ヒラタクワガタ・ノコギリクワガタ幼虫を襲った苦しくも熱い悲劇

ミヌル


今年、2回の失敗で沢山の幼虫を死亡させているので皆さんが同じ過ちを繰り返さないためにここに紹介する。

筆者はヒラタクワガタ・コクワガタ・ノコギリクワガタの幼虫を産卵木から割り出す時、何度もその産卵木を再利用し産卵させる目的で卵で割り出す。(オオクワガタは初齢を見計らって割り出すが、それでも割り出した数の1/3位は卵で回収することが多い)

筆者の場合、卵での割り出し時に傷付けてしまうことは少ない様でほとんど無事に孵化する。卵で取り出しても孵化率が下がらなければ問題ないと思うし、同種クワガタの羽化後の残りマットを初齢に与える事で有用バクテリアの受け渡しは可能と考えている。 この時、1個ずつフィルムケース等に入れておけばいいのだが、孵化直後から観察したい欲求からサラダの空き容器に円周状に数cmおきに回収したヒラタクワガタクワガタの卵をいれた。卵は続々と孵化し、直径10cm程度の小さい容器に15匹の初齢幼虫が同居する状況となった。

卵の段階ではマットの乾燥によって孵化が遅れる事が有る様なのでマットの乾燥防止に沢山穴を空けたビニールシートを蓋とマットの間に挟んでおいた。数日後、ビニールシートに結露が沢山発生しているのを目にしたのだが、通気の穴は空いているからとあまり気にしていなかった。1週間か2週間程して、そろそろ個別のビン飼育にするべ、とサラダ容器のマットを紙の上に広げて驚いた。幼虫15匹が集団蒸発しているのだ。個別のビン飼育への切替えが遅れたため、共喰いと結露による酸欠が発生したものと思われる。ビニールシートとマット間の隙間は数mmしかなかったので成長した水滴はどんどんマットに染み込み通気に対してマット上部を水でフタしてしまったものと思われた。

さて次はノコギリクワガタだ。2L程度のプラスティック飼育容器で2齢と3齢幼虫合わせて7匹を越冬させビン飼育に変えることにした。ただし、エサマットの準備が万端でなくウジがわいて捨てようかと思っていたものしかなかった。ウジを殺虫してとりあえず使うかと思いホッカイロを用い酸欠状態を作り出し、ウジを殺虫した。更に殺菌の為、ビン詰め後に電子レンジでの加温もおこなった。その後、マットをさまして幼虫を個別に入れた。悲劇は2日後に発生した。幼虫を入れたビンが触わるのがやっと位の温度に熱くなっていた。マットの追加発酵が始まった様だ。さすがにここまでの高温では幼虫は全滅だった。失敗したマットをけちってはだめという一例だ。それと、計画性を持って移し替えはしなくてはいけない。

ここで、改めて報告する必要はないかもしれないが、小麦粉添加マットで失敗しない筆者なりに掴んだこつを紹介しておく。水分はほとんど使わない。マットの状態を見ながら水500cc(マット15〜20Lあたり)程度ずつ数日または週毎に分けて加水する。夏場はさすがに2〜3日毎に加水したが、現在全く加水せずに発酵させている。マットの水分のみでもかなり高温になり結構発酵は進む。

水が多いと何が起こるかというと嫌気性の細菌の増殖で腐敗が発生し、アンモニアが生成されとんでもない嫌な臭いがする。当然、そのままほったらかしにしておくと全部のエサが使用不能になる。早い時期に気がつけば、兎に角水分を蒸発させて酸素を充分与える事で再生できることも有るが、そうならない為には初めから水分を与え過ぎない事が大切だ。

また、根拠のない私見であるが、マットは発酵時ある程度高温になったほうが良いエサになっている様に感じる。水分が多いと高温になり難い(降温作用/冷却作用)ということも有ると考える。(実際、農業でぼかし等を使い土壌に混ぜる肥料の発酵をさせる時に高温になり過ぎる時は加水するそうだ)

今回、エサをきちんと用意出来ていればヒラタクワガタ・ノコギリクワガタとも殺さずに済んだはずで、ビン飼育という人為的にしかエサを新たに供給出来ない環境で虫を飼育する場合、虫を愛する者として忘れてはならない事の一つだろう。



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