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医院大改装

2005.12.02. 掲載
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  1.改装前の状況
  2.夏休みに全部してしまおう!
  3.工務店と工期の打ち合わせ
  4.医院改装計画
  5.医院改装の準備
  6.引越センターが運び出す
  7.改装の進捗状況
  8.医院室内改装のまとめ


1.改装前の状況

開業してから32年間で、内装に手を加えたのは、壁紙の張替え2〜3回、床の上張り1回、トイレの職員用ドア設置、玄関ドアの外に付けた風除け2重ドア、受付をオープンカウンターに変えたことくらいで、天井、照明器具、窓、ブラインド、玄関ドア、室内ドアは、開業当初のままだった。それでは、うす汚れ古色蒼然として見るに耐えないと思われるに違いない。しかし、32年間内装にほとんど手を付けていないことを知ると、誰も驚きの声をあげ、少しも古さを感じさせないと言って下さるのが、いささか自慢だった。

その理由として、3ヶ月に1度は掃除屋さんに入ってもらってきたこと、初めからタバコを吸わないし、待合室での禁煙も、かなり早い時期から行なっていたこと、毎朝の掃除を専門の職員が続けてくれたこと、器具機器の取り扱いが乱暴ではなかったこと、自然環境が良かったこと、などの相乗効果ではないかと思っている。

同じように、診察机をはじめ全ての机、カルテ室のスチールラック、処置室のライトピン、整理棚など室内の機器も、32年間使って来たものばかりだった。こういう状況だから、息子に引継ぐ際には、大幅な改装を行い、診療機器や事務機器の取替えを希望するだろうと思って、医療法人にそのための資金を毎年増やして来た。そこで、息子たちには好きなように改装をし、医療機器や事務機器を買い換えて良いと伝え、求められればアドバイスはすると言っておいた。医院大改装は、この状態から始まったのである。


2.夏休みに全部してしまおう!

息子は6月15日を以て住友病院を退職したが、残務整理とかいろいろな事情があって、あまり交野へは帰って来ない。退職1週間後に、住友病院の患者さんが息子の診察を受けに来院されたのには驚いたが、この時も、息子はぎりぎりセーフで、交野にやってくるので気が気でなかった。

最初の予定では、4月に医院を引継ぎ、5月の連休にお互いが転居し、改装は夏休みに行なうつもりでいた。それが、9月に医院引継となったので、改装と転居の両方を、夏休み中に行なうことにした。改装を夏休みにして、新装なった医院で引継を行なうことには、誰も異論はないと思うが、転居は、引継の後でも良かったのではないかと思われるかもしれない。それでも、その両方を行なうことにしたのは、私の焦りからだった。

私は、かなり以前から、71歳になる前に死ぬと予想をし、そのつもりで生きてきた。71歳の確たる根拠などあるわけはないが、医学部同期卒業生80名の内の16名、同期に第一外科入局した8名の内の2名が鬼籍に入っており、父が70歳を過ぎて亡くなったことから、そう思ってもおかしくはあるまい。予定通り、4月に医院を引継いでも、残りは2年間しかないと思ってきたが、それが5ヶ月延びたので、残るは19ヶ月ばかり。それを思うと、引継いでから転居をすることなどは、とうてい考えられなかった。


3.工務店と工期の打ち合わせ

最近は、30日分投薬がかなり多い。そのため、夏休みの予告は、1ヶ月以上前からしておく必要がある。夏休み中に医院の改装をするので、工期についても、工務店と打ち合わせをする必要があり、7月11日に電話をして翌12日に来て頂いた。その結果、盆を挟んでいるので、前倒しでなければ材料の入手などが困難だとの説明を受け、予定していたよりも開始を早め、夏休みを8月11日から21日までと決め、それを掲示するとともに、印刷した夏休み表を患者さんにお渡しした。


4.医院改装計画

今回の改装については、まったく息子夫婦にまかせ、壁を外しても良い、32年前の和式のトイレは貧相なので変えるようにと、アドバイスをした程度だった。床を張替えるにあたり、仕上がりが良くなるように、一番底のPタイルまで外し、床スラブ(鉄筋コンクリートの床)を削って、滑らかにすることになったが、そうするには、工期が足りなく、夏休みを半日前倒しして、10日の午後からの開始に変更した。

