台湾高雄採集記

DRAGON



5月30日より6月2日まで3泊4日の行程で台湾高雄へ採集旅行へ出かけました。
今回は家族抜きで同じく香港在住の蝶屋N氏と二人で虫三昧の旅行を計画しました。
どしゃ降りの香港を9時45分発の中華航空機で飛び立ち、高雄の空港におりたったのは11時をすこしまわったところ。高雄は台湾晴れ。
タクシーを飛ばして六亀のガイド陳文龍氏宅へ。
陳さんとは初対面でしたが、そんな感じがしない人でした。
荷物をほどき採集スタイルにて早速出撃。
まずは六亀の紅水渓へ。
ここでちょっと解説、六亀は台湾南部の蝶の宝庫、ウスキシロチョウの豊産やマダラチョウの集団越冬地として有名なところで、勿論シェンクの産地としても有名。
午後2時に紅水渓の入口に到着、陳氏宅からやく10分。ここからは歩き。
タクシーには5時に迎えに来るように頼み、もし雨が降ってきたらすぐに迎えに来てくれとも。

まずはウスシロキチョウの歓迎を受ける。
この付近一帯がこのチョウの植樹の純林とも言える環境でほとんどの樹は丸裸にされており、そこらじゅうの下草は蛹だらけでちょうど発生期で8割方は羽化したあとでした。
ちょっと形容がむずかしいけれど、一面に黄色い紙ふぶきが舞っているような感じ。

蒸し暑い山道を登ること40分、第1日目の目的タイワンアブラゼミのポイントへ到着。
またまた解説、このタイワンアブラゼミですが、台湾にいるアブラゼミだと思ったら大間違いですぞ。飛んでる姿はキエリドクアブラゼミに似ていますね(って言ってもわかんねえだろうな)。つまり、大型の黒いセミで胸と翅の前縁に美しいマスカットグリーンの線がはいったヤツです。
鳴声はミンミンゼミをうるさくしたような感じで、つかまえると、さらに大声をだしてなきわめきます。テイオウゼミもつかまえると大きい声でなきわめきますが声質がヒグラシタイプでビーとかボーという声ですね。

陳さんによるとこの付近でもこのポイントにしかいないとか、台湾でもこの付近にしかいないとかで、つまり世界中でここにしかいないということ。
しかも非常に狭い範囲で約50m四方のわずかに残された原生林にしか彼らは生息していない。このセミ自体はそれほど敏感でもなく採り易いのですが、樹が高いこと、樹林内部は下枝、低木があってネットが思うようにに振れないこと、それと暑さと吹き出す汗で意外に苦戦を強いられました。
不思議なことに採り逃がしても、決して遠くへは行かず絶対にこの狭い森から離れない。
いまでは保護されているそうですが、この林がなくなれば、この世から消え去る運命。
成果の方は、首尾よく自分で3頭ゲット、さすがの採集人陳さんは7頭ゲット、連れのN氏も4頭ゲット、しかし完ピンは少なくちょっと残念。そう発生時期は5月の中旬から前後2週間ほどだそうです。
ともするうちに雲行きがあやしくなり、雷ゴロゴロ。
急いで引き上げるも、下山途中で大雨。
川と化した山道をずぶぬれで下山。傘などさしてもほんの気休めにしかなりません。
登山口で待っててもタクシーが迎えに来ない。雨がやむのを待って来た道をひきかえすこと1kmやっと迎えのタクシーが来た。
という次第で第1日目は夜間採集の方は雨のため中止。



第2日目、朝7時出発、目指すは藤枝。8時半目的地着。
車を横付けでゼフがちらちら。ちょうど朝日があったている梢に止まる。
止まった瞬間を狙わないとすぐに他の個体を追飛してしまう。
なんとか1頭ゲット、タイワンミドリシジミ。
他にもアカシジミも飛んでいたし、他のミドリシジミ類も飛んでるみたいだった。
道なりに進むとオオベモンアゲハやワイルマンシロチョウやら。吹き上げのポイントでウスアオゴマダラシジミをゲット。
午後は場所をかえて二集団へ。ここでもゼフがみられた。
この日は天気がよく夜に期待して一旦帰投。

