アメリカの写真家アンセル・アダムスは、被写体の明るさと露光量、それが印画紙で再現される濃度との関係を対応させて、1絞りごとの露光量とプリントでの再現濃度をゾーンと名づけました。また、自然界の被写体の輝度域を10ないし11段と考えて、18%グレーの露出値を中心のXとし、被写体輝度域に0から]までの「ゾーン」を設定して、撮影時に印画紙で再現されるイメージが予想できるようにしました。
「ゾーンシステム」は、被写体輝度域とフィルムの再現幅、印画紙の再現幅を一致させるために、フィルムの現像条件=温度を変える方法であり、ロールフィルムでは適用が難しいと思われます。しかも約50年前に考案された方法であり、その当時とはフィルムも印画紙もその他の機材も著しく進歩しています。この冊子では、ゾーンシステムの全体を利用することはせずに、ゾーンスケールの考え方のみを利用することとしました。
Zoon
No
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インジケータ
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説明
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0
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-5
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プリントの完全な黒。ベース濃度+かぶり濃度ではないが、プリントには使われないネガ濃度。
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T
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-4
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感度基準点。完全な黒の次のステップで、わずかにトーンはあるものの質感は感じられない。
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U
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-3
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質感がかろうじて感じられる濃度。暗い調子、イメージの中でほんのわずかディテールを必要とする暗部の描写。
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V
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-2
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平均的な黒い被写体。充分に質感がわかる暗部。
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W
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-1
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平均的な濃い木の葉。濃いグレーの石や風景の中の影の部分。太陽光下の白人ポートレートの影の調子。
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X
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0
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反射率18%のグレー。パンクロマチックフィルムで再現される晴天北側の空。日焼けした肌。グレーの石、平均的な雨ざらしの木材。
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Y
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1
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太陽光や曇り空や人口光での平均的な白人の肌の調子。明るい色の石、日に照らされた風景での雪面上の影、
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Z
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2
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非常に明るい肌、明るいグレーの被写体、斜光線で照らされる平均的な雪面。
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[
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3
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質感のあるわずかな調子の白。雪の質感。白人の肌のハイライト。
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\
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4
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純白に近い質感のない白。ゾーンTと同様に質感はないがわずかにトーンがある。太陽直射光下の雪。
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]
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5
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印画紙のベースの純白。ぎらぎらとした反射や画面内にある光源。
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表―1
ゾーンとカメラのインジケータが対応して理解できるように表を作成してあります。
このようにして、被写体の輝度域をゾーンとして把握して、この基準よりもゾーンの狭い(広い)被写体では現像温度・時間を変更することによって、標準の印画紙にマッチするようなフィルムを現像するのがゾーンシステムの考え方です。
したがって、大判のシートフィルムではシートごとに現像条件を変更させることができますが、われわれが使うような35ミリのロールフィルムでは、カットごとに現像条件を変えることはできないので、このままでは適用することができません。
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