- 室堂での登山届提出時に係りの人から「平蔵谷は上まで雪がつながっています。ただし最新の情報は剱沢の派出所で確認すると良いです」と言われた。ザックにピッケルを差して歩き出した。雷鳥荘の手前では歩荷の人達10人程とすれ違った。雷鳥沢キャンプ場まで下ると観光客はいなくなった。
- 別山乗越への登りは暑かった。上部ではコバイケイソウがたくさん咲いていた。別山乗越からは剱岳が良く見えた。チングルマやハクサンイチゲを見ながら剱沢キャンプ場まで下った。手続きをしてテントを張った。この日のテントは約160張だった。
- 翌朝は暗いうちに出発した。剱沢雪渓に出ると明るくなった。男性がアイゼンの準備をしていた。「どこを登るんですか」と聞くと、長次郎谷との事だった。平蔵谷を登る事を伝えると、「前回は、長次郎谷を登った後、平蔵谷を下った」と話していた。
- 平蔵谷出合では、脇の源次郎尾根取付を5人組が登り始めていた。平蔵谷を登る二人組の先行者が見えた。二人組から15分ほど遅れて平蔵谷出合を出発した。最初のうちは少し狭い谷だった。所々に石が落ちていた。急な登りで少し斜行しながらアイゼンを効かせて登って行った。風が涼しかった。
- 谷が広くなると中州が有った。ちょうど休憩していた先行の二人組が出発したところだった。先行者の出発後5分ほどで中州に着いた。一休みした。
- 休憩後、再び雪面を登って行った。やがて急斜面で雪面が狭まっている所に着いた。雪の割れ目が少し見えた。先行者は雪面左側の岩混じりのガレた斜面を登って行った。雪面を登り続けられそうだったが、無理をしないことにして、同様にガレた斜面を登ることにした。アイゼンを外し一休みして携帯電話をかけた。休憩後、ガレを登って行った。途中で右手の雪面を振り返ると、下からは分かりにくかったスノーブリッジが見えた。気温が上がり溶けた水がしたたり落ちていた。ブリッジの上を歩けば雪面が割れて危険な状況だったので、ガレを登って良かったと思った。
- ガレはやがて終わり雪面になった。再びアイゼンを付けて登って行った。上方には稜線を歩く登山者が見えた。雪は次第に柔らかくなっていった。「平蔵のコル」のすぐ下まで来ると上から単独行が下りてきた。「雪はつながっていますか?」と聞かれたので「一箇所スノーブリッジになっていて通れません。下からは分かりにくいけれど上からはスノーブリッジがよく分かります。そこさえ迂回すれば、後は雪がつながっています」と教えてあげた。
- 登りつめた所は「平蔵のコル」のちょうど「カニのタテバイ」の登り口だった。アイゼンを外して休んでいると、登山道を登って来た男性から「ソロで登って来たんですか。すごいですね」と言われた。
- 本峰への往復は省略して下り始めた。重い靴のため岩場の下りは苦労した。次々と登山者に抜かされた。剱山荘手前ではコバイケイソウがたくさん咲いていた。剱山荘から剱沢キャンプ場までの間では雪渓が有った。
- テントを回収して室堂に向かった。別山乗越への登りは暑かった。雷鳥沢への下りでは足の裏が痛くなり苦しんだ。雷鳥沢キャンプ場まで来ると曇ってきて雷鳴が聞こえてきた。幸い雨が降る前に室堂に到着した。