ホーム > サイトマップ > 医療 > 診療方針など > 野村医院の診療方針


野村医院の診療方針

野村 望

<野村医院20年史(93年11月)から>

1998.01.06. 掲載
このページの最後へ

開業20年間を通して、診療に際し、心がけてきたいくつかの方針をまとめました。

1.できることをする

自分が診療できる範囲の病気を診療し、自分の診療能力を越えた病気の場合は、速やかにそれに適した専門医に紹介することをモットーとしてきました。これは当然すぎることではありますが、その見極めが難しい場合がよくあります。安易に紹介することは、患者さんにも紹介を受ける医師にも、迷惑をかけるだけでなく、自分の診療能力を落としていくことにもなります。そこで、できることを増やし、できないことを判断する力を養おうと努めてきました。

2.診させていただく

大学病院や大病院に勤務していた時には、ともすれば、「診てやる」「治してやる」といった気持ちを持ってしまっていたような気がします。しかし、本当は「診させていただく」のであり、「本人の治ろうとするのをお手伝いさせてもらう」のが医療の本質だと考えます。

3.医師と患者にも相性がある

「患者は医者を選べるが、医者は患者を選べない」というのは、正論だと思います。しかし、医師と患者の相性の良し悪しが、診療に大きな影響を及ぼしやすいことも事実です。周りに多くの医療機関がある、当院のような場所では、自分が良しと思う方針にしたがい診療をすることも、許されるのでないかと考えます。

4.診療は問診に始まり、問診に終わる

開業医にとって、診療で最も重要なのは問診であると思ってきました。患者さんの訴え、悩みを早く正しく把握する手段として、問診に勝るものはありません。これだけで、ほぼ診断できる病気もあれば、かなり病気をしぼれることもあります。しかし、より有用なのは、これによって効率的に、しかも誤り少なく、診療を進めていけるということです。診察の重点の置き方はもちろん、検査の選択にも、問診が重要な意味を持っています。

開業内科医は、幸か不幸か、限られた時間の中で、たくさんの患者さんを診療しなければなりません。だから、人間ドック式、ショットガン式診断は、時間的にも、経済的にも、行えるわけがなく、また、行うべきではありません。診断学がすすめる system of review でさえ、実際問題として、ほとんど実行不能でしょう。

それに対し、患者さんとの会話と問診から得た、訴えや苦痛を診療の中心に置き、的を絞って診察し検査をすすめるのは、診療に要する時間と費用を少なくするだけでなく、逆説的になりますが、診断ミスを少なくする効果もあります。

もちろん、問診は最初の診療の時だけでなく、診療の経過の中で修正されたり、追加されたりして、それが診療にフィードバックされなければならないのは当然でしょう。

問診は診断だけでなく、治療にも関係します。自分の苦痛や悩みを、正しくとらえてもらっていると感じられる場合と、そうでない場合とで、治療効果が違ってきても、なんら不思議はありません。治療の効果を知るとか、副作用の早期発見にも、問診は極めて有用です。

5.できるだけ説明をする

説明は診察中から始めます。つまり、診察して得た所見は、特別のものでなければ話し、診断もほとんどの場合、その場で話します。いくつかの疾患が考えられる時は、それらを列挙し、今後の方針を述べます。

治療についても同様で、特に副作用の出る可能性の高い薬を処方する時には、必ず、予めそのことを告げ、現れた場合の対応の仕方を説明します。病気の状態などについて、言葉で説明できることはまず言葉でします。しかし、言葉より適切なメディアがあれば、それを活用します。

6.なるだけ不安を与えない

病気の恐さを強調し過ぎて、患者さんに必要以上の不安を与えることは、可能な限り避けるように、心がけてきました。また、悪い情報を伝えなければならない時には、同時に、良い情報、希望の持てる情報も伝えるようにしました。

7.決めるのは患者さん

医師は、得られた情報をできるだけ多く、正確に、分かりやすく患者さんに伝え、同時に、医師としてのアドバイスをする必要があります。しかし、そのアドバイスを受け入れるかどうかを決めるのは、患者さん自身であって、医師ではないと思います。

「患者管理」ということばを最近よく見かけますが、私は反発を覚えます。およそ、管理されるのが一番嫌いだという性格の人間が多いのは、医師ではないかと思います。その医師が、たとえ健康のためとはいえ、他人を管理しようとするのは、身勝手ではないでしょうか?

もちろん、管理して欲しいと思っている患者さんもおられるでしょう。それは、される側からの希望なので、なんら問題はありません。そうではなく、管理する側の都合で、一方的に管理しようとするところに、問題があるのです。

8.データを残す

診療に関係したデータを、できるだけ残すようにしました。例えば、整理したり電子化したデータはもちろん、その元データも、できるだけ残すことを心がけてきました。その中でも、カルテを一番大切にし、検査データやレントゲン写真も、可能なかぎり残してきました。また、診療申込用紙、日計表、紹介状、レセプトの要約なども整理して残してきました。この野村医院20年史の 2.診療データは、それらをまとめたものです。

(1993年8月、記)


<1998.1.6.>

ホーム > サイトマップ > 医療 > 診療方針など > 野村医院の診療方針   このページのトップへ