しかし生憎にも夕方になって雨。今日もまたか。
6時をまわって小止みになったところで、いやがる陳さんを説得して夜間採集へ出発。
六亀付近はもう晴れていたものの、目的地である二集団あたりは大雨。
昼間チェックしておいた燈火採集のポイントではできず。
条件としては最悪だったけど付近のお茶栽培農園の作業場の軒先で敢行。
雨のなかで準備作業、だんだん雨脚がつよくなり雷がピカリ、夜7時点燈。
降り続く雨のなか、ハアリが無数に集まる。
それから小型のコガネムシ類、これらは付近の草付きから出てきたのだろうか。
ようやく雨があがった8時、今度は無数の蛾の襲来。
さて甲虫はというと、クロコガネにカタビロオサはてはクロシデムシ。
こんな濃い霧の中ではやはり無理だっかかなの感。
陳さんは何時までやりますかと、疲れた様子。
いやいやめげずにもう少し。
そうこうしているうちに初めてのお客さん、タイワンネブトのメスが飛来してきた。
台湾で燈火採集をしているとよく飛んでくるのだが、この時ほど大きくみえたことはなかった。
次にも同じタイワンネブトのメス。
ぼつぼつ来だして、ようやくフタテンアカのメス。
だんだん大型種が来るようになった気配。
ここで本日のメイン、テナガコガネが飛来した、しかも立派なオス。
大きさは中の大くらい、でもボウズを覚悟した私にはうれしかった。
その後オニツヤクワガタの原歯型のオスが飛来した。
9時半をまわり、終了。
結局この日の収穫は、タイワンネブト♀2、フタテンアカ♀1、タイワンサビ♂1、オニツヤ♂1、テナガコガネ♂1 以上でした、お疲れさまでした。



翌3日目、7時半出発、宝来へ。
林道での採集それから河原での採集。
そこそこ採れたけど(蝶は)でも普段より数が少ない。
昼前に天がたまらず雨を降らせはじめてEND。
午後は陳氏宅で標本購入。




最後の日、前日来の大雨やまず。
帰りの時間を繰り上げる算段をはじめる。
とその時、天に願いが通じたのか雨があがり、まとめかけた荷物をほどいて、採集へ、時間もないので、1日目に行った紅水渓でリターンマッチ。
10時半登山口着。例によって、迎えの時間を指示してタクシーをかえす。
空をみながら、再びタイワンアブラゼミの森へひたすら速足で。
その一角だけは失われた世界のように何も知らない彼らだけがただこの前と同じように鳴いていて、本当にこの時はとても何か悲しい気持ちになった。
なんとかこの林だけは伐採せずに残して欲しい。
陳さんも言っていた、台湾では開発の名の下に原生林が伐採され、昆虫のすむ環境がなくなってしまった。昔はシェンクは平地にもいた。だが平地の原生林は無くなりシェンクもいなくなった。今では自然保護が叫ばれ、テレビでは蝶を保護する呼びかけを政府が行っている。採集禁止区域も多くなり、シェンクやテナガコガネも保護種になっている。
小一時間、雨露に濡れて採集してところで、またしても大雨。
雨の小道をずぶぬれで帰り、陳氏宅でシャワー。
あーあ、お疲れさん。



結局、夜間採集できたのは一晩だけ。
やはり、夏期は午前中晴れ、午後は夕立のパターンでその雨があがるのが早いか遅いかで夜間採集の収穫が決まってしまう。
ただでさえ、ガスや霧のかかりやすい山岳地帯で夜間採集の絶好のコンディションに居合わせるのはまさに千載一遇のチャンスとしか言いようがない。
今回はタイワンアブラゼミとゼフに焦点を合わせていたので仕方がないけど、やはりちょっと甲虫の方はお寒かった。
とはいえ7月以降は台風の襲来が多くて難しい。

情報として、北部のバロン周辺もすべて採集禁止地域に指定されたようで、ザウテルシカのポイントの四陵あたりでは交番があり、かなり厳しく取り締まっているという。