7月19日に、息子は改装のための計測を行ない、翌日から工務店、電気工事店と打ち合わせを重ねていた。私は設計が好きで、これまでは医院や居宅の設計、居宅の増改築の設計の主要な部分を私が行い、平面図はちろん立面図もパースも自分で書いてきた。しかし、今回は手を出さなかった。だから、どのように改装しようとしているのかよく分からないでいたある日、パソコン画面に3Dの設計図を見せられて驚いた。「3Dオフィスデザイナー」というオフィスのレイアウト作成ソフトを使って、デモをしてくれたというわけ、昔から要領の良い男だった。


5.医院改装の準備

今回は、医院内全部の天井、壁、床を改装するので、壁に固定してある棚は外しておかなければならない。高さ200cmの棚が診察室とレントゲン室に3個あり、それにぎっしり医療関係の書籍を置いてきた。この撤去作業も面倒だったが、それに劣らぬ、数多くのスチール製キャビネットがあり、この中に、医療関連の膨大な資料や記録が入っているので、その処理は、それ以上に大変だった。しかも、その間に、居宅の方の引越準備も並行して行っていたのだった。


6.引越センターが運び出す

8月10日の午前の診療が終わると、間もなく引越センターから13名がやってきて、1時から作業を始め、4時過ぎまでかかって、カルテ、X線フィルム、薬はもちろん、医院内にある移動できる物品をすべて運び出して、倉庫に保管した。これは、その2日前に、荷物を全部を出して部屋を空にしなければ工事ができないと、工務店側から申し出があり、急遽決まったことだった。

夏休み中で、改装工事中であっても、留守でない限り、来院される患者に対応しなければならない場合が必ず出てくる。そこで、前月と当月来院患者のカルテと繁用薬を選び、レセコンとともに居宅へ移動した。その居宅の方も17日には、息子夫婦がここへ転居してくるし、私たちは、19日に大阪市内に転居するので、荷物が山積みになっていて、移動場所確保も難しい状況だった。


7.改装の進捗状況

8月10日(水)
移動可能な診療機器、事務機器、衛生機器などを医院から運び出し、天井に新しい照明器具設置用の穴を開けたところで、この日の作業は終わった。


ここは診察室で、壁に固定していたシャウカステンや、インターホーンなどを、全て除去した。パーティションを撤去したので、検査室との境界がなくなり、診察室が広くなった。 天井には、新しい照明器具取り付け用の開口部が作られている。 レントゲン装置やエアコンは移動できず、そのまま残っている。

これは待合室の天井で、32年間使ってきたむき出し蛍光灯を除去したところ。 丸穴はダウンライト用の開口部 奥には古い蛍光灯が残っている。

便所と洗面所との隔壁を取り除いたところ 旧態然とした和式便器で、この取り替えは誰もが必要と思った。


8月11日(木)

本格的に工事が始まった。床を剥がしてスラブ剥き出しとし、壁を取り除き、背の高いドアに取り替えるための作業と、トイレの改造が始まった。


診察机の置いてあった場所の壁が剥がされている。受付へ続くドアを、180cmから210cmのものに取り替えるため、開口部の背が高くなった。 診察室と待合室の境の壁の上部にあったガラスが取り外されている。

診察室との境の壁が、天井まで完全に取り除かれ、広く見えるようになった処置室。 左手壁際に取り付けてあった手洗い、排水槽も撤去されている。 天井と壁にベニヤ板が貼られている。

トイレの床をはつり、便器が取り除かれ、給水と排水の管が新しく設置された。

待合室側から見たトイレの入口部分 ドアとその上にあった壁が取り除かれ、天井続きの背の高い空間が出現した。天井には、ベニヤ板が貼られている。 その奥に、洗面所の窓が見えるが、これは後で塞がれることになる。

電話機とFAX、ADSLの接続端子は、受付カウンターのほかには置き場所がない。 工事で電話線が切断されて不通になったため、電話工事店に来てもらった。 パソコンを食堂に移動させたが、ここまで30m近く離れていて、LANケーブルでつなぐのは、工事の邪魔になるため、夜中にここまでデスクトップ型パソコンを運んで、インターネット接続をしていた。


8月12日(金)
天井や壁に、ベニヤ板を貼る作業が終了し、背の高いドアへの取替えも終わった。配電盤を、将来の電力使用量増加に対応できるよう、大型のものに取り替えた。


診察室の天井、壁、柱に、ベニヤ板が貼られて見やすくなってきた。    

薬局奥にある配電盤をより大型ものに取り替えた。 天井にベニヤ板が貼られている。 右上の薬品保管棚のドアを新しくした。

診察室と待合室の間のドアが、210cm高のものに取り替えられた。 そのため、診察室と待合室の間のガラス壁に段差ができてしまった。 この段差は、後でドアの高さに揃えることで解消した。

