画図の該当する施設・装置をマークして、そこから図面の余白に引き出し線をのばして表現してもよい。物的な計画だけでなく、それが交流に資する魅力的なものであることを説明すること。
B図面は全てフリーハンドでもよい。

(技術と普及)

男女共同参画

1 「男女共同参画社会基本法」の目的について説明しなさい。

2 次の用語を200〜300字で説明しなさい。
(1)ジェンダー
(2)選択的夫婦別氏制度
(3)アンペイド・ワーク
(4)WID(開発と女性)
(5)ドメスティック・バイオレンス

課題(イ)
1 女性農業者が議会・行政・農協・農業委員会などの政策・方針決定過程に参画することへの関心は高まっているが,現実には十分に進んでいない。その理由および推進するための方法を,具体的に述べなさい。
2 男女共同参画を進めるにあたっては,女性ばかりでなく男性をも視野に入れる必要がある。そこで,農村において男女共同参画を促進するために,「男性農業者」を対象とした場合に,どのような課題があり,どのような普及方法が必要となるのか,具体的に述べなさい。

(データ提供:天使さん)

農業を担うべき者の育成

課題(ア)
 近年各地で、地域の振興と地域社会を担う人づくりを一体化して捉え、地域社会をクリエイティプな生涯学習の場として組織していこうとする運動が起きてきている。このような動きの中では、エコミュージアムやグラウンドワークなどの新しいコンセプトが注目されるようになっている(資料参照)。地域社会を総体として学習資源化、学習空間化して行こうとする方向で進められている地域づくりの動向は、地域社会において「農業を担うべき者の育成」を考える立場にあるものにとっても看過し得ない内容を含んでいるものだといえよう。 「農業を担うべき者の育成」の任にあたる者としての立場から、資料を参考にしつつ、次の2点について論述しなさい。
(1)資料で例示されている事例や身近な例などを踏まえ、地域社会に現れている新しい動向について論じなさい。
(2)「これからの地域づくりと農業を担うべき者の育成」をテーマとしてあなたの考えを論述しなさい。

図−1 エコミュージアム概念図

図−2 グラウンドワークの仕組み

(資料一白石克己他編、『クリエイティブな学習空間をつくる』ぎょうせい、2001年より)
 グラウンドワークやエコミュージアムなどに見られるように、学習の場か、施設を核としつつも施設外に拡散し、自然環境や人間関係、社会集団などの社会環境、施設そのものなど、地域の総体を学習資源化、あるいは学習空間化していこうとする流れが見られるようになった。施設は、それを取り巻く地域社会と境界をなくし、より広範に学びの「空間」と化して、学習活動の場は地域社会に拡散していく。
 特にエコミュージアムのコンセプトを取り入れた地域づくりは、すでに全国各地で多彩に進められている。エコミュージアムは、フランスで始まった、自然および文化遺産などを現地・地域において保存・育成・展示することを通して、地域社会の発展に寄与することを目的とした博物館の理念である。それは、住民の運営参加(研究、展示など)を原則とした管理・運営や地域特性(自然特性、文化特性、産業遺産等)を明らかにし、さらに地域に関する研究所として住民と環境に関する研究に貢献するとともに、地域を学ぶ学校としての役割を担っている(図−1)。いわば地域全体を1つの博物館と考えるのである。このように、博物館という社会教育施設を理念として継承しつつも、学習空間を地域社会全体に拡散させ、そこでは生活と学習が一体化し、学びがくらしの中に定着していく基盤が整備されている。また住民自身にも、生活の中で調査研究し、地域を学ぶという学習の循環が期待されている。既存の博物館では、調査研究は学芸員固有の業務である場合が多いが、エコミュージアムでは、運営を含めて住民が主体として関与しており、学習における役割転換がはかられている。
 エコミュージアムは、地域全体が学習空間化するコンセプトであり、それはネットワークによってより広範に、しかも学習が効果的に拡張していくことを可能とする仕組みとなっている。博物館だけでなくまち全体を図書館ととらえるまちづくりや、高知県大方町の砂浜美術館のように、施設ではなく自然の美しい砂浜で美術展を開催するなどの事業戦略によって、地域資源を学習空間化していくことが試みられている。
 グラウンドワークは、イギリスで始まった「地域住民」「行政」「企業」の合意形成を基磐としたパートナーシップによる地域の環境改善運動である(図−2)。そして、それは地域社会を活性化させ、学習が地域社会のアクティブな変容の中に拡散していると見ることができる。
 その特徴は、自然や景観の保護というより、汚れた場所や荒廃した場所を快適な生活環境に改善・創造することや、既存の社会システムでは取り残されやすい問題にターゲットを絞り、地域を再生することにある。また、話し合いのプロセスを大切にする説得的手法により、地域の環境づくりに地域住民や企業、地方自治体など社会のすべての構成員がパートナーとして参加・協力し、促進することをめざしている。これまで圧倒的な権限と財源によって公を体現してきた行政と対等な立場で住民が参画し、協働して地域の環境改善を進めている。ここでは合意形成をめぐって多様な学習が必要とされ、地域づくりの活動の中に学びが吸収され、組み込まれている。したがって、市民が社全的責任を実現するプロセスでは、学習は不可欠なものであり、学びのない社会参加はあり得ないのである。
 エコミュージアムやグラウンドワークの事例は、地域に関する豊かで多様な「学習」で培われた見識、公共性、自治能力を確保し、成熟した住民の主体的な参加、参画そして行政や企業との協働の方向性を示唆している。

