3月29日


U-23日本代表×U-23ニュージーランド代表
(国立競技場)
キックオフ:19時3分、観衆:36,467人
天候:曇のち晴、気温:14度、湿度:49%

U-23日本代表 U-23ニュージーランド代表
4 前半 2 前半 0 0
後半 2 後半 0
18分:中村俊輔
40分:高原直泰
58分:高原直泰
63分:小島宏美
 

先発メンバー
交代出場
46分:小島宏美(平瀬智行)
55分:藤本主税(本山雅志)
64分:北嶋秀朗(高原直泰)
68分:西 紀寛(市川大祐)
 昨年11月のタイ戦以来のゲームとなった五輪代表は、力の差が圧倒的なニュージーランドを相手に試合開始から一方的に攻め続けた。前半18分得た直接フリーキックを、本山雅志が一度位置をずらしてから中村俊輔がそれを左足でシュート。ゴール右隅にこれが決まって先制した。

 前半40分には、DF中田浩二が放ったロングシュートが相手DFに当たり、このこぼれ球を高原直泰が胸トラップから決めて、2−0とした。

 後半は先発平瀬智行に代わって入った小島宏美が豊富な運動量とスピードを活かして、日本チームの攻撃全般に勢いを与える。58分には高原、また63分には小島が得点を加え、ここで4−0。試合を決めた。

 その後は、試合が中だるみし、また35分過ぎからはDFの凡ミスも目立つなど、疲労のせいか集中力をやや欠いてしまった。

 ニュージーランドは、オセアニア予選でバヌアツ、パプアニューギニアに勝ち、現在、五輪出場権をかけて南アフリカとのプレーオフを戦うための強化中で、大学生が4人含まれているチーム編成だった。

Masahide Tomikoshi/
TOMIKOSHI PHOTOGRAPHY
トルシエ監督「きょうは8割以上、私たちがボールを保持したために、守備、フォーメーションなどについて語ることは難しい。きょうのゲームの価値があったとすれば、自分たちの現在のレベルをしっかりと認識できたこと、それと、そのことに自信を抱けたことだと思う」

主将を務めた松田「もう少しフィードをしっかりすることを課題にしていたが、後半の最後のほうには凡ミスをしてしまった。あれは許されないミスだと思うし、きょうの試合自体、いいとか悪いとか言うような試合ではなかった。だから、ミスを深く反省したい」

観戦した釜本邦茂・強化推進本部長「相手とのレベルが違っていた。それでも前半はセットプレーと相手のミスからの得点で、やはり最後の(フィニッシュ)ところで落ち着かないのが気になる。相手の動きをもっと見てからボールを中に放り込まないと。中村のキックもいいが、右から何人か飛び込んでいるにもかかわらず、(ボールが)流れている場面があった。こういう相手なのだから、もっとしっかりと形を作っていかなくてはならないし、相手にひかれた時にどうするか、それはチームの練習の中でもちゃんとやっていない。ラスト10分は、観ていたお客さんも物足りなさを感じたのではないか。4月の日韓戦は、A代表だし身体能力も違うので、また違った強化の面が観られるはずだ」

「フリーキックの中村、と呼ばれたくない」

Masahide Tomikoshi/
TOMIKOSHI PHOTOGRAPHY
 あれだけフリーで動けるスペースをもらえば、今の中村の技術をもってすれば、多くのことが達成されるだろう。
 試合そのものについては「きょうは疲れもあったから、後半はミスもしていた。そういう中で結果は出せたということを収穫にする」と、アバウトな感想を口にしていたが、やはりプレーのディテールになると、かなり細かいレベルでの目標設定と課題を自分自身に課していたようだ。

 前半のフリーキックは、中村の力を存分に見せるものだった。中村はそれを「アルディレス(横浜監督)の助言のお陰」と説明する。
 直接フリーキックをもらった位置は、ゴールから約25メートル程度の地点、絶好に見えるポジションも、中村にとってはゴールを直接狙うには難しいポジションだった。「普段なら、どんなにうまく回転させて蹴っても入らない位置」を、中村は監督が言っていた「ちょっと動かすだけで絶好の位置にできる」という、細かいイメージを与えてくれる助言を思い出したという。