診察室からトイレへに行くためのドアで、これも210cmに取り替えられた。 そのため、ここでも、診察室と待合室の間のガラス壁に、段差ができてしまった。


8月13日(土)

天井、壁のベニヤ板貼りとドアの取り付けが終わった。しかし、ドアと壁について少し手直しを求めた。


天井、壁にベニヤ板が貼られた診察室、右手に処置室の一部が見えている。 新しい照明器具が取り付けられた。 診察室と受付の間のドアも、背の高いものに取り替えられた。

薬局奥の大型配電盤に合わせて、ベニヤ板を貼り、凹凸をなくして、壁紙を貼り易くした。  

待合室から見たトイレ入口部分で、待合室と洗面所の間のドアと壁がなくなり、天井が連なっている。 洗面所前の窓は壁で塞がれている。 待合室から診察室に入るドアの背が高くなり、両方の部屋の間のガラス壁に、段差ができたが、その修正はされていない。

玄関入口のドアが、自動ドアに取り替えられた。 観音開きに開閉する自動ドアを、生まれて始めて見た。

トイレ側からみたドアで、左がトイレのドア、右が診察室からトイレに通じるドア。 私が、唯一クレームを付けた箇所で、トイレに入る際の空間が狭く、よろけたりするとドアのガラスを割ってしまう危険があり、診察室側のドアの取り付けを逆にしてもらった。



8月14日(日)

壁紙を貼るための下ごしらえが始まった。診察室と待合室の間のガラス壁の段差の修正を求めた。お盆で、日曜日だったが、大工の棟梁と連絡がつき、翌日修正工事に取り掛かってくれた。


診察机を置く場所付近の診察室 壁紙を貼るための下ごしらえを開始し、パテが塗られている。 待合室と診察室の境のガラス壁の段差は、未だ残っていて、息子が修正を求めた。

観音開き自動ドアの床に接する部分  

観音開き自動ドアの上方部分 梁の中央にセンサーが付けられている。

トイレにタイルが貼られた。  


8月15日(月)

壁紙を貼る下ごしらえを行い、待合室と診察室の間のガラス壁の段差をなくした。ペンキ塗り終了。


待合室と診察室の間のガラス壁の高さを短くして、ドアに揃えた。  

待合室の巾木を、トイレの外壁下部と同じこげ茶色にペンキを塗った。 床にグラインダーをかけて、床材が凹凸なく貼れるようにした。

診察室からトイレの奥までを見通した眺め 診察室側のドアのヒンジが反対に付け替えられている。 壁紙を貼る下ごしらえのパテ塗りも完了。



8月16日(火)

天井と壁にビニールクロスが貼られた。


天井と壁にビニールクロスが貼られた、カルテ資料室兼職員更衣室    

天井と壁にビニールクロスが貼られた、薬局と配電盤周辺  

塗装が終わり、天井と壁にビニールクロスが貼られた受付

待合室はまだ壁紙が貼られていない。 天井中央の丸穴は、スピーカー取り付け用の開口部。


8月17日(水)

天井と壁のビニールクロス貼り、照明器具の設置がすべて完了。室内のガラス壁の色が、これまでの透明からアクアマリーン色に変更された。この日、息子夫婦が転居してきた。


処置室の壁を取り除いたため、そこに付けてあった二つの警報ベルを、カルテ資料室兼職員更衣室の壁に移動した。 室内のガラス壁はすべてこの色に統一された。 この色の1枚ガラスがないので、間にフィルムを挟む工法で、この色を創り出してくれた。

診察室の壁にシャウカステン(レントゲンフィルムを見るための照明器具)が取り付けられた。 床は未だスラブ剥き出しのまま。

待合室の受付カウンター付近。 天井に、スポットライト取り付け用の器具が、2本直交して取り付けられた。

待合室のトイレ付近。 壁に天井まで届く大型の鏡が貼られた。部屋が広くなった感じがする。 洗面所に付けられた間接照明が、おしゃれで感じが良い。

診察室に入る待合室のドアを開けたところ 診察室との境の壁を取り除いた処置室が見えている。

開口部がすべて診察室とつながり、見違えるほど広く見えるようになった処置室 この部屋とカルテ資料室の境のガラス壁の色は、アクアマリーン色に変わったが、高さは元と同じ。


8月18日(木)