課題(イ)
1 近年における我が国の農業・農村は、食料供給機能の側面では、自主流通米が増加し、生鮮野菜までが輸入されるなど、国内外での競争が激化している。その一方では、遺伝子組み換え食品が話題になるなど技術革新が目覚しい。また、食生活の変化は、家森幸男氏(元京都大学大学院教授・WHO循環器疾患予防国際共同研究センター長)が、「健康状態は世界中で悪くなりつつある。情報化時代で食生活が平均化かつ西洋化しており、各国、各人種それぞれの土地にもっとも合った伝統的な食事が地球上から失われようとしている。今、伝統食の復興に努め、次の世代へ伝えなければならない」と指摘するように、日本食・伝統食離れが進み、幼、少年期における伝統食の食歴形成の必要性が叫ばれている。
 食料供給以外の公益的機能の側面では、都市・農村交流の進展にみられる居住空間機能が重視されている。また、「教育の語源は動植物を育てることに由来する」といわれ、体験学習の機会増加にみられる教育機能が重要性を増している。更には、園芸療法にみられる健康の維持増進機能が注目されている。このように多くの機能に期待が寄せられており、国民に対する農業の理解促進も求められている。
 従って、我が国農業を担う人材の育成を考えるとき、農業・農村のもつ多面的な機能を視野に入れて農業者が備えるべき能力を追求していく必要がある。
以上の状況を踏まえて、あなたの活動を分析し、以下の開いから1問を選び答えなさい。
(1)あなたの考える望ましい農業者像はどのような姿か、その理由をあなたが活動する地域の農業・農村の実態に沿わせて具体的に述べなさい。
(2)あなたが描く望ましい農業者の条件をあげ、あなたの活動体験から、そのような農業者が育った過程、または、そのような農業者に育つよう働きかけた過程を教育的視点から述べなさい。

2 リーダーシップ機能は達成機能(P)と維持機能(M)に分かれるが、地域農業のとりまとめ役がこれらの機能を果たす上で、あなたが所属する指導機関・団体等が行うべき指導支援について、農村リーダーの特徴を踏まえて具体的に述べなさい。

普及指導活動

課題(ア)
1普及指導活動の内部評価と外部評価の意義及び評価方法について述べなさい。
2農業・農村におけるリーダー育成の意義の育成上の留意点を述べなさい。
3次の用語を簡単に説明しなさい。
(1)生涯学習
(2)パワーポイント
(3)普及協力委員
(4)集落協定
(5)セーフガード

課題(イ)
1地域のニーズ及び農政の基本方向を踏まえた地域課題の推進にあたって、普及指導活動上、特に留意すべき点について述べなさい。
2都市と農村の交流を促すうえで、どのような普及活動が望ましいか。あなたの考えを述べなさい。

共通課題 ウ

1.あなたの地域(都道府県又は活動地域)の農業または農村生活上の課題を指摘するとともに最も重要と考えられる課題をひとつ取り上げ、どのような普及活動が望まれるか、具体的に述べなさい。

2.専門技術員が果たすべき役割を具体的に述べるとともに、改良普及員の資質向上を図るうえで重要と考える事項について述べなさい。


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