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葬送の音楽

2009.05.25. 掲載
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音楽葬やキリスト教の葬儀で音楽が流れるのは当然としても、最近は佛式の葬儀でも、BGMとして何らかの音楽が流されてていることが多いように思える。先日参列した葬儀では、故人の希望でベートーベンの交響曲第3番第2楽章が絶えず流れていた。フルトベングラー指揮ウイーンフィルハーモニーの演奏はまことにこの場の雰囲気に調和し感動を覚えた。

私は想定死亡時期まであまり時間は残っていないのにも関わらず、今までは葬儀のことを考えずに来た。葬儀は基本的には残された者がしたいように行なえば良いと思っているが、私の希望を知りたいと言われるのなら、簡単に書いて置いても良いし、具体的に詳細な計画を書くのも嫌ではない。

今回の葬儀に参列して、自分ならどの曲を選ぶかと考えた時、ためらうことなく即座に、シューベルトの交響曲第8番「未完成」で、もし時間に制限があるなら第2楽章だけで良いと思った。演奏はワルター指揮ニューヨークフィルハーモニックを望む。長い間この曲を聴くことがなかった上、今まで考えたこともなかったのにも関わらず、瞬間的にこの曲が頭に浮かんだのは、なぜなのかと考えてみた。

私がこの曲を夢中になって聴いていたのは中学時代だった。暗くしかし甘く、流れるような美しいメロディーに聞き惚れ、いつも独りで指揮の真似をしながらSPレコードを聴いていた。そのレコードがワルター指揮ニュヨークフィルハーモニックの演奏だったのだ。何度もくり返して聴いたので、メロディーだけは全部覚えてしまい、「交響曲を全部覚えることなどできない」と言う父に、「そんなことはない、メロディーだけなら全部歌える」と逆らった記憶がある。

高校に入ってからは、シューベルトの歌曲、その中でも「冬の旅」を好んで聴いていた。クラシックの作曲家の中で一番私が好きなのはシューベルトで、シューベルトが私に合っている。大学に入ってからはシューベルトを聴くことが少なくなり、結婚してからはほとんど聴かなくなってしまった。それでも、自分の葬儀に流してもらうBGMは「未完成」だと迷わず思うところが面白い。多感な思春期に聞き惚れた曲というのは、こういう時に突然浮かび上がってくるもののようだ。

大学に入ってから、ポップス、ロック、ラテン、ウエスタン、カンツォーネなどを好み、暗く悲しい詩的なムードとは無縁になったようでありながら、心の底流にはシューベルトを好む気持が残っていることを改めて悟った。

「未完成」でなければ何を選ぶかと考えると、自分で歌った「マイウエイ」にしたいと思う。とは言っても、20年以上前に、カセットテープに録音したことが一度あるだけで、それが見つからなければ、録音しておかなければならない。その場合は、原詩のほかに岩谷時子の訳詞でも歌いたく思う。また、自分が歌ったものでなければ、シナトラではなく、エルビスの歌うのを選びたい。

葬送に使われている音楽

現在葬送の場で流される音楽についてWeb検索をした結果をまとめてみた。作曲家の生誕年順に並べたが、下記の27の作曲家による約50曲がよく使われているようだ。ショパンが8曲で一番多く、日本人好みであることがよく分かる。私の望むシューベルトの交響曲第8番「未完成」は含まれていない。

番号 作曲者名        曲名 1. パッヘルベル      カノン 2. アルビノーニ      アダージョ 3. バッハ         G線上のアリア                主よ人の望みの喜びよ 4. ビバルディー      四季より「春」                四季より「秋」 5. ヘンデル        ラルゴ                サラバンド 6. モーツァルト      アヴェ・ヴェルム・コルプス                レクイエム                クラリネット五重奏曲第2楽章 7. ベートーベン      ピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章                ピアノソナタ第14番「月光」第一楽章                交響曲第3番「英雄」2楽章                交響曲第7番第2楽章 8. シューベルト      セレナード                アベ・マリア                即興曲変ト長調 9. メンデルスゾーン    バイオリン協奏曲第2楽章 10. ショパン        幻想即興曲                ピアノソナタ第2番「葬送」第3楽章(葬送行進曲)                前奏曲雨だれ                ワルツイ短調                別れの曲                ワルツロ短調                ノクターン嬰ハ短調                プレリュードホ短調 11. シューマン       トロイメライ                知らない国 12. グノー         アベ・マリア 13. ブラームス       交響曲第3番第3楽章 14. サンサーンス      白鳥 15. チャイコフスキー    交響曲第6番「悲愴」第4楽章 16. ドボルザーク      交響曲第9番新世界より第2楽章 17. マスネ         タイスの瞑想曲 18. グリーグ        ソルベーグの歌                オーゼの死                朝 19. リムスキー=コルサコフ シェエラザード 20. フォーレ        「レクイエム」より神の小羊                シチリアーノ 21. タルレガ        アルハンブラの思い出 22. マーラー        交響曲第5番第4楽章 23. ドビュッシー      牧神の午後への前奏曲                月の光                夢                アラベスク 24. マスカーニ       カヴァレリア・ルスティカーナ 25. シベリウス       4つの伝説曲より「トゥオネラの白鳥」                フィンランディア 26. ラベル         亡き王女のためのパバーヌ 27. バーバー        弦楽のためのアダージョ

<2006.8.8.>

2009年5月25日の朝日新聞のGLOBE欄で、「葬儀の人気曲@英国」が掲載されていた。
英国の葬儀会社が「葬儀の際にかけたい曲」調査した結果

歌部門
1.フランク・シナトラ  マイ・ウェイ
2.ベット・ミドラー   愛は翼にのって(Wind Beneath My Wings)
3.サラ・ブライトマン  Time To Say Goodbye

クラシック部門
1.エルガー       ニムロッド
2.フォーレ       ピエ・イエズ
3.シューベルト     アヴェ・マリア
4.プチーに       誰も寝てはならぬ

<2009.5.25.>

2016年4月14日、義弟田伏 望の葬儀で、妻田伏佳代子が選び、エンドレスで流れた曲

ベット・ミドラー     ローズ

<2016.4.15.>

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