床の舗装が完了し、トイレの便器、検査用流しが設置された。


診察室の床が貼られ、工事はほぼ完了    

診察室からトイレへに通じるドア付近 検査室用小型流しが設置された。

トイレの便器が設置された。  

待合室の床も貼られた。  

処置室の床も貼られた。  

これはレントゲン室と暗室周り。  



8月19日(金)

トイレのサイドキャビネットと洗面所の機器が設置され、工事は完了した。この日、私たち夫婦は大阪市内へ転居した。


処置室に最新、高性能のエコー診断装置が運び込まれた。    

トイレ横の洗面所に機器が設置された。  

洗面所の機器  

洗面所の右上に、ステンレス製のペーパータオルホルダーが付けられた。  

洗面所の照明  

トイレの便器  

便器周り  

洗面所から見えるトイレの内部  



11月30日(水)

夏休み中に、改装工事のほとんどを終えたが、窓ガラスのアルミサッシの取替えは、工期不足のため、10月に行なった。以下の写真は、室内改装工事がすべて終わった医院の内部である。


トイレ側から見た待合室 下足入れ、診察番号表示器は元の位置で、血圧計は移動して使われている。 時計、椅子は巾木などに合わせて、こげ茶色に統一されている。

受付側から見た待合室  窓のアルミサッシが一新され、大きくスマートになった。 手作りの横長マガジンラックが縦長の金属製に取り替えられている。 掲示板もアクリル製のおしゃれなものに替わった。

尿検査兼事務室との間のパーティションを撤去して広くなった診察室。 診察机、シャウカステン、診察ベッドの位置は変わっていない。 処置室にあったベッドを、一つこちらに移動した。 コピー機の位置も、窓際からこの場所へ移動した。

診察机の横幅が長くなった。 そのためで診察机と診察ベッドとの隙間がとれなくなり、ベッドの枕の位置をこれまでの逆に変えた。  

診察机の上のステンレス製ラックは同じもの。 パソコンは2台だが、モニターを3台置いている。 そのうちの1台はデジタルX線画像診断装置(FCR)用のPCとモニター

診察机のある側から見た診察室 尿検査機器の位置は変わらないが、流しが小さく、スマートになった。 新しい事務机が窓際に移動され、そこにパソコン、FAXなどが置かれている。 処置室にあったベッドの一つが、診察室に移動された。左に処置室が少し見えている。

診察室とは天井続きになり、広く感じられる処置室 右手前にあるのは、最新高性能のエコー診断装置 収納棚なども、おしゃれな物に一新された。 身長体重計や、オージオメータなどが、こちらに移動された。

組立ラックを使ってデジタルX線画像診断装置(FCR)の各パーツの配置を縦型に変えたので、X線室への出入りが容易になった。 モニターを壁付けにしたので、データの入力し易くなった。 暗室のドアの背を高くしたが、X線室へのドアは同じ高さで、違いが目立つ。

診察室奥の、待合室との壁際にある尿検査機器の位置は変わらないが、流しはコンパクトになった。 開きかけのドアを通して、トイレが見えている。  

カルテ資料室兼職員更衣室が、カルテ資料室兼点滴室に変わった。 これはカルテ保管庫で、個人情報保護のため、施錠できるものに取り替えられた。  

職員用ロッカーは、居宅内の私の書庫だった部屋に、移動された。 ロッカーが置かれていた場所に、処置室にあった点滴用のベッドが置かれている。 手作りステンレス製職員用下足入れは、そのまま使われている。


8.医院室内改装のまとめ

32年間ほとんど手をつけなかった医院室内を、天井から壁、床、ドアにいたるまで、わずか10日あまりで、完全に改装を行なったのだから、如何に強行軍であったか、ご理解いただけるのではなかろうか? かくして、これまでの野村医院の内装は、小気味良く、木っ端微塵に取り去られたのである。それは、新しい野村医院にふさわしい改装だった。まさに、「新しいぶどう酒は新しい革袋に」である。

この改装工事に立ち会いながら、良い工務店と電気工事店のお世話になってきたことを痛切に感じた。どちらも、33年前の最初の工事の時から、変わることなく、誠実かつ丁寧に、私たちの無理を聞いて、増改築工事や補修工事を続けて下さった。先代の社長は代替わりされ、今はその息子さんが跡を継がれているが、誠実丁寧な仕事に変わりはない。このような皆様とご縁があった幸運を感謝し、それを息子夫婦に引継ぐことができる幸せを、噛みしめている。


<2005.12.2.>