榎馬鹿日記

coelacanth



私、coelacanthがそのエノキに出会ったのは平成9年春の事であった。遊具も何もないし ょーもないただの広場に過ぎない近所の公園に、ガキを遊ばせるという目的で出かけたのであるが、公園脇のエノキを見た時、ほとんど鳥肌が立つ程の衝撃を受けたのを覚えている。クワガタに取り付かれた馬鹿垂れ以外にとっては何の変哲もない、ただの枯れた太いエノキ。直径50cm程の数本のエノキが寄り添う様に生え、高さ4m位はあるがその先は唐突に折れて無くなっている。中心の1本はまだ生きていて特徴あるエノキの葉を付けていたので、枯れている部分もエノキだとすぐわかったのだ。写真を見ればわかる通り、 いわゆる肉厚で裏がブラシのようになっている優れ物のカワラタケが正にビッシリ、、、 、

伊勢丹の屋上のクワガタ売場にはオオクワ専門コーナーがあり、これよりずっと細い、高 さもせいぜい1m以下というシロモノがオオクワ用として15万円で売られているのを見 た事がある。食えないキノコの生えた腐った切り株が15万円。通常世界の住人には正気の沙汰と思えないであろう事は想像に難くない。が、この異常世界の住人に取って、私の発見したエノキが100万円級である事はこれまた容易に理解可能な事なのである。

しばらくして折り畳み式の鋸持参で再訪した私は、この木を切って持ち帰るべく悪銭苦闘 を開始した。何せ相手が巨大だ。刃渡り30cmの鋸ではほんとにどうにもならない。鉈を入れ、突破口を開き、ようやくいくらかの部分を切り出し、持ち帰った。せいぜい1kgのブロックが2つ3つという所だ。持ち帰った物を調べると予想以上に素晴らしい質である事が明らかとなった。最高の状態であるにも関わらず、都会の真ん中という場所が場所だけにそれほど雑虫もなく、真っ白でサクサクで、良い匂いがし、本当に文句のつけよ うがない。やや虫に喰われている部分からはコクワガタの幼虫が2、3出て来た。しかし大部分は殺虫の必要さえ全く感じられない程きれいだ。(ちなみに以下の材の写真は後々採取した5kg位のブロック群である)

去年から業務として会社のホームページ作成等に関わってきた私であるが、昨年秋には有名な松田君のHPに感銘を受けてそこの英語化を手伝い、そのうちなんやかや爆発栄螺さんの所も英文化を手伝い、次第にまちかねBBSの様な泥沼との付き合いが深まるにつれ 、自分のHPも持ちたいと思うようになっていた。特にこのエノキの写真を見せたいとい うのが一番強い動機となり(なんとくだらない!)あまりにも馬鹿げた事に、本当に個人のHPを開設してしまった。coelacanthの 部屋がそれである。

こうしてまちかねBBSで知り合ったタカさんやウル父を伴い、6・24には第2次エノ キカッパギツアーと称して傍若無人な枯れ木伐採作戦が敢行され、HPでも報告される運びとなった。それにしても巨大なエノキであり、3人で攻めてもやはり得られたブロック には限りがあった。しかしその後の私のHPの報告にもあるように、このブロックは産卵木としては最上そのもので、去年インセクトフェアで入手した43mmの雌はこれをぼこぼこにしながらとうとう40もの卵を生んだのである。

その後も折りに触れ、他の人に切られていないか、腐りが進行していないかと見には行っていたのだが、なかなか理想のチェーンソーも入手の目処が立たず、夏休み等で忙しい事 もあり、第3次カッパギツアーは延期に延期を重ねていた。そこへ起きた新たな事件が有名な「クワガタ大図鑑まとめ買い計画」である。絶版となっていた世界のクワガタ大図鑑が復活する事となり(定価28、000円プラス消費税なので世の中の「妻」と呼ばれる 生き物にはその価値を金輪際理解してもらえない気の毒な本である)、10人集まれば八掛けというウマイ話に思わず私が音頭を取って募集して結局18冊もの注文を集めてし まった(40万円の立て替え!これぞ馬鹿!)。

亀有カブト&K.suzuki氏

松田君

「妻」と呼ばれる生き物
大部分は郵送+銀行振り込みとなったのだが、都内のK.suzuki、松田、及び亀有氏には自宅に取りに来てもらうついでに夜は飲んだくれて泊り込み、翌朝とうとう第3次エノキカ ッパギツアーを敢行するという無茶苦茶な運びとなった。ちなみに飲み屋での集会も提案 されていたもののcoelacanthは飲み屋では好きな純米生酒も注文できない上に場所代で高いだけ、おまけに飲んだくれたあげくにその場で寝っ転がるという荒業が使い難いという 理由で自宅集合にしてしまい、会費5000円程を集めて2万円分もの刺し身、天ぷら、 果物、菓子、酒、等を調達して豪華宴会としてしまったのである。図鑑を5600円安く買っておいて5000円も飲んでしまう馬鹿を形容する適切な言葉はこの世に存在するのだろうか?翌朝結局4人で攻めてはみたものの、やはり敵は巨大だ。チェーンソーが無い限りはどうしても攻めあぐむ。急いで帰ったK.suzuki氏にはちょびっとだけのフレークを 、他の二人にはそこそこのブロックを持ち帰ってもらって第3次エノキカッパギツアーは 不満を残しながらも終了した。

各人の時間の都合等もあり、イマイチ思う存分カッパギできた気のしなかった私は続く二 日後にも今回できた切り口を足がかりとして更にカッパぐべく単独現場に乗り込んだ。子 供の自転車の練習だのキャッチボールの練習だのというもっともらしい理由もつけて家族 は連れていったが、結局ガキ共は妻にまかせっきりにしてせっせとカッパギに励んだ。切 り口が広がったおかげもあり、非力な鋸を使ってでも今回はものの30分でかなり良質の 部分を5kgか10kgか得る事ができた。満足しながらブロックを車に積み込む私の横 に突如スーッと自転車で現れた初老の男が話しかけて来た。なぁにまたどうせ好奇心にか られた散歩ジジイだろうとタカをくくっていた私に向かって彼は言った。

「公園課の高橋という者ですが。市民から通報がありましてね、、、」

。。。当局のお咎めがあるかも知れないとは少しは思っていたが、とうとう来るべき日が来たようである。緊迫の事態急展開は以下次号!

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