V 潜伏睾丸

 陰嚢中に−側または両側の睾丸をふれぬ症例は新生児に時としてみとめるが(1%程度,末熱児は頻度が高い),ほとんどが自然に下降するのでI歳までは放置してよい.鼠径部に睾丸がふれるinguinal testisも治療の対象とならない.母親に入浴時,陰嚢の緩している際に注意深くふれてみることを教え,1カ月毎位に来院せしめて触診を行う.1年をすぎても両側の睾丸をふれぬ場合にはhumanchoionic gonatoin(HCG))1,000単位を2−3日毎に計10回筋注する.etactile testisにはこの処置によりほとんどふれるようになる.HCG無効の場合,両側性の場合は泌尿器科に依頼し,2−6歳位の間に睾丸固定術を行う.鼠径へルニアを合併するものは1年以後に手術をすすめる.片側性で−方を明らかにふれる場合は5−6歳まで放置し、HCG療法を行ない,下降しない場合は一応手術をすすめる.ただしこの際は家族の希望を考え,手術を嫌う例では思春期まで延長してもよい.潜伏睾丸は悪性腫瘍化,生殖能力喪失のおそれがあるが,障害のおこるのは思春期以後と考えてよい.悪性腫瘍となる可能性は極めて少ない.