2EVの英国訪問記
- 1996.5.19-27 下見の旅
- 1997.3.31 英国に向けて船積み
- 1997.5.23 2EV、英国の車検を取る
- 1997.5.24 2EV、ロンドンを走る
- 1997.5.25 2EV、イベントに参加
home
1996.5.19-27 最初の訪問 −下見−
Citroen Car Clubへの投稿が縁でSUSSEXの2CVショップおよび2CV博物館(T.P.M)オーナーのNick Thompson氏より氏主宰のイベントに2EVがthe world first 2EVとして招待を受けました。ところが直前になってEVを組み立てて走るという計画は主催者側の準備の関係で残念ながらキャンセルとなり、訪問を予定していたメンバーは次々渡航をキャンセル、担当者一人がEVクラブより拝借したパネルを抱えて渡英し、2CVミーティング会場に展示し、注目を集めました。
招待されたのはローカルのミーティングと聞いて、あまり期待していなかったのでっすが、200台以上の2CVが集まり、壮観でした。来年の渡航の為に会場周辺の下見やロンドン市内の地理の確認(ようは観光)などに重点を置きました。
さて、EVを走らせるのがなくなったために時間ができて観光が十分できたのですが、博物館巡りや2CVのイベントを通じてうわさに聞いていたイギリスの趣味の世界の奥の深さに圧倒されてしまいました。日本ではイベントや博物館でしかお目にかかれないような旧車が普通に町中を走り、駅の売店で普通の雑誌と同じ高さにクラシックカー雑誌が積み上げてあるのですから…。
EVについては、ミルク配達用の電気トラックが朝、静かに走っているのをよく見かけました。
INDEX
1997.3.31 英国へ向けて船積み
昨年、英国最大の2CVのクラブ"2CV-GB"から招待を受け、見学してきた"London to Brighton 2CV & EV Run"に参加するため船で運ぶ必要があります。
英国から車を輸入するというのならともかく、英国に車を運ぶとなると見当もつきませんでした。1月末、車検を取った直後から手探りで準備が始まり、船については色々検討した結果自動車専用船で運ぶ事にしました(コンテナは荷役費用等の点で小さい車の場合高く付く事がわかりました)。そしてJAFへ免税で持ち込むための書類(カルネ)と国際ナンバープレート(ラリー・カーや車のCMに出てくるローマ字のプレート)を申請しました。自動車専用船への積み込みは簡単で、埠頭まで車を持っていって担当者に渡してしまえば終わりです。こうして3月31日、輸出される新車に混じって変わった中古2CVは旅立っていきました。
INDEX
1997.5.23 2EV、英国の車検を取る
5月半ば、船はぶじにブリストル港に到着したとの連絡がありましたが、通関でトラブルがおきました。JAFの担当者からも英国は書類が揃っていても税関吏の判断で問題が起きる事があると聞いていたが、正にそのとおりになってしまいました。結局現地のエージェントの努力で我々が到着するまでに受け取る事ができましたが、EUを出るときに返却するという条件で多額の保証金を積む事になりました。
ベテラン・カー・レースで有名なブライトンはドーバー海峡に面したリゾート地です。私たちはここで回送された2EVとぶじ対面しました。航海中にバッテリーが上がるのではないかと心配したがそれは大丈夫でした。しかし、ここでまた問題、公道を走るのに必要な保険に入れないというのです。クラシック・カーの多い英国でも外国から持ち込まれた怪しげなEVとなるとさすがに及び腰になってしまったのです。本社に指示を仰いでからというのでは週末のイベントに間に合わない!。保険会社の見解では英国の車検であるMOTを取ればOKとのことである。1月にユーザー車検をやったばかりだというのにはるばる英国まで来てまた車検とは・・・。気を取り直して'96年にお世話になったサセックス2CVのニック・トンプソン氏の案内で(自走で)地元の車検場へ。英国の車検は日本で言う民間車検に近く、車体番号などの形式的なところは全く問題にしないため、とんでもない改造車や自作のスポーツカーにナンバーが付くのですが、ブレーキや排ガス、フレームの腐食などについては厳格で、形骸化している日本の車検に比べて実質的です。それでも突然EVを持ち込まれた試験官は面食らったようです。英国でも牛乳配達用などにたくさんのEVが走っているのだがこれはいつもトンプソン氏が持ち込んでいる2CVの形をしているのですから無理もありません。排ガスの試験の時に排気管がない事に気づくまで理解できなかったようでした。結果は排ガスが出ないので簡単にパス。これで日英両国の当局からお墨付きをもらったわけです。観光目的で車を持ち込んで現地の車検を取ったというのも前代未聞でしょう。
車検場からの帰り、すっかり2EVが気に入ったトンプソン氏は少し遠回りしてしまいました。案の定、途中でバッテリー切れ。非常用の発電機を始動して充電をはじめるはめに。しばらくたつと通りがかりの2CVが集まってきてEVの前後に4台の2CVが並んでしまいました。2CVオーナーたちはEVへの関心が強く、たくさんの質問を浴びせてきました。質問に答えているうちに何とか走れるようになったので彼らと2日後のイベントでの再会を約束して帰路につきました。
INDEX
1997.5.24 2EV、ロンドンを走る
