白い想い出

雪が降ってきた ほんの少しだけれど
私の胸の中に 積もりそうな雪だった
幸せをなくした 暗い心の中に
冷たく淋しい 白い手が忍び寄る


 「で、結局、東京の大学にするの?」
 「うん」

  ・・・(風はない。雪が降りてくる。つぎからつぎと)・・・

 「どっちみち、親父も転勤になったからさ」
 「聞いた。・・・この間」

  ・・・(バスが折り返し場所でバックしている
          車掌の笛の音が微かに聞こえる)・・・

 「夏休みには、小樽のばあちゃんちへ来るし、・・・」

   ・・・

 「来られる?」

   ・・・

 「今年は、来れないかな。・・・確率50%」
 「浪人?」
 「かも」

  ・・・(雪が音を消しているのかもしれない
          「シン」という音が聞こえるようだ)・・・

  ・・・(何か言わなくちゃいけない
            何か言わなくちゃ)・・・

 「握手して」
 「ェ?」
 「ア・ク・シュ」

   ・・・

 「手袋とってョ」
 「ウン」

  ・・・(ちょっと大きな雪がアノラックにあたった
          小さく「ッシャッ」って音が聞こえた)・・・

§

 作詞・作曲は、山崎唯。(アッ、これも山崎唯だ)。ダークダックスが歌っていた。

<この項終わり>

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