第36話 コンセント




 語学の授業では、音声教材は未だカセットテープが主流である。よって、教師連中は、重たいカセットデッキをえっちらおっちら教室まで担いで行くのである。
 もちろん、昨今では、教室というか教卓にカセットデッキが備え付けられているところも多い。しかし、最新設備を誇る教室の装置に、カセットだけがない(CDやDVD、果ては資提装置でパソコンの画面をスクリーンに映し出せるのに・・・)ところもあり、ちょっと悲しいものがある。

 さて、例によって重たいカセットデッキ(Sonyの真四角なもの、というと、あああれか、と思う方もいるかも知れない。聞いた話では、けっこう高価なものだそうである)を運んで、教卓に置き、出席等の事務手続きを済ませてから、さあ、とコンセントを探す。(これについても、古い教室では形が合わなかったりする場合もあるのだが)
 ところが、すべて使用されていたのである。

 あれ?こっちは黒板消しクリーナー?そしてこっちは?何のコード??と延長コードを片手にきょときょとしていると、

「あ、すみません」

と、学生が飛び出してきて、コードを回収した。よく見ると、携帯電話の充電器だった。そう言えば、充電器を持ち歩いている学生を、これまでも見かけていたのだった。
 そうか、そういうことだったのか、と腑に落ちたのである。


(2004/07/28)