最初はロンドンからブライトンまで走ろう等と考えていたのですが、地方道の平均速度が80km/hなのを見てすぐにあきらめ、ロンドン市内を走って記念写真を撮るということになりました。5月24日朝、トレーラーに車を積んで一路ロンドンへ、市街地に入ったところでトレーラーから降ろし、自走で中心部を目指しました。車が多くてペースの遅い市街地を静かに走り、テムズ川にかかるウォータールー・ブリッジの上に駐車、記念写真となりました。自分の車の傍らで上流のビッグ・ベンを眺めていると、とうとうここまで来たという実感が湧いてきました。このあたりは観光客も多く、通行人の注目を浴び、質問攻めにあいました。
そしてテムズ川を渡ってロンドン・ブリッジを目指したのですが、前日の車検場までの往復でバッテリーを酷使し、充電が不十分だったためにセントポール寺院を臨むフリート・ストリートで停止しました。
歩道に発電機を出して充電を開始すると通行人がものめずらしそうに集まってきます。それはそうです。土曜日で閑散としているとはいえ、ロンドン中心部のビジネス街です。眺めが良く、ひっきりなしに観光バスが通っているのです。そこで車のトランクをあけて発電機の爆音を響かせて、周りに怪しげな東洋人がたむろっていれば車がEVでなくても注目されるに決まってます。
ここでまたハプニング。目的地に先回りしているはずのトレーラーとはぐれてしまいました。EVを自走でブライトンまで運ぶ事など考えられません。伴走のレンタカーで捜索が始まりました(まあ、必死だったのは運転手だけで同乗者は予定外の市内観光ができて喜んでいたのですが…)。結局トレーラーとはある程度充電できたEVを伴って出発地点付近まで戻ったところで再会できました。後でわかった事だが観光客の悲しさ、ロンドン・ブリッジとタワー・ブリッジを間違えてしまったのでした。
こうして2EVの約5kmにわたるロンドン散歩は終わりました。
INDEX
1997.5.25 2EV、イベントに参加
招待されたイベントはサセックスの2CVクラブ主催になる、ロンドンからブライトンまでの80マイルほどの快適な地方道を走るものです。出発前には充電しながらでも何とか同じコースをEVで走ってみたいと思ってましたが、レンタカーでロンドンからブライトンまで走ってみて地方の一般道路が80km/hで流れている事がわかり、当初の計画は断念せざるをえませんでした。
2EVはブライトンに戻ってすぐ展示の準備のためにイベント会場であるホーブ・パークに運びこまれました。そこで25日のロンドンからブライトンまでのドライブにはレンタカーで参加することになりました。朝7時半、出発地点であるヒースロー空港に近いアイリッシュ・ラグビークラブのグラウンドに到着。少し早すぎたためにスタッフ以外誰もいません。8時ごろから続々と参加車が集まってきました。昨年の下見のときに見かけた車もたくさんいます。1時間半ほどで広大なグラウンドが400台以上の2CVと派生車種で埋まりました。そして10時頃にブライトンに向けて出発したのですが、400台以上の車がいっせいに走るとなると大変です。
最後尾についた私たちは、会場を出るまでに30分以上かかり、最初の信号の手前では2CVの渋滞が発生してしまいました。それでも少し郊外に出れば快適な道が続きます。この日は天気が良く、また3連休の初日だったので行楽の渋滞もありましたが、コース設定がうまく、景色がよく、適度なワインディングが続く快適な2級国道を中心に走ります。2CVの列はバラバラになってしまったので道がわからないこちらは参加車を探して追いかけるだけで大変でしたが、多くの参加車は途中でお茶を飲んだり寄り道して楽しんでいるようでした。いくつかの町を通り、広大な牧草地を抜けて一気に空に昇るように丘を駆け上がると美しい住宅街の向こうに海が見えました。住宅街を抜ければ会場はすぐそこです。
会場となった公園の青々とした芝生が広がるなだらかな斜面に500台近い個性豊かな2CVが並ぶ。昨年と同じ光景だが、今年は英国らしからぬ好天に恵まれ、芝生の緑と青い空に色とりどりの2CVが映えて実に美しい。2CVとディアーヌ(それにごく少数のamiとメアリ)という、ほとんど変わる事のない2つの車種しかないというのに、全く同じにみえる車がないのは驚きである。
2EVは会場の特設テント内に貴重なクラシックモデルとともに展示され、ここでも注目の的でした。来場者の注目を集め、多くの質問を受けました。最も多い質問は日本と同じく"何キロくらい走れるか"というものでしたが、具体的に作る事を前提とした質問が多いのはさすがに裏庭でレーシング・カーを作ってしまう国ならではです。
受け付けに置かれたアドレス帳には50人を超える記帳をいただき、メッセージ欄には最大級の賛辞が多くよせられ、感激しました。環境問題に対する意識の高いヨーロッパの2CV乗りたちは2CVをEVにする事の意義をすぐ理解してくれたようである。
夕方になり、大半の車が帰ってしまっても緯度の高い初夏の英国ではまだまだ明るい。テントの撤収に合わせて2EVを外に引き出した。芝生の上をゆっくり走ってみる。フラット・ツインの独特な音も悪くはないが、やはり美しい環境には音も匂いもしない車が良く似合う。
トレーラーを返してしまったので自走でホテルのパーキングまで帰らなければならない。私の運転でバッテリー残量を気にしながら帰途につく。観光客でにぎわう海岸通りを走りながら、英国に来て公道を運転するのははじめてなのに気がついた。英国で最初に運転した車がEVというのもおかしなものである。
2EVは7月末のオランダで開かれる
2CV世界ミーティング'97に参加させるためニック・トンプソン氏に託し、我々は初夏の英国を後にした。
INDEX|
home