徳原ミヌルのくわがた覚え書き(2) ヒラタクワガタ編(前編)


クワガタに目覚めた1年後の夏の終りに名古屋市から岡崎市へ引越しした。更に1年後、名古屋市より緑の多いこの地に幼い頃から住んでおられる方にどこでクワガタやカブトを採集していたかを尋ねた。 その人がヒラタクワガタポイントとして教えてくれた場所は岡崎の繁華街から1kmも離れていない寺院の敷地内であった。また、この地方では有名な矢作川の河川敷をノコギリクワガタポイントとして教えてもらった。 矢作川ではその当時、柳の木にノコギリクワガタが鈴なりであったとのこと。今では柳の木にクワガタというのはクワガタ屋としては常識だが、私はこの時までクワガタはクヌギだと思っていたので驚きを覚えた。

次の休日までに私は想像の中で沢山のヒラタクワガタとノコギリクワガタ、そしてその幼虫を採集していた。

さて、待ちに待った休日、まずは寺院の敷地へ向かった。ここには洞の沢山出来た直径20〜30cm位のクヌギ(コナラ?)が散立していた。まだ、6月初旬のためか樹液は出ていなかった。 少し丘を登っていくと所々に朽ち木がころがっている。まずはこれらを裏返す事にした。2本めの倒木を裏返した時、「居た。♀のクワガタだ。」この時、コクワとヒラタの♀の区別がわからなかったのだが、大きさと艶からおそらくヒラタだろう。 この朽ち木から脱出した個体であろうか?それとも産卵に?いずれにせよヒラタポイントでまず1匹をGETした。ついでにこの朽ち木を割ってみよう。用意した手斧で少しづつ割っていく。 食痕らしい大きな幅の痕跡の先に黒い大きな塊だ。居た。でかそうだ。ヒラタの♂か?と思ってほじくり出した。ゲゲッ!!ゴキブリ!!!ほとんど羽のない巨大なゴキブリだ。今迄こんなの見たことない。 結局、この倒木からクワガタは1匹も見つからずゴキブリばかり出てきた。朽ち木に住むゴキブリも居るのだなと思い矢作川のポイントへ向かった。

車で15分程して矢作川のノコギリポイントに到着。堤防道路から河川敷へ降りて行く。河川敷には5m間隔くらいに柳が隣立している。柳は既に樹液が染み出しており、カナブンやハナムグリが居た。 柳の周りは1m位の下草が生えているのだがそれぞれの木の下までは草が踏み潰され道が出来ている。知る人ぞ知るポイントか?そしてついに3本めの柳の洞からヒラタ♂が顔を出しているのを見つけた。 ノコギリではなかったが何とか捕まえたい。静かに近づいたがそれでも気配を察知されたのか洞の中に潜ってしまった。捕まえたい一心で私は生木の洞の近くを削ろうとした。堅い。少し削ってあきらめた。 この日はこの1匹を見かけただけであったがクワガタが居る事が判っただけでも良しとしよう。 なんせ情報は25年以上前のことなのだから・・・

(後編へつづく)


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