 そこで、本山と入念に相談している。
 本山も「ちょん蹴り、というような気安い感じではなくて、非常にしっかりと、何センチ、どの角度で動かそうか、という相談だった」と話す。
 打ち合わせ通り、数十センチ動かしたボールを中村は右隅に決めた。
「ほんのちょっとのことですが、わずか10センチ右にボールを動かしても、GKは絶対に重心を動かします。そこを狙った」と、試合後も冷静に振り返っていた。

 こういうことは、フリーキックについてのみの姿勢ではないのだろう。試合後のミックスゾーンでは丁寧に答えていたが、輪を離れるとふと笑った。
「フリーキックだけの中村、と言われたくないですからね。ぼくは仲間を活かすプレーを考えていきたい。五輪チームは戦術も合ってきたし、中も外もできる選手が大勢いる。全員が司令塔ですから」。

「大人気ない VS 叫び続ける」

Masahide Tomikoshi/
TOMIKOSHI PHOTOGRAPHY
 28日の記者会見で、「日本協会の時代遅れの日程のために、私はもはや不要だろう。いくら言っても日程を調整してもらえない」と、不満をぶちまけたトルシエ監督の発言の波紋が注目された。

 釜本副会長は、「大人気ない」と一言。これまでも何度も会合を持って、特に監督が熱望したツーロン(フランス)での国際試合に五輪代表を遠征させることについては、香港、マカオで2度話していると説明した。

「前から聞いていた話でもあるし、アジアカップの時(2月)に説明し、彼も納得したはず。それで彼自身がどう思ったかは別としても、代表監督としてなんで今さら、我々がまったく取り合っていないかのような発言をするのか、これから聞いてみたい」とした。

 この件についは、過去にも似た事例はあり、またか、といった反応が多い。

「日本に来る時にも、もちろんJリーグの事情から何から合意した上で引き受けてもらったと思っている。時々、何か突然、それもみなさん(報道陣)に話し出す。そもそも外国監督でも日本人監督でも日程は常に問題にはなっている」(川淵チェアマン)

「自分たちとの話し合いでは、そんな話(協会のトップと話していないなど)したこともない。代表監督をないがしろになんてするはずがないじゃないか」(木之本・強化本部副部長)。

 実際に、連絡が密というほどでもないが、コミニケーション不足と言えるほど不足していたわけではない。岡野会長は月に一度、必ず話し合いを続けてきており、「トップと会えない」というトルシエ監督の不満も、矛先が不明だ。岡野会長はこの日も、「(何度も話しているが)私は聞いていない。伝聞には答えられない」とした。

 代表の強化日程は、過去のどの監督よりも確保されている(W杯の98年はのぞいて)点も事実だろう。
 一方監督は会見に先立って、いつも通りロッカーを訪問した岡野会長、大仁技術委員長、小倉副会長とも会い、「我々は団結しよう、と言われた。それは心強いと感じた」と話し、「しかし、日本が今後成長する上で日程は重要な問題。FIFAも今、世界各国のリーグに対して、日程を統一するように話をしているし、世界的な過渡期にある。日本はW杯の開催国でもあるのだから、こうした状況に早く、積極的に対応するべきだ。私はこのことについて、叫びをあげ続けなくてはならない」と、試合の感想は全体の2割、のこる8割を日程と、特にフランスのツーロンになぜ行けないのかについて、約40分語った。

 監督の不満は、こうした漠然とした日程問題ではなく、もっと具体的に「マッチ・メイク」にぶつけてみたらどうか。
 この日のニュージーランド戦は、「強化試合」である。しかし、選手からも「このチーム結成後、おそらくもっとも手ごたえのない試合」という声があがるほど、レベルの差があまりにもありすぎた。
 試合には収穫が必ずあるが、五輪イヤーの最初の試合、強化にとっても重要な試合のマッチメイクとしては、いささかお粗末であった。

 昨年の5月に豪州と親善試合を行ったが、こちらが今年のゲームにふさわしく、ニュージーランドはむしろ昨年。日程が苦しいのは苦しいで理解できるが、ならば、どこと、いつ、どんな意味で試合を組むかはもっと慎重に、またしたたかに練るべきだろう。
 昨年はブラジルと3月31日、今年はニュージーランドと29日。
 年度末の道路工事ではないのだから。

短信:ペルージャのガウチ社長が試合を観戦。「今回は本気で日本人を獲得しようと考えている。3人くらいを候補にしている」と意欲を見せていた。

試合データ
日本   ニュージーランド
24 シュート 4
8 GK 20
11 CK 1
15 直接FK 17
3 間接FK 0
3 オフサイド 0
0 PK 0

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